夫の大切にしている物を妻が勝手に捨ててしまった。
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1.断捨離が原因で離婚トラブルに
近年、断捨離にはまる女性が増えており、以下のようなことが原因で離婚トラブルにまで発展してしまうケースがあります。
1-1.夫が大切にしているものを無断で捨ててしまう
断捨離にはまり、使っていない物は「捨ててしまおう」という考えになります。夫が大切にしている趣味の物でも妻が関心を持たず「要らない」と判断してしまい、夫に許可なく捨てることによりトラブルになります。
1-2.家庭内不和が発生
妻が断捨離依存となり、必要な物までどんどん捨ててしまって家庭生活に支障が発生し、家庭内不和に至るケースがあります。
1-3.夫が断捨離の対象に
妻が断捨離にはまり「夫も不要なのではないか」と思い離婚を考えようになるケースがあります。
今回は勝手に大切な物を捨てられた夫が妻に対し離婚請求できるのか、という観点から「断捨離と離婚」を考えてみましょう。
2.話し合いによる離婚
夫の大切なフィギュアやゲーム、釣り道具などの物を捨ててしまったときでも、夫婦が話し合いをして両方が納得すれば離婚ができます。このような話し合いによる離婚を「協議離婚」と言います。
協議離婚の場合、離婚の理由は問われないので、断捨離を含めてどのような理由でも可能です。
また調停で離婚することもできます。調停も話し合いによる解決方法なので、両者が納得さえしていれば理由は問われません。
ですが、問題なのは裁判になったときです。妻がどうしても離婚に応じないときや離婚条件について合意できないときには、裁判をしなければ離婚はできません。裁判で離婚を認めてもらうには、民法の定める「法律上の離婚理由」が必要です。裁判で法律上の離婚理由を証明できなければ離婚を認めてもらえず棄却されてしまいます。
3.物を捨てられただけでは法律上の離婚原因にならない
では、夫の大切な物を妻が断捨離したことは法律上の離婚理由になるのでしょうか?
民法が定める離婚理由は以下の5つです。
- ① 不貞(不倫、浮気)
- ② 悪意の遺棄
- ③ 3年以上の生死不明
- ④ 回復しがたい精神病
- ⑤ その他婚姻生活を継続し難い重大な事由
断捨離が①③に該当しないことは明らかです。②の悪意の遺棄は「婚姻関係を破綻させてやろうという意図を持って相手を見捨てること」です。つまりは、断捨離にはまって配偶者の物を捨てたというだけでは悪意の遺棄になりません。
③について、断捨離は精神病ではないので該当しません。たとえ断捨離にはまって強迫性障害などになっていたとしてもそれだけでは「回復しがたい精神病」とまではいえないでしょう。
となると⑤の「その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題です。
この要件は、不貞や3年以上の生死不明などの離婚理由と並ぶ程度に重大な事情と考えられています。とすれば「ゲームやフィギュアといった夫の大切にしている趣味の物を捨てた」というだけでは該当しません。
以上より「断捨離にはまった妻が夫の大切な物を捨てた」というだけでは裁判で離婚が認められない可能性が高いといえます。
4.断捨離が離婚原因になるケース
ただし以下のような一定のケースでは、妻の断捨離によって裁判離婚できる可能性があります。
4-1.妻の断捨離がきっかけで夫婦関係が悪化し、ケンカが絶えない状況
もともとの夫婦不和の原因が妻の断捨離であっても、そのことが原因で夫婦関係が極めて悪化しているとなれば離婚が認められる可能性があります。たとえばケンカが絶えない状況になっている、完全な家庭内別居状態といったケースなどで「婚姻関係を継続し難い重大な事由」と認定される可能性があります。
4-2.妻の断捨離がきっかけで夫婦不和となり長期間別居している
妻の断捨離がきっかけとなり夫婦が別居し、長期間が経過していれば裁判で離婚が認められる可能性は高くなります。別居後5年も経過していれば、妻が離婚を拒絶していても裁判で離婚できるケースが多くなってきます。
4-3.妻の断捨離が原因で不和となりお互いにやり直す意思を失っている
妻の断捨離が原因で夫婦関係が悪化し、お互いに関係を修復しようという意思を失っている場合にも裁判で離婚が認められやすくなります。
5.断捨離されただけでは慰謝料を請求できない
妻の断捨離で離婚できるケースにおいて慰謝料を払ってもらうことはできるのでしょうか?
実は「断捨離された(大切な物を捨てられた)」だけでは慰謝料請求は難しいです。
慰謝料が発生するには相手に不法行為が成立し、それによって被害者に大きな精神的苦痛が発生したことが必要です。たとえば「不倫をされた」「暴力を振るわれた」「生活費を払ってもらえず困窮している」などといったケースであれば慰謝料が発生します。
もちろん、大切な物を捨てられたとなると精神的苦痛は大きいです。しかし、前述のように、そもそも断捨離そのものが「婚姻関係を継続し難い重大な事由」にはならないため、慰謝料発生原因とはいえません。
断捨離によって夫婦関係が悪化して裁判で離婚が認められるケースでも同じです。夫婦関係の不和の原因が断捨離だけとなると、慰謝料請求は認められないでしょう。
6.慰謝料請求が可能なケース
ただし以下のようなケースでは慰謝料を請求できる可能性があります。
妻が夫を断捨離しようと家を出て行った
妻の断捨離により「夫は不要」と勝手に判断して離婚を決意し、何の話し合いもせずに家を出てしまい音信不通となったケースなどでは、慰謝料を請求できる可能性があります。
7.断捨離されて離婚を考えたときの対処方法
大切な物を捨てられて妻に不信感を持ち、離婚を考えたら以下のように対応しましょう。
7-1.離婚協議を持ちかける
まずは妻に離婚の話し合いを持ちかけて協議離婚を目指しましょう。相手が離婚を受け入れ、離婚条件を設定できたら協議離婚できます。
7-2.別居する
相手が離婚に応じない場合や離婚条件について折り合いがつかない場合には、いったん別居することをおすすめします。別居すれば妻も頭を冷やして離婚を含めた夫婦関係を真剣に考えるようになるものです。ただし妻の収入があなたより少ない場合は、きちんと婚姻費用を払う必要があります。
7-3.離婚調停をする
別居したら、家庭裁判所で離婚調停を申し立てましょう。裁判所の調停委員を介して離婚の話し合いを進めます。調停で合意できたら離婚は成立します。
7-4.状況に応じて離婚訴訟を申し立てる
調停が不成立になったとき、離婚原因を証明できそうであれば離婚訴訟を申し立てましょう。
一方、明確な離婚原因が見当たらない場合には別居期間を置いて「長期間の別居」という離婚原因を作っていくのが良いでしょう。頃合いを見計らって再度離婚調停を申し立てたり離婚訴訟に踏み切ったりすれば、離婚を実現できる可能性があります。
妻の断捨離を理由に離婚できるかどうかはケースバイケースです。対応に迷われたときにはぜひ一度、弁護士までご相談下さい。
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