相続対象になる遺産は、現金のように均等に分けることができるものばかりではありません。高価な自動車や宝飾品、骨董や絵画など、「頭割り」することのできないものも数多くあります。
なかでも厄介なのが、土地や建物といった不動産です。
不動産は物理的な分割が困難であるばかりか、その価値を算出するための評価方法がいくつかあり、どの方法を用いるかによって評価額が異なります。しかも多くの場合、資産価値が高いために相続人同士の間で争いの種になりがちです。
今回はこのような不動産の相続の方法について、考えてみることにしましょう。
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分割できない不動産を分割する方法は?
どちらも同じような価値があり、相続人同士の間で合意ができれば、二人でどちらの物件を相続するかを協議することで話がつく、ということは多いものです。
しかし単純に頭割りできなかったり、複数の不動産の価値が明らかに違ったりすると、相続人全員が納得できるように分割するのは、なかなか大変な作業です。
そのように困難な不動産の遺産分割ですが、もちろん方法はあります。物理的に分割できない不動産を複数の相続人が分割して相続するには、次の4つの方法があります。
- 現物分割……ひとつの土地を複数に「分筆」して、物理的に分けてしまう方法です。
- 換価分割……不動産を売却し、その対価を相続人で分ける方法です。
- 代償分割……相続人の一人がすべてを相続し、他の相続人には相続分の対価を支払う方法です。
- 共有分割……相続人がそれぞれの相続割合の分だけ、不動産を共有する方法です。
それぞれの方法についてメリット・デメリットを次に説明していきましょう。
状況に合わせた最適な分割方法を選択するために
「現物分割」は、土地の相続に使用される方法です。
「分筆」という手続きでひとつの土地を複数(相続人の人数分)に切り分け、それぞれ別々の土地として登記します。ケーキを切り分けるのと同じく単純明快な方法ですが、切り分けた土地は当然面積が小さくなりますし、切り分け方によっては資産価値が大きく変化したり「使い道のない土地」にもなりかねず、その後の活用法が限られてしまいます。
「換価分割」は、土地や建物に執着がないならば現実的な選択でしょう。
ですがこの方法では、不動産が売れてからでなくては相続ができません。不動産はそう簡単に売れるものでもありませんし、相続税の支払いのために売却を急いでしまうと、評価額よりも低い価格で売らざるを得ないケースもあります。
「代償分割」では、不動産そのものは他人の手に渡りませんから、相続人たちの感情を考えると、穏便な方法かもしれません。
ですが不動産を相続した者は他の相続人に相続分のお金を分配する必要がありますから、それ相応の現金の用意がなくてはなりません。場合によっては借り入れの必要もあり、その返済負担が大きいという点がデメリットです。
最後の「共有分割」は、不動産をその相続分に基づいて共有する方法です。
物理的に切り分けることも売却することもなく、代償分割のように誰か一人に負担がかかることもありません。
ですが売却や建て替えを行うときには共有者全員の同意が必要ということが問題になります。今は相続人同士の仲が良くても、その子どもの代になったら事情が変わり、問題が発生するかもしれないからです。
不動産の相続は最適な分割方法を選ぶことが重要
このように不動産の相続は何かと難しく、しかも争いに発展しやすいものです。
ですから不動産物件が相続対象である場合は、相続人全員で弁護士をはじめとする専門家に相談しつつ、物件の資産状況にあった最適な分割方法を選択ことが肝要でしょう。
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