マンションを相続して遺産分割協議書を作成するとき、表記を間違いやすいので注意しましょう。適切に記載しないと相続登記できないリスクが発生します。今回はマンションの遺産分割協議書の書き方を弁護士が解説します。
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1.マンションの遺産分割協議書作成前に準備するもの
マンションを相続したら、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。全員が合意したら「遺産分割協議書」を作成しましょう。
このとき、遺産分割協議書へのマンションの表記方法に注意が必要です。マンションの場合、土地部分と建物部分の両方があり、建物については「専有部分」、土地については「敷地権」などの表記があって、非常にわかりにくくなっているためです。
間違えると名義変更の相続登記ができなくなってしまうので、正しい知識を持って慎重に対応してください。
マンションの遺産分割協議書を作成する際には、以下の資料を手元に揃えましょう。
マンションの「登記事項証明書」または「登記簿謄本」
「登記事項証明書」は、不動産の詳細情報を記録した書類です。法務局やお近くの法務局証明サービスセンターで申請すれば取得できます。申請エリアに限定はなく、全国どこの法務局でも発行してもらえます。登記情報がデータ管理されておらず紙ベースが管理されている場合には「登記簿謄本」が発行されます。
法務局に行くのが面倒な方は、郵送やネットからでも申請できるので利用してみてください。
2.マンションの遺産分割協議書の文例
マンションの遺産分割協議書では正確に「マンションの表記」をしなければなりません。
まずは文例を載せるので、確認しましょう。
以下は甲野太郎さんと甲野花子さんが相続人となり、甲野太郎さんがマンションを相続するケースです。
- 遺産分割協議書
- 甲野一郎(本籍:東京都〇〇区 〇〇 〇番地)が2020年〇月〇日に死亡したことに伴い、 共同相続人である甲野太郎、甲野花子は、被相続人の遺産を次の通り分割することに合意した。
- 1. 次の不動産は甲野太郎が相続する。
- (一棟の建物の表示)
- 所 在 東京都〇〇区〇〇 ○丁目 ○○番地○○
- 建物の名称 〇〇マンション
- (専有部分の建物の表示)
- 家屋番号 〇○ ○丁目 ○○番○○の○○
- 建物の名称 203
- 種 類 居 宅
- 構 造 鉄筋コンクリート造1階建
- 床 面 積 2階部分 50.00m²
- (敷地権の目的たる土地の表示)
- 符 号 1
- 所在及び地番 東京都〇〇区 ○○ ○丁目 ○○番○○
- 地 目 宅 地
- 地 積 2000.00m²
- 敷地権の種類 所有権
- 敷地権の割合 1000分の25
- 2. 次の預貯金は甲野花子が相続する。
- A銀行 新宿支店の被相続人名義の預金
- B銀行 新宿駅前支店の被相続人名義の預金
- 上記のとおり相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため、本書2通を作成し、署名押印のうえ各1通所持する。
- 2020年〇月〇〇日
- (氏名) 甲 野 太 郎 実印
- (住所) 東京都〇〇区〇〇 〇丁目〇〇番〇〇
- (氏名) 甲 野 花 子 実印
- (住所) 埼玉県〇〇市〇〇 〇丁目〇〇番〇〇
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3.マンションの遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書に不動産を表記するときには、基本的に「不動産全部事項証明書(不動産登記簿)」の「表題部」の部分を書き写します。
マンションの場合、以下の3つの部分を書き写す必要があります。
一棟の建物の表示
マンション全体の建物部分の表示です。不動産全部事項証明書の中で「一棟の建物の表示」と書いてある部分を探し、所在と建物の名称を書き写しましょう。
専有部分の建物の表示
マンション全体の中で、被相続人が所有していた部分を表示する箇所です。
多くの場合、マンション所有者は一棟全体ではなく1部屋や2部屋など「部分的に専有」しているものです。そこで、全体のうちどの部分を相続するのかを明らかにしなければなりません。
不動産全部事項証明書の中で「専有部分の建物の表示」と書かれている箇所を探しましょう。
家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積を書き写してください。
敷地権の表示
敷地権とは、土地に対する権利です。マンションを所有する場合、各部屋の所有者が土地を部分的に所有しています。そこで、対象となる土地と敷地権の割合を記載しなければなりません。
不動産全部事項証明書の中で「敷地権の目的である土地の表示」と書かれている部分を探しましょう。符号、所在及び地番、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合をそれぞれ正確に書き写してください。
以上のように遺産分割協議書に「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」の3つを書けたら、マンションの表記が完了します。
4.遺産分割協議書作成の注意点
遺産分割協議書を作成する場合、以下の点に注意しましょう。
4-1.住所表記と地番は異なる
不動産の「場所」をあらわす番号を「地番」「家屋番号」といいます。地番や家屋番号は住所に似ていますが、実際には多くのエリアで地番と住所表示が異なります。
地番の部分に住所を書くと間違えてしまう可能性があるので、必ず不動産全部事項証明書をしっかり見ながら「地番」の部分を正確に記入しましょう。
4-2.実印で押印する
マンションを分けるときの遺産分割協議書には、必ず「実印」で押印しましょう。実印を使わないと、後に相続登記を申請する際に法務局で登記を受け付けてもらえないからです。
各相続人が実印で押印したうえで、各自の印鑑登録証明書を添付しましょう。
4-3.間違えると登記ができない
マンションの遺産分割協議書は、相続登記の必要書類です。マンションの表記が1字でも間違っていると登記を受け付けてもらえず、訂正や作り直しになってしまう可能性があります。すると再度相続人全員分の押印が必要になり、大変な労力がかかるでしょう。
必ず間違えないように正確に記載する必要があります。
4-4.共有の場合
相続したマンションが「共有」になっている場合も考えられます。共有の場合には「共有者」と「持分割合」を書かなければなりません。
不動産全部事項証明書をみながら、マンション表記の末尾に「共有者〇〇 持分〇〇分の〇〇」と書きましょう。
なお、Authense法律事務所では、円滑な相続をサポートする「遺産分割協議書作成プラン」をご用意しております。
ぜひ一度ご覧ください。
まとめ
マンションの遺産分割協議書を作成するときには、「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の表示」の3つの表記が必要です。少しでも間違いがあると「相続登記」できなくなってしまうので、慎重に対応しましょう。
「自分たちで作成すると間違ってしまうかもしれない」
不安があるなら、専門家に遺産分割協議書の作成を依頼すると安心です。
当事務所では遺産相続案件に力を入れており、各種の遺産分割協議書作成や遺産分割協議、調停、審判の代理人業務に対応しています。マンションを相続してお困り事がおありでしたら、お気軽にご相談ください。
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