相続したアパートを建て替えるため、入居者に退去してほしい
相談までの経緯・背景
50代女性のA子さんは、亡き父からアパートを相続しました。
しかし、このアパートは老朽化が進んでおり、1階部分はボロボロで貸し出せる状態ではなく、2階は進学塾に貸し出していたが、地域の相場よりかなり安い賃料で貸している状態でした。
A子さんは持病を抱えており、働きに出ることができない状況にありました。賃貸収入で暮らすため、アパートを取り壊し、新たに賃貸物件を建て直すことを決意しました。
建て直しのため、亡き父の代から入居していた進学塾に立ち退いてもらう必要がありました。
解決までの流れ
入居していた進学塾は、地域の保護者から信頼を集めていました。
大手のフランチャイズではなく、個人で経営しており、塾の経営と立ち退き手続きをひとりで行わなければなりませんでした。A子さんの要望を伝えると、退去自体にはご理解いただくことができましたが、2つ問題が生じました。
1つは転居先の確保。広さや使い勝手はもちろん、新たな賃料に関しても手頃な物件を、ごく近所で探さなければなりません。
もう1つは時期。交渉したころ、ちょうど冬期講習の時期と重なり、「とてもそんなことをしている暇はない」「来年の春まで待って欲しい」と、スケジュールの調整をお願いされました。新たな物件に関しては、当所と提携している不動産会社と協力して、塾の経営者の要望に叶う物件を探しました。
時期に関しては、A子さんのご要望を根気よくお伝えすることで、当初の希望時期をズラさずに立ち退いてもらうよう交渉を進めました。とはいえ、先方も退去するということが初めてで、勝手がわからないうえに、塾の繁忙期と重なったこともあり、かなりのストレスを感じていることが伝わってきました。
そこで、何度も足を運び、直接顔を合わせてお話をすることで、悩みがあれば何でも相談してほしいことや、お互いにより良い解決をするために弁護士として尽力していることなどを丁寧に伝えることを心がけました。たびたび顔を合わせているうち、少しずつ心を開いてくれるようになり、悩みを打ち明けてくれるようになりました。
「転居後はこんな塾にしたい」
「こんな内装にしたい」
そういった相談も解決するために、提携業者とも連携していきました。やがて、立地・予算的にも塾の経営者の方の要望に沿った物件が見つかると、そこからはトントン拍子に話は進み、無事、A子さんの当初のご希望どおりの日程で立ち退きを完了させることができました。
結果、新たにきれいなアパートを建築。家賃収入も建て替え前の数倍に増え、A子さんの生活も安定しました。
結果・解決ポイント
立ち退いてもらうためには、相手方の信頼を得てスムーズに交渉が進まなければ難航してしまいます。
そのために、綿密かつ丁寧なコミュニケーションが必要です。
ご依頼者様のご要望や法律上、絶対に譲れない部分は守りながらも、弁護士を前に身構えている相手の心を解きほぐし、信頼できる、交渉するに資する相手だと信じてもらわなければなりません。交渉相手のタイプもさまざまです。
お一人おひとり、皆さん性格も信念もバックグラウンドも異なる方々を相手に交渉していきます。今回のケースでも、最終的に塾の経営者の方に信頼していただけたことが無事解決できた大きなポイントです。
立ち退き交渉を当事者同士で行うのは難しいでしょう。
お悩みの際は、経験豊富な弁護士にまずは一度ご相談されることをおすすめします。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら