コラム

自転車事故の損害賠償と過失割合について解説

近年、全国的にも自転車による交通事故が非常に多く発生しています。 中には自動車事故のように深刻な結果になってしまったり、多額の賠償金を請求されたりと自転車事故といえども重大な事故になるケースがあります。 そこで今回は自転車事故について詳しく解説していきます。 自転車事故に巻き込まれた際の過失割合や損害賠償など、意外と知られていない項目が多く、参考になることばかりです。ぜひご一読ください。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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自転車事故には3パターンある

自転車が絡む事故には3つのパターンが想定されます。
それぞれのパターンにおける、特徴をご紹介します。

①自動車と自転車の事故

「自動車(自動二輪車を含む。)と自転車」の事故の場合、仮に自転車の運転手側に非が大きくても過失割合については自転車に有利になるケースの方が多いです。
法律上、自転車は軽車両とされていますが、実際には歩行者と似たような性質を持っていることもあると判断されます。
また自動車の運転手は、当然自転車に注意して運転するべきとされていることも理由の1つです。

②自転車同士の事故

「自転車同士」の事故は、全国的には減少傾向にあります。
しかし重大な事故になることが多々あり、死者が出るケースもあります。
また自転車専用の任意保険に加入していることは圧倒的に少ないため、慰謝料や賠償金の支払いが全額自己負担になってしまうこともあります。

③自転車と歩行者の事故

「自転車と歩行者」は全国的にも増加傾向にあり社会問題になっていると言っても過言ではないでしょう。
よく誤解されますが、自転車だからと言って賠償金額が安いということはなく、自動車事故と同等の水準です。
そのため賠償金額が多額になり、任意保険に加入していないと生活を逼迫する可能性もあります。

自転車事故特有の特徴

自動車事故ではあまり見られない、自転車特有の特徴を3つご紹介します。

加害者も被害者も「自転車保険」に加入していないことが多い

自動車の自賠責保険のような、購入時に強制的に加入しなければならない保険が自転車にはありません。

2015年に兵庫県で全国で初めて「自転車保険」への加入が義務化され、各自治体レベルでその流れが広まり、2020年4月には、東京都でも自転車保険加入が義務化されました。

少しずつではありますが自転車保険への加入率も増えているようですが、自転車保険の認知度は低く、すべての所有者には浸透していないのが実情です。

しかし、その他の自治体においても、努力義務や検討中としているところがあり、今後も加入義務化を規定する自治体は増えてくると予想されます。

過失割合で争いが起きる

自転車には免許制度がありません。
また自動車事故と比べて、訴訟にまで発展した事例が少なく、過去の判例数が十分ではありません。
そのため過失割合で揉めることは頻繁にあります。
また保険未加入であれば、保険会社など第三者の介入がなく当事者同士の話し合いになるため争いに発展しやすいのです。

後遺障害を認定する機関がない

自動車事故の場合のような後遺障害を認定してくれる機関がないのも、自転車事故での問題点です。

後遺障害の程度を決めてくれる機関がないということは、自分自身で客観的に度合いを示さなければなりません。
つまりは、判断材料となる書類や資料を自分で集め、主張する必要があるということです。

自転車事故での過失割合

自動車と自転車の事故の場合、自転車は弱い立場の乗り物なので、必然的に過失割合においても小さくなります。
なぜなら、自動車と比べてスピードも遅く、事故になった場合に大ケガをするリスクが非常に高いためです。

例えば以下のようなケースで自転車の過失割合は小さくなりやすいです。

  • ・自転車の運転者が老人や子供の場合
  • ・相手の車が大型車の場合
  • ・相手の車に重大な過失があった場合

反対に自転車の過失割合が大きくなるケースは以下のとおりです。

  • ・夜間にライトを付けずに運転を行った場合
  • ・自転車側が飲酒運転や、危険な運転をしていた場合
  • ・その他自転車側に重大な過失があった場合

自転車事故の過失割合を決定するポイント

自転車事故_ポイント

では過失割合が決定される際のポイントを説明します。

ポイント① 相手方の立場

自転車事故では相手方の立場により過失割合が大きく変化します。
相手方が自動車やバイクであれば、自転車側の立場が弱いため過失割合は小さくなります。
しかし相手方が歩行者の場合は、自転車側が危害を与える可能性が高いため、必然的に過失割合は大きくなるのです。

