コラム
公開 2020.04.23 更新 2023.04.10

離婚の慰謝料には時効があるって本当?時効の期間と完成猶予する方法を解説

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離婚の慰謝料には時効があります。
慰謝料請求は、離婚によって精神的苦痛を受けた人の権利の1つですが、基本的には、時効を迎えてしまうと慰謝料請求はできなくなってしまいます。

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そもそも離婚の慰謝料とは?

離婚の慰謝料とは、離婚の原因となった側が、配偶者に対し、離婚によって被った精神的苦痛について支払う損害賠償金です。
慰謝料は、相手が離婚に至る原因となった不法行為がある場合に、請求することができます。

たとえば、相手が不貞行為(不倫)をしていたり、DVをしていたことで精神的苦痛を受け、離婚に至る場合は、被害を受けた側の配偶者が慰謝料を請求できます。
また、男性側が、十分に収入があるにもかかわらず、生活費を渡さないまま、正当な理由もなく家を出てしまった場合は、「悪意の遺棄」に該当し、慰謝料を請求できる可能性があります。

しかし、離婚の原因がどちらか一方の責任ではない場合には請求できません。
どちらにも離婚の原因がない場合の例として多く見られるのは、「性格の不一致」でしょう。この場合、どちらかに問題があったわけではないので慰謝料を請求することができません。

注意すべきは、離婚したら必ず妻は夫に慰謝料が請求できるという誤解です。
もちろん夫側に離婚の原因があるのであれば、妻は精神的損害の賠償金として、慰謝料を請求することができます。しかし妻側が離婚の原因を作ってしまった場合、妻は夫に慰謝料を請求する権利を有していません。

子どもがいる家庭の場合、妻が有責であっても子どもの親権や養育権を取るのであれば、養育費を夫に請求することはできます。しかしこれは慰謝料ではなく、子どもが親に請求できるお金を妻が代理で請求しているにすぎません。

離婚の慰謝料には時効がある

慰謝料は、離婚届を出して法的に離婚が成立後でも請求することができますが、離婚の慰謝料の時効は、離婚した日から3年です。

離婚したときは精神的にダメージを受け、慰謝料を考える余裕がない場合もあるでしょう。でも、この時効期限内であれば、慰謝料を請求することが可能になります。
ただし、この時効を過ぎてしまうと、どんなに精神的ダメージを受けていたとしても、相手方が時効を援用すれば、離婚の慰謝料請求をすることはできません。

慰謝料の請求を考えているのであれば、離婚を決めた時点で慰謝料請求できる期間を考慮し、行動に移す必要があります。

元配偶者に対する請求と、不倫相手に対する請求

離婚原因に多い不貞行為に対する慰謝料請求に関しては、不貞行為で精神的苦痛を受けたことに対する”不貞行為による慰謝料”という考え方と、不貞行為が原因で離婚することで精神的苦痛を受けたことに対する”離婚の慰謝料”という考え方があります。
不貞行為による慰謝料と離婚の慰謝料では起算日が変わってくるので、2つの具体例を紹介しながら解説していきます。

1. 不倫をした配偶者に離婚の慰謝料請求をする場合は、「離婚成立日」が時効の起算日となる

配偶者が不倫をしたことが原因で離婚したのち、離婚の慰謝料を請求する場合は、離婚した日が時効の起算日とされます。

元配偶者が慰謝料請求に応じてくれない場合は、訴訟をして元配偶者に慰謝料を請求しなければなりません。
この場合、離婚の原因が配偶者の不貞行為によるものだったことを、証拠を持って示す必要があります。そのため、証拠集めは重要です。

2. 不倫相手に慰謝料請求する場合

時効の期間を決める方法は2つあり、不倫相手に不貞行為による慰謝料を請求する場合、下記の期間のどちらか短いほうが時効の期限です。

  • 1. 不貞行為の事実と不貞相手の存在を知ったときから3年
  • 2. 不貞行為があったときから20年

2019年2月に、「不貞行為が原因で離婚に至ったので、離婚の慰謝料を不貞相手にも請求する」という訴訟がありました。
この裁判では、「不貞行為によって婚姻関係が破綻して離婚したとしても、行為に及んだ第三者が離婚させようと不当な干渉をするなどの特段の事情がない限り、離婚慰謝料の賠償責任を負うことはない」と判断されました。
つまり、不貞行為があったとしても、最終的には離婚するかどうかは夫婦が決めるものとして、不倫相手への「不貞行為による離婚」に対する慰謝料請求は認められないとされています。

慰謝料の時効を完成猶予する2つの方法

慰謝料の時効を完成猶予する方法

もし慰謝料請求の時効が迫っているようであれば、慰謝料請求をする意思があることを伝えることで時効を完成猶予することも可能です。
時効を完成猶予する方法を2つ紹介します。それぞれを見ていきましょう。

方法1. 催告による時効の完成猶予

配達証明付き内容証明郵便などを送付して慰謝料を請求することで、時効を一旦完成猶予することができます。
これが催告による時効の完成猶予です。

内容証明郵便は、手紙の内容を日本郵便が証明してくれる手紙の種類の1つです。また配達証明とは、配達された日付を日本郵便が証明する制度のことです。
郵便局から発送することができ、この後解説する請求よりも簡単に行えます。
ただし、催告により時効の完成が猶予される期間は半年だけなので、その期間内に裁判上の請求などをしないと、時効の完成猶予の効力は有しないことになります。

方法2. 請求による時効の完成猶予

慰謝料請求に関する訴訟を裁判所に提起することなどにより、慰謝料請求の時効完成が間近に迫っている場合でも、時効の完成を猶予することができます。そして、確定判決等により、新たに時効の進行が始まります(時効の更新)。

時効完成が迫っているのに、慰謝料問題の解決が見えないのであれば、弁護士に相談して適切な対応を取る必要があります。

時効の完成後は離婚の慰謝料請求はできない

いったん時効が完成してしまうと、相手方が時効を援用することにより、慰謝料を請求する権利がなくなってしまいます。
離婚原因を作った配偶者に対して慰謝料請求を考えているのであれば、時効が完成する前に請求するようにしてください。
ただし、時効が完成した後でも、相手が慰謝料の支払いに合意してくれれば、時効は関係なくなります。

まとめ

慰謝料には時効の制度があるため、請求をするのであれば早めに行動に移しましょう。

配偶者に、離婚の原因がある場合は、離婚によって被った精神的苦痛について慰謝料を請求できる可能性があります。そのため、配偶者に非があって離婚するのであれば、離婚を決めた時点で、慰謝料のことも頭に入れておいてください。

慰謝料を請求しているけれど配偶者がなかなか応じてくれないとき、特に時効がもうすぐ完成してしまうときは、早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。企業法務から、離婚、相続問題を中心とした一般民事事件、刑事事件など幅広く取り扱う。
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