建設住宅性能評価書にまつわるトラブルの例と対応方法についてわかりやすく解説します。
建設住宅性能評価書とは、住宅の性能を客観的に評価した住宅の通知表です。
建築会社にとっては建築した住宅の性能がアピールしやすく、
住宅取得者との間で性能について齟齬が生じにくいためメリットが大きい制度です。
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住宅性能評価書とは
住宅性能評価書とは、住宅の性能を客観的に評価した通知表のようなものです。
住宅の性能は、一般消費者にはよくわからないことが多いです。
そのため、ハウスメーカーから「この住宅は地震に強いですよ」「断熱効果が高いので省エネですよ」と説明を受けても、
その説明が本当かどうかを判断するのは難しいです。
そもそも、「地震に強い」と判断する基準がはっきりしていなければ、ハウスメーカーごとに異なる基準を用いている可能性が高く、
消費者が適切な判断をすることは難しくなってしまいます。
こうした事態を避けるため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて、住宅性能評価が実施されています。
住宅性能評価では、法令で定められた統一の基準により第三者評価機関が住宅の審査や検査を行い、住宅性能評価書を交付します。
住宅の性能が等級や数値でわかりやすく表示されることで、消費者の適切な住宅選びをサポートします。
同時に、ハウスメーカーとしても、法令で定められた客観的な基準に基づいて販売する住宅の性能をアピールすることができるというメリットがあります。
また、性能が客観的な基準に基づいて評価されるため、住宅取得者とハウスメーカーとの間で、
住宅の性能についての認識のずれを減らして、トラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書はワンセット
住宅性能評価書には、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類が存在します。
これらはそれぞれ独立した評価書ではなく、2つ揃って初めて機能するものです。
設計住宅性能評価書とは、住宅を設計する段階の図面を評価したものです。
一方、建設住宅性能評価書とは、施工中や竣工時に数回にわたり行った現場検査の結果に基づいて住宅を評価したものです。
取得の大まかな流れです。
- 設計段階の図面について「設計住宅性能評価書」を取得する
- 設計段階の図面に基づいて住宅が建築されているかを確認する「建設住宅性能評価書」を取得する
建設住宅性能評価書で評価されるポイントとは
住宅性能評価で評価されるポイントには全部で10の項目があり、うち必須となる評価項目が4つ、任意の評価項目が6つあります。
それぞれ、次のとおりです。
必須となる評価項目
住宅性能評価で必須とされている評価項目は、次の4点です。
- 構造の安定に関すること:地震や風、積雪に対する建物の強さなど
- 劣化の軽減に関すること:柱や土台の劣化の進行を遅らせるための対策の有無など
- 維持管理・更新への配慮に関すること:給排水管・水道管などの点検・清掃・修繕のしやすさなど
- 温熱環境に関すること:建物の冷暖房を効率的に行うための省エネ対策の有無など
任意の評価項目
任意の評価項目は、次の6点です。
- 火災時の安全に関すること:火災の早期発見のしやすさや延焼の可能性がある部分の耐火性など
- 空気環境に関すること:内装・天井から室内への有害物質の発散量や換気対策など
- 光・視環境に関すること:部屋の広さに対する窓の大きさの割合など
- 音環境に関すること:遮音性を高める対策の有無など
- 高齢者への配慮に関すること:バリアフリー対策の有無など
- 防犯に関すること:不法に住宅に侵入されないための対策がとられているかなど
建設住宅性能評価書の住宅取得者にとってのメリット
建設住宅性能評価を受けることで、住宅の取得者にとって次のようなメリットがあります。
住宅の性能を客観的に判断しやすい
建設住宅性能評価を受けることの最大のメリットは、住宅の性能を客観的に判断できる点にあります。
一般人が住宅の性能を判断することは容易ではありません。
客観的で分かりやすい評価基準がなければ、人生において最も金額の高い買い物となることが多い住宅の購入を、
安心して行うことはできないでしょう。
建設住宅性能評価を受けることにより、購入対象の住宅の性能が客観的にわかるため、安心して購入しやすくなります。
住宅ローンの優遇が受けられる
建設住宅性能評価を受けることにより、住宅ローンの優遇措置が受けられる可能性があります。
住宅ローンの優遇措置の内容は金融機関によって異なりますので、各金融機関に確認すると良いでしょう。
地震保険料が割引される
建設住宅性能評価を受けることにより、地震保険料の割引を受けることも可能となります。
割引される金額は、購入する住宅の耐震性能の等級に応じて異なります。
具体的な割引措置については、各保険会社に確認すると良いでしょう。
すまい給付金の申請書類に使える
すまい給付金とは、収入が一定以下である方が住宅を取得した際に、一定額の給付金を受け取れる制度です。
この制度は、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を軽減するために創設されました。
すまい給付金を受け取るためには、収入が一定以下であるなどの要件の他、購入する住宅に関する要件もあり、
そのうちの一つに建設住宅性能評価を利用していることが含まれています。
贈与税の非課税枠が拡大される
誰かから贈与を受けた場合には、贈与を受けた財産は贈与税の課税対象となります。
しかし、父母や祖父母などの自分より前の世代の直系の親族(直系尊属)から、
住宅の新築などのために用いる資金の贈与を受けた場合、
一定額までの贈与に対する贈与税が非課税となる特例があります。
これが「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」です。
適用された消費税の額や贈与を受けた年により非課税となる金額は異なりますが、
