土地の有効活用をしたいので、住んでいる人に退去してもらいたい
相談までの経緯・背景
60代のC男さんは、第三者に貸している土地を相続しました。
相続した土地にはC男さんのお父さんの代から借主が建てた一軒家が建っており、現在でも人が住んでいました。
C男さんはこの土地を有効活用するために、住んでいる方に退去してもらいたいと考え、立ち退き交渉してほしいと当所にご依頼されました。
解決までの流れ
この立ち退き交渉は、当初から難航が予想されていました。
土地に建っている建物に、長年暮らしていたのが94歳のお婆さんだったためです。
幸い、多少耳が遠くなってはいましたが、心身ともに健康で、判断力に問題はありませんでした。ただ、長年慣れ親しんだ土地、建物から出ていって欲しいと伝えても、拒否されるだろうことは容易に想像がつきました。まずは、ファーストコンタクトとしてお手紙をお送りすることにしました。
依頼者であるC男さんのご意向をお年を召した方にもわかりやすい内容で書面にまとめてお送りしたところ、ご連絡をいただきました。
アポイントを取ってお伺いし、内容について説明しますが、案の定「出ていくのはちょっと…」とのお返事でした。このお婆さんの家には、月に数回、様子を見に甥のE男さんが通っていらっしゃいました。
そこで、この甥であるE男さんにご連絡を取ったところ、「これは良い機会なので、借地を返して財産を整理したい」とのご意向をお持ちのことが分かり、もろもろお話を伺っていきました。すると、甥のE男さんとしても高齢のお婆さんが一人暮らしを続けるのは限界であると考え、そろそろ施設に入ったほうがいいと考えていらっしゃいました。
また、ご高齢のために庭の手入れもままならならず、伸び放題になっていた植木の枝が道路にも侵食、ご近所さんから苦情が来ているといった問題も発生していました。仮に立ち退き交渉に成功し、出ていってもらったとしても、この年齢では新たに賃貸物件を借りることも難しいことが予想されました。
そこで、地域の福祉課の職員も巻き込んで、お婆さんに合った入居施設探しを行っていきました。並行して、お婆さんご本人にもその旨を伝えていきましたが、やはり最初は渋っていました。
話を聞いていくと、お婆さんの家はご近所のお年寄りの集会所になっており、月に数回行われる集まりを、ことのほか楽しみにしていたことがわかりました。
金銭面だけではなく、そのような条件も考慮に入れた上で、退去後も可能な限りお婆さんの生活環境が変わらないように配慮を重ねて交渉を続けた結果、最終的に双方が納得できる形での退去が実現しました。
結果・解決ポイント
最終的に、退去費用300万円と、建物の取り壊し費用をC男さんが負担することで着地しました。
スムーズに交渉が進展したのは、甥のE男さんの存在がとても大きかったことは否めません。
親族の協力を得て、地域の職員も巻き込むことで、よりよい新たな環境構築を進めることができたのが、納得できる解決に着地できたポイントだと思います。
施設に入ったことで、お婆さんの生活面の不安も解消され、さらに生きがいだった地域の方々との交流も引き続き行えることで、生き生きと暮らすことができています。
甥のE男さんもご高齢のお婆さんが一人暮らししていることがずっと心配でならなかったそうで、ご安心いただけました。また、C男さんも新たにマンションを建てて土地を有効活用することができ、感謝の声を頂戴しました。
一見、難しい状況に見えても、さまざまな要因から解決の糸口をたどっていくことができます。
お悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
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