コラム

公開 2022.01.11

管理組合が知っておきたい「区分所有法」とは?わかりやすく解説

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管理組合の方が知っておくべき区分所有法についてわかりやすく解説します。

区分所有法とは、マンションなど区分所有建物に関するルールを定めた法律です。

マンションの使用に関するルールは、マンション管理規約のほか区分所有法に定められています。

区分所有法の改正の歴史も紹介します。

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区分所有法とは

区分所有法の正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」といい、その名称のとおり区分所有建物についてのルールを定めた法律です。
分譲マンションに居住している人や所有している人にとっては、この区分所有法についての知識は必須だと考えてください。

まずは、区分所有法の対象となる建物を確認しておきましょう。

区分所有法の対象となる建物

区分所有法の対象となる建物は、
「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがある」ものです。

たとえば、あくまで事例ごとに具体的に判断することにはなりますが、一般的な一軒家の子供部屋などは、通常、区分所有建物ではないことが多いです。
たとえ部屋の出入口に簡易な鍵が付いていたとしても、通常は一軒家の出入口である同じ玄関を使うほか、
他の家族がいるリビングなどのプライベートなスペースを通って子供部屋へ入る必要があり、
構造上区分されているとはいえない場合も多く、また、独立して建物としての用途に供することができるとまではいえないためです。

一方で、分譲マンションなどはたとえ「201号室」と「202号室」など隣り合っている部屋であっても
それぞれ構造上区分されており、202号室の住人が201号室の室内を通って部屋に入るなどということもありません。
このように、構造上区分され、利用上の独立性を有しているものが区分所有法の対象となります。

区分所有建物の代表例は分譲マンションであり、分譲マンションであれば、
基本的には区分所有法の対象であると考えておけばよいでしょう。

マンション使用のルールは何によって定められている?

一軒家であれば、その家の廊下や階段、ベランダなどをどう使うのかは、原則としてその家を所有し、居住している人の自由です。
ベランダにガーデンテーブルを設置したり廊下や階段に観葉植物を置いたりしたからといって、
通常はその家に住む家族以外から文句を言われることはありません。

また、自宅の一室で民泊などの事業を行ったりシェアハウスなどとしたりすることも、他の法令に反しない限りは自由です。

一方で、マンションの場合には事情が異なります。
そもそもマンションにおけるベランダや廊下、階段は共有スペースであり、一軒家の自宅のように自由に使えるわけではありません。
こうしたスペースを、マンションの一室などの「専有部分」に対して、「共有部分」といいます。

また、専有部分についても、無制限に自由な利用ができるわけではありません。
マンションによっては民泊やシェアハウスとしての利用を禁じていることもあるためです。

では、こうしたルールは何によって定められているのでしょうか?

区分所有法が基本となる

マンションの利用についてのルールは、原則として区分所有法で定められています。

しかし、区分所有法では「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」や、
「各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる。」などと定めているにとどまり
具体的な禁止事項が記載されているわけではありません。

区分所有法では、あくまでも基本となる考え方が定められているのみです。

区分所有法に定めがないことは規約で定める

マンション利用についての具体的なルールは、そのマンションごとの管理規約や使用細則などで定められています。
管理組合が区分所有者に対して建物使用に関する注意等をする場合には、この管理規約や使用細則が根拠となっていることが一般的です。
そのため、マンションを購入する際には必ずこの管理規約や使用細則を確認してから購入すべきでしょう。

たとえば、いずれそのマンションで民泊をしたいと考えているにもかかわらず、
管理規約などで禁止されていれば、民泊ができるよう規約を変更することは容易ではないためです。
また、管理規約により禁止されていることを知らずに規約違反をしてトラブルとなってしまわないよう、
すでに所有しているマンションについても、管理規約や使用細則は一度読み込んでおくことをおすすめします。

区分所有法の歴史

区分所有法の歴史
区分所有法は、これまで何度か大きな改正がされています。
ここでは、区分所有法の歴史について、概要を紹介していきましょう。

昭和37年制定

区分所有法は、昭和37年に公布された法律です。
この頃、日本でも民間の分譲マンションが登場しはじめたことから、法整備の必要性が生じました。
これに伴って制定されたのが、区分所有法のはじまりです。

