交通事故でケガを負った場合は加害者に慰謝料を請求できますが、そのうちの「入通院慰謝料」の金額が症状固定の時期によって大きく変わる可能性があることをご存じですか?
知っているようでよく知らない交通事故の用語とともに、症状固定の時期の重要性をしっかり理解しておきましょう。
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症状固定とは
交通事故の被害に遭うと、目に見えるケガ以外にも、打撲や骨折、首や腰の痛み、手足のしびれ等といったさまざまな症状が起こりえます。
これらは治療によって完治することもありますが、治療を続けても痛みが残ってしまったり、関節の動きが制限されたり、場合によっては半身不随や高次脳機能障害といった重い障害が残るケースもありえます。
治療してもなお残存するこういった症状を一般に「後遺症」と呼びますが、法律上は「傷害が治ったとき身体に存する障害」(自賠法施行令2条1項2号)を「後遺障害」と定義しています。
「傷害が治った」といえるには、「これ以上の治療を続けても将来にわたって回復の見込みがない」と判断されることが必要です。
この「これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る」という状態になったことを「症状固定」といいます。
具体的な症状固定の時期は、医師の判断によって決まります。
入通院慰謝料とは
交通事故の被害者は、事故によって受けた損害を賠償するためのお金として、加害者から「損害賠償」の支払いを受けることができます。
ケガの治療費や破損した自動車の修理費をはじめ、治療中に仕事を休まざるをえなくなったことで減少した収入の「休業損害」や、労働能力の低下によって将来得られるはずだった収入が減ってしまう「逸失利益」など、さまざまなお金をひとまとめにした金銭賠償を「損害賠償」というのです。
そして、よく耳にする「慰謝料」もこの損害賠償の費目の中のひとつです。
慰謝料というのは、事故による精神的損害を賠償してもらうためのお金です。
人がケガをしたり死亡したりした「人身事故」であれば、事故に遭ったことによる苦痛や悲しみといった精神的な損害を、お金に換算して賠償してもらうことができます。
そして、この慰謝料の中でも、「交通事故でケガを負い、入院または通院しなければならなくなったという精神的損害」に対して支払われる慰謝料を入通院慰謝料といいます。
入通院慰謝料は、あくまで精神的損害に対する賠償ですので、実際に入院にかかった費用やケガの治療費とは別に請求することができます。
その金額は、入院・通院の期間の長さによって変わってきます。
※なお、入通院慰謝料以外の慰謝料として、「交通事故でケガを負い、後遺障害が残ったことよる精神的損害」に対して支払われる後遺障害慰謝料と、「事故の被害者が死亡した場合に、被害者本人及び被害者の遺族に生じる精神的損害」に対して支払われる死亡慰謝料があります。
症状固定と入通院慰謝料の関係
では、この「症状固定」と「入通院慰謝料」にはどのような関係があるのでしょうか?
先に説明したとおり、症状固定というのは「これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る」という状態のことですから、症状固定の後に通院治療を続けたとしても、残存する後遺障害を治癒する効果はないということになります。
そのため、症状固定以降の通院にかかる入通院慰謝料を加害者に支払ってもらうことは当然できません。
つまり、「入通院慰謝料が請求できるのは症状固定までの期間分だけ」ということです。
そしてこの点を踏まえて考えると、「症状固定のタイミングを誤ると事故被害者にとって不利益になる」ということが分かります。
例として挙げられるのが、ケガの治療のための通院治療中に、相手方の保険会社から「そろそろ症状固定の時期ではないですか?」と打診されるようなケースです。
まだ治療によって症状が改善する余地が残っているにもかかわらず、保険会社に言われるまま早期に症状固定してしまうと、入通院慰謝料が本来支払ってもらえたはずの金額よりも少なくなってしまう可能性があるのです。
このため、「まだ回復の見込みがあるにもかかわらず治療をやめる」ということは決してしてはいけません。
重要なのは、「ここまでは治療の効果があり、一定程度まで回復してきたが、これ以降は治療を続けても回復の見込みがない」という適切なタイミングで症状固定を行うことなのです。
慰謝料を請求するうえで気をつけたい事故後の行動
症状固定以外にも、慰謝料を請求するうえで注意すべきポイントがあります。
ここでは、交通事故の被害に遭った場合に、適切な金額の慰謝料を加害者に請求するための注意点を確認しておきましょう。
警察に通報し、人身事故として届出をする
事故の相手方の保険会社に損害賠償を請求する際に必要となるのが「交通事故証明書」です。
しかし、この交通事故証明者は、警察に事故の届出を行わなければ発行してもらうことができません。
交通事故に遭ったら、必ず警察に連絡しましょう。
そして重要なのが、「物損事故」ではなく「人身事故」として届出をするという点です。
仮に物損事故として届出をしてしまうと、物損に対する賠償金しか請求できないため、後になってからケガや障害が発覚しても、加害者に治療費の支払いを求めることができません。
さらに、慰謝料が請求できるのは原則として人身事故に限られます。
交通事故の被害者になった場合は、物損事故扱いにすることによるデメリットを避けるため、人身事故として届出を行う点を忘れないようにしてください。
なるべく早めに病院に行く
事故直後は痛みを感じなかったり、軽傷だと思ったりしても、後から症状が悪化するケースや、重大な障害に発展するケースもありえます。
また、事故から最初の診察までに期間があいてしまうと、相手方の保険会社から「事故とこのケガには因果関係がないのでは?」と疑われてしまい、保険金請求の妨げになる可能性もあります。
事故後は必ず、可能な限り早めに整形外科などの病院へ行き、診察を受けてください。
適切な金額の慰謝料を支払ってもらうための「弁護士基準」
交通事故の慰謝料請求において、症状固定のタイミングが重要であることをここまで説明してきました。
症状固定によって入通院慰謝料の金額が算定され、なお残存する症状があれば、後遺障害の認定を受けられるかを検討することになります。
そしてもうひとつ重要なのが、慰謝料の金額を算出するための基準は3種類あり、基準ごとに大きく金額が異なるという点です。
最後にこの3つの基準をご紹介しましょう。
自賠責基準
車を運転する人が必ず加入しなければならない「自賠責保険」で定められている基準が自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低くなります。
任意保険基準
各任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準が任意保険基準です。
自賠責基準よりは賠償金額が高くなりますが、弁護士基準と比較すると低額です。
弁護士基準
裁判基準とも呼ばれる基準です。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、賠償金額は最も高くなります。
ただし、この弁護士基準によって慰謝料を請求するには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
このことから、適切な金額の慰謝料を支払ってもらうよう相手方に求めていくのであれば、弁護士に依頼するという選択肢を検討すべきといえるのです。
まとめ
症状固定のタイミングは、加害者に請求できる入通院慰謝料の金額に大きく影響します。
しかし、保険会社から症状固定を打診されると、「言われた通り早く症状固定にした方がいいのでは?」と感じてしまうかもしれません。
交通事故の被害に遭い、症状固定について判断に迷われている方や、相手方との示談交渉に不安があるという方は、お気軽にオーセンスの弁護士にご相談ください。
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