交通事故というと「車と人の事故」や「車同士の事故」を思い浮かべますが、お店や事務所が交通事故の被害に遭って、営業に支障が出ることもあります。 そのような被害に遭ったときに請求できるのが「営業損害」です。 今回は営業損害の解説とあわせて、よく似た交通事故用語についても整理していますので、ぜひご一読ください。
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営業損害は加害者に請求できる損害賠償の1つ
交通事故に遭った被害者が加害者に請求できる損害賠償には、いくつか種類があります。
「損害賠償」というのは文字通り、交通事故に遭ったせいで発生した損害を、加害者に弁償してもらうことを言います
営業損害も、加害者に賠償を請求できる損害の1つです。
事故に遭わなければ得られたはずの利益=営業損害
「営業損害」とは、交通事故によって店舗や事務所、営業車などが被害を受けて休業せざるを得なくなった場合などに生じる、営業上の損失です。
つまり、「交通事故に遭わなければ本来得られるはずだった、お店や会社の利益」のことをいいます。
例えば、飲食店に車が衝突して店内に被害が生じた場合、修理のためにお店を休む必要がありますよね。
事故がなければ、お店は通常通り営業し、利益を得られたはずです。
本来得られるはずだった利益を失ってしまったという意味で使われるのが、営業損害という言葉です。
ただし請求が認められる条件はかなり厳しく、休業していた期間や損害額が本当に事故を原因とするものかどうかを立証しなければなりません。
休業損害と営業損害の違い
営業損害とよく似た用語で、「休業損害」というものがあります。
休業損害とは、ケガが原因で仕事を休まざるをえなくなったために生じた、被害者の収入の減少のことをいいます。
簡単に言えば、被害者自身がケガをして働けなくなった分の損害が「休業損害」、被害者本人はケガをしていなくても店舗などの破損で営業できなくなった分の損害が「営業損害」です。
なお、もう一つ間違いやすいものとして「休業補償」という言葉があります。
これは仕事中や通勤中の事故といった労働災害(労災)に関する用語で、正式には「休業(補償)給付」といいます。
会社が加入している労災保険による給付で、仕事中の事故である業務災害への給付「休業補償給付」と、通勤中の事故である通勤災害への給付「休業給付」をあわせて「休業(補償)給付」というのですが、これを「休業補償」と呼ぶことがあります。
交通事故に関する法律用語はよく似たものが多いので、混同しないよう注意しましょう。
損害賠償請求の種類
先に説明したとおり、営業損害は加害者に賠償請求できる損害の1つです。
では、交通事故によって生じる「損害」にはどのようなものがあるのでしょうか?
財産的損害
「財産的損害」とは、文字通り被害者の財産上の損害のことです。
財産的損害はさらに2つに分けられます。
まず1つ目は「消極損害」です。
消極損害とは、「交通事故に遭わなければ得られたはずの利益や収入が得られなかった」という、本来プラスになっていたはずの利益がなくなってしまった損害のことです。
営業損害や休業損害は、この消極損害に当てはまります。
もう1つは、「積極損害」です。
積極損害とは、「交通事故に遭ったがために、本来支払わなくてもいいお金を出費することになってしまった」という損害のことです。
不要な支出によってマイナスが発生してしまった損害といえるでしょう。
積極損害の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- ・ 治療費
- ・ 入院雑費
- ・ 通院交通費
- ・ 付添看護費用
精神的損害
「精神的損害」とは、交通事故によって被害者が感じた精神的な恐怖や苦痛を指します。
この精神的損害に対する賠償金が、一般的に言われる「慰謝料」です。
交通事故における慰謝料とは、事故によって受けた苦痛に対する補償であり、被害者が加害者側から受け取る賠償金の一部です。
損害賠償金全体のことを「慰謝料」と呼ぶと思っている人も多いですが、これは正しくありません。
慰謝料とは、あくまでも賠償金を構成する複数要素の1つであることを覚えておきましょう。
営業損害の問題点
営業損害は、その存否や算定方法が争点になることが多く、被害者側の主張をそのまま認めてもらうのが難しい損害といえます。
事故によって店舗が損傷した場合でも、「そもそも休業まで必要だったかどうか」という解釈が問題になることもあります。
実際にどれだけ損害があったかを立証するために、事故の以前と比較した事故後の売上げの詳細な記録を保管し、相手方との交渉に備える必要があるでしょう。
休車損害とは
「休車損害」とは営業損害の一種で、営業車両が事故に遭ったことが原因で営業ができなくなったことにより発生する損害です。
例えば、タクシーやバス、運送会社のトラックといった営業用車両が破損してしまうと、修理や買い替えが完了するまでの期間、その事故車両では営業ができなくなります。
このような場合に、「車が事故に遭わなければ得られたはずの利益が得られなかった」という損害が休車損害です。
休車損害の算定方法
まずは、事故車両の1日当たりの営業収入を算出します。
1日当たりの営業収入は、事故前3か月間の売上を平均して算出するのが一般的です。
この営業収入から、変動経費(ガソリン代や修理代など、営業しないことで支出を免れた経費)を引き、その金額に営業できなかった休車日数を乗じることで損害額を算出します。
休車損害が認められないケース
必ずしも全てのケースにおいて、休車損害が認められるわけではありません。
分かりやすい例がタクシー会社の場合です。
一般的なタクシー会社であれば、ある1台の車両が事故により走行不能になったとしても、代わりに使用できる予備の車両(遊休車両)を用意できると想定できます。
このように、代替車両で問題なく業務を行えるケースにおいては、一定の売上をカバーすることができると判断されるのです。
となれば、被害者側で算出した休車損害のすべてを賠償するよう加害者側に認めさせるのは、ハードルが高いと言えるでしょう。
まとめ
以上のように、営業損害はその金額が争いになりやすく、被害者が主張する金額を加害者に認めさせるのが難しい損害といえます。
交通事故が原因で店舗などが破損し、それまで通りの営業が難しくなった場合は、早めの段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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