コラム
公開 2020.07.08 更新 2023.04.04

遺産分割協議に参加すべき「相続人」の範囲と調べ方

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法定相続人とは

法定相続人とは、民法が定める相続人です。
人が亡くなったときに「遺言書」が遺されていたら、遺言書で指示された人が遺産を受け取ります。一方遺言書がなかったら、民法の定める「相続人」が遺産を受け継ぎます。その民法の定める相続人が「法定相続人」です。

法定相続人には範囲と順位があるので、以下でみていきましょう。

1-1.配偶者は常に法定相続人になる

亡くなった人に夫や妻がいたら、その人は、必ず相続人になります。1日でも婚姻していたら相続権が認められます。ただし内縁の配偶者は相続人になりません。

1-2.配偶者以外の法定相続人には順位がある

配偶者以外の法定相続人には以下のとおり「順位」があります。

第1順位の相続人は子どもなどの直系卑属

もっとも優先される「第1順位の相続人」は子どもなどの直系卑属です。前婚の際に生まれた子どもや養子、認知した子どもにも平等に相続権が認められます。
子どもが本人より先に亡くなっている場合、子どもの子どもである「孫」が代わって相続人になります。孫も亡くなっていてひ孫がいたらひ孫が相続人になります。

第2順位の相続人は親などの直系尊属

子どもや孫がいない場合、「第2順位の相続人」は親などの直系尊属です。両親とも本人より先に亡くなっている場合には祖父母が相続人となり、祖父母が死亡していて曾祖父母が生きている場合には曾祖父母が相続人となります。

第3順位の相続人は兄弟姉妹または甥姪

直系卑属も直系尊属もいない場合の「第3順位の相続人」は兄弟姉妹です。兄弟姉妹が本人より先に死亡していてその子どもである甥姪がいる場合には、甥姪が代わって相続人になります。但し、甥姪も先に亡くなっている場合、その子どもは相続人になりません。

2.法定相続分とは

それぞれの相続人には「法定相続分」が認められます。法定相続分とは、民法の定める相続割合です。相続人が集まって遺産分割協議を行うときには、基本的に法定相続分に応じて遺産を分け合います。

法定相続分は、誰が相続人になるかによって異なります。

  • 配偶者と子どもが相続人…配偶者が2分の1、子どもが2分の1
  • 配偶者と親が相続人…配偶者が3分の2、親が3分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人…配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

同じ地位の相続人が複数いる場合には、頭数で等分にします。

【法定相続人の状況と法定相続分の表】

相続人の法定相続分/相続人の状況 配偶者 子ども 兄弟姉妹
配偶者のみ 全部
配偶者と1人の子ども 2分の1 2分の1
配偶者と2人の子ども 2分の1 4分の1ずつ
2人の子どものみ 2分の1ずつ
配偶者と片親 3分の2 3分の1
配偶者と両親 3分の2 6分の1ずつ
両親のみ 2分の1ずつ
配偶者と1人の兄弟 4分の3 4分の1
配偶者と2人の兄弟 4分の3 8分の1ずつ
2人の兄弟のみ 2分の1ずつ

3.遺産分割には法定相続人が全員参加しなければならない

人が亡くなって遺産が遺されたら、相続人同士で分け合わなければなりません。そのために話し合い(遺産分割協議)を行います。遺産分割協議には「法定相続人が全員参加」する必要があり、相続人が一人でも欠けていたら協議は無効となってやり直さねばなりません。そこで遺産相続を進める前提として、綿密に「相続人調査」を行う必要があります。

相続人調査が完了していないと遺産分割協議を開始できないため、もし誰かの相続人になったら、次に紹介する手順で相続人を明らかにしていきましょう。

4.法定相続人の調べ方

法定相続人を調べる「相続人調査」の方法は、以下の通りです。

4-1.戸籍謄本等を取得する

まずは亡くなった方の「生まれてから死亡するまでのすべての戸籍類」を集めましょう。
必要になるのは「戸籍謄本」「除籍謄本」「改正原戸籍謄本」の3種類です。
戸籍には、その人の出生や婚姻、離婚、出産や養子縁組、認知などの家族についての出来事が書かれています。これをみれば、その人の親族関係が明らかになるので相続人の範囲を正確に特定できるのです。

戸籍謄本は、結婚、離婚、本籍地の変更などによって何度も編成され直します。全部取り寄せると、場合によっては量が膨大になるケースもあります。しかし、時系列順に「生まれてから死亡するまでの分をすべて」入手しないと正確な親族関係が明らかになりません。漏れの無いように1つ1つチェックしながら慎重に戸籍謄本類を集めていきましょう。

戸籍謄本の取得方法

戸籍謄本類は「本籍地のある役所」に申請して取得します。現地に行ってもかまいませんし郵送でも取得できます。

4-2.相続関係図を作成

すべての戸籍謄本類を集めたら、法定相続人を特定しましょう。
法定相続人が明らかになったら、その関係を示す図を作成すると便利です。相続関係を示す図を「相続関係図」といいます。
相続関係図があると、不動産の名義変更や銀行預貯金の払い戻しなどの際に関係機関へ説明しやすくなります。
また、「法定相続情報証明制度」を利用して法務局に相続関係を認証してもらうこともできます。認証された相続関係図(法定相続情報一覧図)を利用すれば、いちいち戸籍謄本類を取り直したりしなくても、不動産の名義変更や車の名義変更、預金払い戻しや解約、株式の名義変更などができます。

弁護士に相続人調査をご依頼頂けましたら、調査終了時に相続関係図を作成してご依頼者様へお渡しします。

5.法定相続分と異なる遺産分割も可能

法定相続人が明らかになったら、相続人が全員参加して遺産分割協議を開始します。各相続人には「法定相続分」が認められますので、基本的には法定相続分に従って遺産を分けることになります。
ただし、必ず法定相続分どおりにしなければならないわけではありません。相続人が全員納得すれば、法定相続分と異なる遺産分割も可能です。例えば、「長男がすべての遺産を取得する」という分け方をしてもかまいません。

6.遺産分割協議ができなければ遺産分割調停、審判へ

相続人同士で遺産分割協議を行っても、遺産分割の方法について合意できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことも検討すべきです。
また、調停で合意できず不成立になった場合には、審判という手続きに移行します。

まとめ

遺産分割協議の前提として正確に「相続人調査」を行って法定相続人を明らかにしなければなりません。法定相続人には法律上定められた順位があります。漏れの無いように正確に調査を進めて遺産分割協議に全員参加できるようにしましょう。
相続人調査には大変手間がかかります。弁護士のサポートがあると楽に手続きを進められるので、労力をかけたくない場合や、やり方がわからない場合などにはお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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