昭和58年改正

昭和58年の改正では、原則として、区分所有建物の専有部分と敷地利用権を分離して処分することはできないものとされました。

「敷地利用権」とは、区分所有建物の存在を正当化するための根拠となる権利をいいます。
例えば、土地の所有権や賃借権、地上権等が挙げられます。
また、敷地利用権に似た概念として、不動産登記法上の「敷地権」という概念もあります。
敷地権とは、専有部分である建物と敷地利用権をセットのものとして登記上記載されている権利のことをいいます。

たとえば、一戸建ての住宅では建物部分と建物が建っている敷地部分である土地を別々に売買することが可能です。
実際に、建物は長男名義であるものの、その敷地である土地は父名義などということは珍しくありません。

従来はマンションであっても、敷地部分と専有部分である建物とを別々で売買することが可能でした。
しかし、この改正により、原則として専有部分である建物部分の権利移動があれば、
その専有部分に付随する敷地利用権もセットで移転することとなったのです。

敷地権方式を採用したマンションでは、専有部分である建物部分の全部事項証明書(登記簿謄本)を取得すると、
その中に敷地権についても記載がされています。
敷地利用権部分のみの独立した登記はありませんので、専有部分である建物と敷地権はセットで名義を変えるしかありません。

なお、この改正以前に建てられたマンションなどでは、いまだに専有部分と敷地権が別々に登記されているものも存在します。
改正により自動的にすべてのマンションが敷地権方式に移行したわけではないためです。

平成14年改正

平成14年の改正では、規約の適正化や共用部分の重大変更の定義の見直しなど多くの改正がなされました。

従来、特定の区分所有者が半永久的な専用使用権を持つなど、著しく不公平な規約が存在するという実態がありましたが、
こうした一部の者にとって著しく有利又は不利となる規約については無効となり得ることとされました。
これが、規約の適正化です。

また、従来大規模な改修をするには、原則として区分所有者と議決権の各4分の3以上の賛成が必要とされていました。
これが改正により「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」であれば、
かかる費用にかかわらず、区分所有者と議決権の各過半数の賛成で行うことが可能とされています。

民泊や共用部分の使い方でトラブルになった場合

民泊や共用部分の使い方でトラブルになった場合

民泊など専有部分の利用状況や、ベランダなど共用部分の使用方法などについて、
区分所有者間でトラブルになった場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか?
マンション管理組合の理事など、マンション管理者としてのトラブル対応方法について解説します。

区分所有法とマンション管理規約に沿った対応をする

区分所有者間でのトラブルが生じたら、まず区分所有法とマンション管理規約や使用細則などの規定を確認しましょう。

たとえば、ベランダから花火を打ち上げたり、わざと物を落下させたりといった誰がどう見ても危険な行為や
他の法令に違反する行為でない限り、マンション管理規約などにルールが明記されているか否かで対応方法が異なるためです。

仮に、マンション管理規約に民泊利用の禁止を明記しているにもかかわらず、
民泊を行っている区分所有者がいるのであれば、規約によりただちに取りやめるよう対応することが可能となります。

一方で、特に管理規約に禁止する旨が定められていないのであれば、
一部の人がなんとなく嫌だと感じているというだけでは、他の区分所有者の自由な利用を制限することは困難です。
民泊利用者が毎日のように、深夜に大声で騒いだり共用部分にゴミを散乱させたりするなど、
よほどの迷惑行為をしているなどの事情がない限り、一方的にやめさせることは難しいでしょう。

弁護士へ相談する

管理規約などに違反している場合であっても、区分所有者が素直に従ってくれる場合ばかりではありません。
また、明らかな規約違反行為ではない限り、規約の解釈に迷う場合や、
今後の付き合いを考えてあまり強く伝えることができない場合もあることでしょう。

このような場合には、無理に管理組合のみで対応を検討するのではなく、
対応方法を弁護士に相談したり、弁護士に対応を任せたりすると良いでしょう。

マンション管理規約の見直しを検討する

マンションにはさまざまな人が暮らしています。
明らかな法令違反行為でない以上、何を迷惑に感じて何を迷惑に感じないのかは人それぞれです。

そのため、さまざまな区分所有者が生活する建物の平穏を守るには、
その建物で暮らしていくためのルールとなる規約の整備が不可欠だといえます。
長期間規約が見直されていないケースも少なくないようですが、これでは問題が生じた際の対処が困難です。

特に、民泊など新たな制度については、規約に定めていない場合も散見されます。
また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「おうち時間」の拡がりによって、
ベランダでBBQをする人などが増えているようで、これもトラブルの原因となりかねません。

いま一度規約を確認し、記載内容が不十分な場合には見直しを検討すると良いでしょう。

マンション管理規約を見直すには?