非課税となる贈与の額は、取得した住宅が、省エネ等基準に適合する「省エネ等住宅」の場合は非課税枠が拡大されます。
「省エネ等住宅」であることを証明できる書類の一つに、建設住宅性能評価書があります。
トラブルを紛争処理機関で対応してもらえる
建設住宅性能評価書が交付されている住宅については、トラブルが生じた際に
指定住宅紛争処理機関である各地の弁護士会に紛争の処理を依頼することが可能です。
紛争処理の申請手数料は1件あたり1万円であり、それ以外の費用は原則としてかかりません。
そのため、低額で紛争処理を依頼することができます。
建設住宅性能評価書が交付された住宅についてのトラブル例
建築住宅性能評価書についてのトラブルとして、次の2つを紹介します。
建設住宅性能評価書を紛失した
よくあるトラブルとしては、住宅取得者が建設住宅性能評価書を紛失したというものがあります。
紛失した場合には再発行を受けられることが多いため、再発行の手続きを取るとよいでしょう。
再発行の手続きを取る際は、手数料がかかることが一般的であるので、注意をする必要があります。
建設住宅性能評価書と実際の性能が異なる
建設住宅性能評価に関するトラブルとして、
建設住宅性能評価書に記載されている性能と実際の住宅の性能が異なるというものがあります。
この場合の対応方法については、後ほど解説します。
建設住宅性能評価書の紛争処理機関
建設住宅性能評価に関する紛争処理機関として、指定住宅紛争処理機関が定められています。
指定住宅紛争処理機関とは、各地域の弁護士会が中心となり、弁護士や建築士などが運営する機関です。
指定紛争処理機関に紛争処理を依頼できる住宅は限定されている
指定住宅紛争処理機関に紛争処理を依頼することができるのは、次の住宅に関するトラブルに限定されています。
- 建設住宅性能評価書が交付されている住宅
- 住宅瑕疵担保責任保険が付されている住宅
紛争処理手続きには、「あっせん」「調停」「仲裁」の3種類がある
指定住宅紛争処理機関への依頼で利用できる紛争処理手続きには、「あっせん」「調停」「仲裁」の3種類が存在します。
それぞれの概要は、次のとおりです。
- あっせん
当事者双方の主張を確かめ、当事者間に歩みよることをすすめて、紛争の解決をはかります。早急な解決が必要な場合や、技術的な争点が少ない場合に適しているとされています。 - 調停
当事者双方の主張を確認したうえで争点を整理し、調停案を作成し、その受諾を勧告することにより紛争の解決をはかります。技術的・法律的な争点が多く、あっせんでは解決が見込めない場合に適しているとされています。 - 仲裁
当事者双方の主張を確認したうえで、必要に応じて証拠調べや現地調査をし、仲裁委員が仲裁判断をおこなうことにより紛争の解決をはかります。当事者双方は、仲裁判断に従います。
指定住宅紛争処理機関による紛争処理では、これらの紛争処理手続を使い分けて、紛争の解決を図ります。
指定住宅紛争処理機関で対応できる案件、対応できない案件
指定紛争処理機関で対応してもらえる案件は、次のようなものです。
- 住宅に不具合があり、補修方法や補修費用などについて話し合いがまとまらない場合
- 工事代金や工期などについて認識の食い違いがある場合
一方で、次のような紛争解決には対応していません。
- 建設住宅性能評価書が交付されていない住宅や住宅瑕疵担保責任保険が付されていない住宅の問題
- 指定住宅紛争処理機関による紛争処理の対象となっている住宅を転売した場合の売買契約に関する紛争
- 近隣住民との間の紛争
建設住宅性能評価書が交付された住宅に関するトラブル対処の流れ
建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅について、住宅取得者からクレームを受けるなどのトラブルが生じた場合には、
次のように対応します。
状況を確認する
住宅取得者から性能評価書の内容が実際の建物と異なるなどのクレームを受けた場合には、まずは現地を見て状況を確認しましょう。
住宅取得者の勘違いや、場合によっては住宅取得者が言いがかりをつけている場合もあるためです。
住宅取得者から言いがかりをつけられないようにするために、引き渡しの直前に、建築した住宅の写真・動画を撮影しておくことも良いでしょう。
実際に問題があれば補修などの対応をする
現地を確認した結果、実際に住宅に問題がある場合には、住宅取得者に対して必要な措置(謝罪、補修など)を提案します。
補修工事に一定期間を要し、住宅取得者の生活に支障が生じる場合、一時的な住宅の提供や補償金の支払いなども検討する必要があるでしょう。
弁護士へ相談する
住宅の不具合の有無について、住宅取得者との間で意見が食い違っており、話し合いによる解決が見込めない場合、
指定紛争処理機関や弁護士に相談してみましょう。
指定紛争処理機関と弁護士のどちらに相談したら良いか迷った場合、双方へ相談してみることをおすすめします。
まとめ
建設住宅性能評価書は、住宅の性能を客観的に評価するものであり、
住宅取得者にとって購入する住宅の性能を把握できるというメリットが大きいものです。
また、ハウスメーカーにとっても自社が建築した住宅を客観的に評価されることにより、
高性能であることをアピールできることにつながるうえ、
住宅取得者との間で性能についての認識の不一致を防ぐこともできるでしょう。
しかし、建築住宅性能評価書を取得したからといって、住宅取得者とのトラブルが100%防止できるわけではありません。
トラブルとなってしまった場合には、早期に弁護士などの専門家へ相談してください。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
住宅の性能について、住宅取得者との間でトラブルが生じている場合、早い段階で弁護士に相談をして、対応方針を検討することで、
トラブルを早期に収束させることが可能となります。
住宅取得者からクレームが入った場合、早い段階で、お気軽に弁護士まで相談してみてください。
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