コラム
公開 2021.06.22 更新 2021.10.27

夫に離婚慰謝料を請求できるケースとできないケースとは?

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離婚するからといって、必ず夫に慰謝料を請求できるわけではありません。慰謝料を請求できるのは、夫に「有責性」がある場合です。
今回は、どういったケースで夫に「有責性」が認められ、慰謝料を請求できるのか、弁護士が解説します。

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1.夫に慰謝料を請求するには「有責性」が必要

「離婚するなら夫に慰謝料を請求できる」
このように思い込んでいる女性の方が少なくありません。しかし、離婚の際に、必ずしも慰謝料を請求できるわけではありません。

離婚で慰謝料を請求できるのは、夫婦のどちらかに「有責性」がある場合に限られます。有責性とは、婚姻関係を破綻させた原因です。
自分の行動が原因となって夫婦関係を破綻させ、相手に精神的苦痛を与えた場合には、慰謝料を支払わなければなりません。一方、そういった原因がなければ、慰謝料を支払う必要はないのです。

そのため、夫に有責性がなければ、慰謝料は請求できません。反対に妻に有責性があれば、妻が夫に慰謝料を支払わなければならないということになります。

夫に慰謝料を請求できるかどうか検討する際には、「夫に有責性があるかどうか」がポイントです。

2.離婚で夫に慰謝料を請求できるケース

離婚で夫に慰謝料を請求できるケース

それでは、具体的にどのようなケースで夫に有責性が認められて慰謝料を請求できるのでしょうか?

2-1.夫の不倫

夫の不倫が原因で離婚に至った場合、夫が婚姻関係を破綻させたとして、妻は夫に慰謝料を請求できます。
ただし、離婚事由とされている「不貞行為」とは、「配偶者と不倫相手に肉体関係がある場合」のことを指します。プラトニックな関係であれば、原則として、慰謝料を請求することはできません。

2-2.夫による生活費不払いなど

夫が十分な収入があるにもかかわらず、妻へ生活費を渡さないまま、正当な理由なく家を出てしまった場合などには、「悪意の遺棄」に該当するとして、夫に有責性が認められる可能性があります。したがって、このようなことが原因で離婚に至った場合、妻は夫へ慰謝料を請求することができます。

2-3.夫によるDV(暴力)

暴力は、重大な人権の侵害行為であり、決して許されることではありません。夫から暴力を受け、離婚に至る場合、夫に有責性が認められ、慰謝料を請求できます。

2-4.夫によるモラハラ

婚姻中、夫から暴言を吐かれたり異常な束縛を受けたりして、いわゆる「モラハラ被害」を受け続けてきたケースでも、慰謝料を請求できる場合があります。

3.離婚で夫に慰謝料を請求できないケース

以下のようなケースでは、離婚するとしても、夫に慰謝料を請求することはできません。

3-1.性格の不一致

夫婦の性格の不一致が原因で離婚する場合、どちらにも有責性がないので、慰謝料は発生しません。

3-2.夫の実家との不仲

夫の両親や兄弟などの親族と不和で離婚する場合にも、夫自身に有責性が認められない限りは、慰謝料が発生しません。

3-3.宗教や政治思想の違い

宗教や政治思想などの違いによって離婚する場合にも、一般的には、慰謝料は発生しません。宗教や政治思想などが違ったとしても、夫婦の間では、互いに相手の考え方や立場を尊重すべきと考えられているからです。
ただし、夫婦の一方が、宗教や政治活動にのめり込みすぎて家庭生活を放棄し、離婚に至った場合には、慰謝料が発生する可能性があります。

3-4.子どもの教育方針の対立

子どもの教育方針が対立し、夫婦が不仲になって離婚するケースも、一般的には慰謝料が発生しません。
ただ、子どもの教育方針の違いに端を発し、夫が感情的になって妻に暴力を振るったり、暴言を吐いたりすると、慰謝料を請求できる可能性があります。

4.夫に慰謝料を請求するときの注意点

夫に慰謝料を請求するときの注意点

離婚の際、夫に慰謝料を請求する際は以下の点に注意しましょう。

4-1.証拠の確保が重要

1つ目に「証拠」を確保しておくことが重要です。
たとえば、夫の不倫が原因で離婚に至ったとして、夫に慰謝料を請求するとしても、不倫に関する十分な証拠がないと、夫と不倫の事実を争った際に、裁判で慰謝料の請求が認められない可能性があります。DVやモラハラのケースでも同様です。
慰謝料の請求を考えている場合は、早めに弁護士に相談し、不倫やDVなど、夫の「有責性」を証明できる十分な証拠を手元に集めておきましょう。

4-2.相手に資力がなければ支払ってもらえない可能性がある

夫に慰謝料を請求できるケースでも、そもそも、夫に支払い能力がなければ払ってもらえない可能性があります。
たとえば、夫が無収入で貯蓄も0であれば、慰謝料を請求したとしても、その取り立ては困難です。
日本の法制度では、判決が出されたにもかかわらず、債務者が支払いをしないとき、債権者が、債務者の財産を特定して差押えをしなければなりません。

5.離婚慰謝料の時効

離婚の際、夫に有責性があるにもかかわらず、慰謝料を請求していないケースがあります。特にDV案件では、「離婚」を急いだために、慰謝料や財産分与についての話し合いができなかったという方も多いでしょう。

仮に、離婚時に慰謝料を請求していなかった場合でも、離婚後に慰謝料を請求することはできます。ただし、離婚慰謝料には時効があり、基本的に「離婚後3年間」です。
離婚時に慰謝料の話し合いをしていない場合は、離婚後3年以内に、相手に慰謝料を請求するようにしましょう。

元夫が、任意に慰謝料を支払ってくれない場合には、元夫に対し、訴訟を起こして支払いを求める方法もあります。離婚後3年が近づいて時効成立が目前となっている場合でも、訴訟を起こせば時効の完成を猶予されます。

離婚後に元夫へ慰謝料を請求したい場合は、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

離婚するとしても、当然に夫へ慰謝料を請求できるとは限りません。請求できるケースであっても、しっかり証拠を押さえて「交渉」や「離婚調停」「離婚訴訟」を進める必要があります。弁護士にご相談いただけましたら、証拠の集め方についてのアドバイスもいたします。
また、弁護士は、代理人として夫と交渉したり、調停、訴訟手続きをしたりすることが可能です。夫との離婚トラブルでお悩みの方がおられましたら、お気軽にオーセンスの弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。企業法務から、離婚、相続問題を中心とした一般民事事件、刑事事件など幅広く取り扱う。
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