マンション管理規約の見直しは、理事会などのみで勝手に決めることはできません。
管理規約は区分所有者全員の生活に大きく影響するものであるためです。

ここでは、管理規約を見直すまでの流れを紹介します。

理事会などで検討する

はじめに、見直すべき内容について理事会などで検討します。
検討段階でさまざまな情報が飛び交えば、混乱を招きかねません。

そのため、次の段階へ進むかどうか、まずは理事会の内部でよく話し合うと良いでしょう。
この時点で弁護士などの専門家へ相談しておくと安心です。

区分所有者へ説明する

見直すべき内容が理事会内で固まったら、説明会などを行い、見直し案を区分所有者へ説明します。
説明会では単に規約の条文案のみを説明するのではなく、見直しの理由や背景なども併せて説明すると良いでしょう。

このときの区分所有者の反応が、見直しの可否について総会にかけるかどうかの検討材料の一つとなります。

総会で決議をする

最終的に規約を変更するには、区分所有法の規定により、特別決議が必要となります。
特別決議とは、区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議のことです。

さらに、規約の設定や変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、
その承諾を得なければならないとされています。

投票した人のうちの4分の3ではなく、区分所有者と議決権総数の4分の3であるため、
規約変更のハードルは決して低いものではありません。
区分所有者の高齢化が進めば相続手続きが未了であったり、所有者が認知症となったりといった理由から
議決権の行使が困難となる区分所有者が増える可能性があります。
議決権行使が困難な区分所有者が増えれば増えるほど、規約の変更はより困難となるでしょう。

また、すでに民泊を始めてしまっている区分所有者がいれば、
民泊禁止を織り込んだ規約を規約の改正は難しいといえます。
なぜなら、民泊を禁止する旨の規約を成立させるためには、
既に民泊をおこなっている区分所有者の承諾を得る必要があるためです。

こうした事態を避けるため、トラブルが起きる前に適宜マンション管理規約を見直し、
現状に沿った内容に更新していくことが求められます。

変更後の規約を作成する

変更が無事に決議されたら、変更後の規約を作成します。
規約の原本は管理組合における管理者などにて保管をおこない、印刷して製本をした写しを
各区分所有者へ配布することが望ましいでしょう。
規約は、建物内の見やすい場所に掲示することも必要となります。

まとめ

区分所有法は、マンションの管理や利用についての基本的なルールを定めた法律です。
マンション管理組合の理事となった場合はもちろん、理事以外の区分所有者も一読しておくべきだといえます。
併せて、個別のマンションについてのルールが定められている管理規約や使用細則なども確認しておきましょう。

個々の区分所有者が一つのマンションで暮らすにあたっては、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
適切な規約を定めておくことでトラブルを未然に防ぐことにつながりますので、
マンション管理規約は必要に応じてきちんと見直すようにしましょう。

規約の見直しを検討の際や、区分所有者間でのトラブルが生じてしまった際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

マンションなどの区分建物に関するトラブルは、事前に防ぐことが最も重要です。
そのためには、必要十分な管理規約等を作成しておく必要があります。

また、万が一区分建物に関するトラブルが生じた場合には、区分所有法や管理規約、
使用細則の規定の解釈が問題となることも多く、適切に解決することが困難な場合もあります。

そのため、トラブルが生じる前に、弁護士に相談・依頼することにより、
管理規約等の規定を整備するなどの事前の対策をとっておくことをお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。創価大学法学部卒業。創価大学法科大学院修了。不動産会社やIT企業などの顧問弁護士として企業法務に携わるとともに、離婚や相続をはじめとする一般民事、刑事弁護など、様々な案件に取り組んでいる。また、かつてプロ選手を志した長年のサッカー経験からスポーツ法務にも強い意欲を有し、スポーツ法政策研究会に所属し研鑽を重ねる等、スポーツ法務における見識を広げている。
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