コラム
公開 2020.07.29 更新 2023.04.04

配偶者、子ども、親の遺留分はどのくらい?ケースごとに解説

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1.遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。
配偶者や子どもなど、被相続人(亡くなった人)に近い親族には、遺産のうち、最低限、遺留分の範囲の対価の取得が認められます。

遺留分が問題になるのは、遺贈や生前贈与があったケースです。例えば、他の相続人がいる場合でも、配偶者は、法定相続人として、常に2分の1から4分の3の相続財産を取得する権利が認められます。しかし、「愛人にすべての遺産を遺贈する。」、「長男に全ての遺産を相続させる。」などの遺言書があると、配偶者であっても全く遺産を取得できません。このような場合、配偶者は、遺留分を主張し、愛人や長男に対して遺留分に相当する金銭の支払いを要求できるのです。

遺留分は、近しい相続人に認められる最低限の遺産に関する保障と考えると良いでしょう。

2.遺留分が認められる相続人

遺留分は、全ての相続人に認められるわけではありません。そこで、どの範囲の相続人に遺留分があるのかを見てみましょう。

2-1.配偶者

配偶者は常に法定相続人となり、遺留分も認められます。

2-2.子ども、孫やひ孫などの直系卑属

子どもは第1順位の法定相続人であり、遺留分が認められます。子どもが本人より先に死亡しており、孫やひ孫が代襲相続(再代襲相続)する場合、孫やひ孫などの直系卑属の相続人にも遺留分が認められます。

2-3.親、祖父母や曾祖父母などの直系尊属

両親などの直系尊属は第2順位の相続人であり、子どもがいないときに相続する権利が認められます。両親が本人より先に死亡していれば、祖父母や曾祖父母などの直系尊属が相続人となります。これら直系尊属の相続人にも遺留分が認められます。

2-4.遺留分が認められない人

以下のような相続人には遺留分が認められません。

兄弟姉妹や甥姪

兄弟姉妹は第3順位の相続人です。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には甥姪が代襲相続人として相続します。これらの第3順位の相続人には遺留分が認められません。

相続放棄した人には認められない

配偶者や子どもなどの遺留分を有する相続人であっても、相続放棄をした場合には遺留分が認められなくなります。相続放棄者は始めから相続人ではなかったことになるためです。

相続欠格者には認められない

被相続人を殺害したり、遺言書の破棄や隠匿をしたり、本人を脅して遺言書を書かせたり、遺言書の内容を書き換えさせたりして相続欠格者となった人にも遺留分は認められません。

相続廃除された人には認められない

本人を虐待したり、非行が目立ったりして相続廃除され、相続する権利を奪われた人にも遺留分は認められません。

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3.遺留分の割合

それぞれの相続人にどのくらいの遺留分が認められるのか、割合をご説明します。

3-1.総体的遺留分と個別的遺留分

遺留分には総体的遺留分と個別的遺留分があります。総体的遺留分とは、そのケースで全体の遺留分権利者に認められる遺留分です。個別的遺留分とは、総体的遺留分を各遺留分権者で分け合ったそれぞれの権利者の遺留分です。

3-2.総体的遺留分の割合

親などの直系尊属のみが相続人になるケースでは3分の1、それ以外のケースでは2分の1です。

3-3.個別的遺留分

基本的には「総体的遺留分×法定相続分」で計算します。ただし、配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合には、例外的に、配偶者が2分の1の個別的遺留分を取得します。

遺留分の表

総体的遺留分 個別的遺留分
配偶者 子ども
配偶者のみ 2分の1 2分の1
配偶者と1人の子ども 4分の1 4分の1
配偶者と2人の子ども 4分の1 8分の1ずつ
1人の子ども 2分の1
2人の子ども 4分の1ずつ
配偶者と片親 3分の1 6分の1
配偶者と両親 3分の1 12分の1ずつ
配偶者と兄弟姉妹 2分の1
片親 3分の1 3分の1
両親 6分の1ずつ

3-4.配偶者と兄弟姉妹が相続人のケースに注意

配偶者の遺留分は、基本的に「2分の1×法定相続分」として計算しますが、配偶者と兄弟姉妹が相続人になるケースは例外です。この場合、兄弟姉妹に遺留分が認められないので2分の1の遺留分を全て配偶者が取得します。
間違いやすいところですが、配偶者の遺留分は4分の1ではなく2分の1になるので、注意しましょう。

4.遺留分の計算例

遺留分の計算例を1つ、みてみましょう。

遺産が6,000万円分、妻、長男、次男と長女が相続人。「すべての遺産を愛人に相続させる。」という遺言が遺されていたケース

それぞれの相続人に認められる遺留分割合
妻の遺留分は2分の1×2分の1=4分の1、子ども達の遺留分はそれぞれ2分の1×6分の1=12分の1ずつです。
遺産が6,000万円なので、妻の遺留分は6,000万円×4分の1=1,250万円、子ども達遺留分はそれぞれ6,000万円×12分の1=500万円ずつとなります。
したがって、妻は愛人に対して1,250万円の遺留分侵害額を請求でき、子ども達は愛人に対してそれぞれ500万円ずつの遺留分侵害額を請求できます。

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5.遺留分の請求方法

5-1.遺留分侵害額請求

遺留分の請求を遺留分侵害額請求といいます。遺留分侵害額請求とは、遺留分に相当するお金の支払いを求めることです。
遺留分は、民法改正により、遺産そのものを取り戻す権利からお金で清算を求める権利に変わりました。今から遺留分侵害額請求をされる方は、遺留分侵害者(遺言で遺贈を受けた人や生前贈与を受けた人)に対して金銭的な清算を求めることになります。

5-2.遺留分の時効

遺留分侵害額請求をする際には、相続開始と不公平な遺贈や生前贈与があったことを知ってから1年経過するまでか、相続開始から10年を経過するまでに相手方に対して請求をしなければなりません。これらの期間が経過すると時効によって遺留分侵害額請求権が消滅してしまいます。

5-3.遺留分請求には内容証明郵便を利用する

確実に遺留分侵害額請求を行った証拠を残すため、(配達証明付き)内容証明郵便を使って請求書を送りましょう。(配達証明付き)内容証明郵便とは、郵便物の差出日付、配達日付や、文書の内容などを郵便局が証明してくれる郵便です。差出人の手元にも相手方に送ったものと同じ控えが残り、確実に時効期間内に請求した証拠を残せます。
郵便局からも発送できますが、電子内容証明を使えば24時間ネットから発送可能で便利です。
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内容証明郵便を送ったら、相手方と遺留分の計算や支払方法などについて話し合い、いつまでにいくらを支払ってもらうか決定します。決まったら遺留分侵害額に関する合意書を作成し、約束どおりに支払いを受けましょう。

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所において、遺留分侵害額の請求調停を申し立て、調停委員を介して話し合いを行います。それでも解決できなければ地方裁判所で、遺留分侵害額請求訴訟という裁判を起こして裁判所に判断をしてもらう必要があります。

まとめ

遺留分が認められるのは兄弟姉妹以外の法定相続人です。遺留分を侵害されたら、侵害されたことを知ってから1年を経過するまでか、相続開始から10年を経過するまでに遺留分の請求をしなければなりません。
遺留分の計算は複雑で一般の方には分かりにくいですし、侵害者との交渉もスムーズに進まずトラブルになりやすい傾向があります。困ったときにはAuthense法律事務所の弁護士がサポートしますのでお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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