ポイント② 事故現場が交差点かどうか

現場が交差点かどうかも大きく影響します。
なぜなら交差点には特別なルールがあるためです。
信号機の有無や道路の幅など、様々な条件が関わってきます。

ポイント③ 信号機は絶対の基準

交差点に限らず、横断歩道でも信号の有無は重要な要素の1つです。
信号は絶対的な指標となります。
当然ですが信号無視をした場合や、黄色で進んでしまった場合は過失が大きいと判断されます。
誤解している人が多いですが、信号が黄色の時は原則停止する義務があります。
自転車だからといって無視することのないように注意して乗りましょう。

ポイント④ 事故現場の場所

自転車と歩行者の事故の場合、発生現場の場所により過失割合が変化します。
幹線道路の場合、自転車側の割合は低くなる可能性があります。
しかし住宅街や商業地の場合の事故は、歩行者側の過失割合が小さくなります。

ポイント⑤ 事故発生時の時間

時間帯も過失割合を決定づける重要な要素です。
夜間の事故の場合、自転車側の過失割合が大きくなります。
自転車側からは、車やバイクのライトが発見しやすいため、事故になるのを避けられたと考えられるからです。

ポイント⑥ 横断歩道

横断歩道上で歩行者との事故が発生した場合、歩行者が最優先で保護されるべき存在と見なされます。
歩行者が信号無視などの著しい過失がない限りは、自転車側の過失が小さくなることはありえないと考えられます。

自転車事故の過失割合事例

実際にあった過失割合の事例をいくつかご紹介します。

自転車と自動車の過失割合一例

自転車が「右側」を走行していて自動車と衝突

  • (例)
    右側通行で逆走していた自転車Aが、直進していた自動車Bと衝突した。

    過失割合 A:B=2:8

自転車は軽車両として、あくまでも車両扱いされるので左側通行の義務があります。
しかし実際には車両としての認識がなく、右側通行している自転車も多いのが実情であり、
自転車が逆走していた場合でも、自動車の過失割合が大きいとされることが多いです。
もっとも、自転車側が、居眠り運転をしている等の重大な過失が認められる場合には、3割程度、自転車側の過失が加算されることがあります。

交差点で自転車が巻き込まれる

  • (例)
    左側通行で直進していた自転車Aと、自転車の前にいた自動車Bが左折した時に衝突した。

    過失割合 A:B=1:9

この事例の場合、一般的に自転車側の過失は低いとされます。
さらに自動車が方向指示器を作動させていなかった場合などは、自転車側の過失がゼロになることもありえます。

自転車同士の過失割合一例

店舗前の歩道における自転車同士の事故

  • (例)
    店舗前の歩道において、駐輪スペースを探し、それを見つけて駐車しようとした自転車Aと、前から走ってきた自転車Bが衝突した。

    過失割合 A:B=4.5:5.5

裁判ではABどちらも前方不注意が認められ、さらにBは、AがBの存在に気が付いていないと認識し得たにもかかわらず、Aが避けるであろうと過信したと判断され、上記のようなかたちで、過失割合が認定されました。

横断歩道へ進行する自転車と疾走する自転車の事故

  • (例)
    歩道から横断歩道へ入ろうと前進した自転車Aと、右から車道を時速20キロメートルで疾走してきた自転車Bが衝突した。

    過失割合 A:B=1:9

横断歩道付近で発生した事故のため、Bの過失割合が大きいと判断されたケースです。
裁判例では、横断歩道を通過する際は、歩行者も含めたあらゆる危険を予測して、一時停止しなければならないということが強調されました。

自転車事故の慰謝料や損害賠償について

自転車事故の場合の損害賠償についてご紹介します。

物損事故の賠償とは

物損の場合、必要最低限の損傷した物の修理費のみが補償されます。
慰謝料や治療費などは賠償金に含まれません。

人身事故の賠償とは

人身の場合は自賠責保険の最低限補償があり、賠償金の項目も慰謝料や治療費、休業補償費など多くあります。

通院期間によって変化する

慰謝料は病院への通院期間の長さによって変化します。
基本的には、むち打ちの症状の場合には、以下のとおりです。
もっとも、以下は、弁護士に依頼した場合の金額であり、保険会社の基準等では、挙げたものよりも低額であると考えられます。

通院期間 慰謝料
1か月 19万円
2か月 36万円
3か月 53万円
4か月 67万円
5か月 79万円
6か月 89万円

まとめ

日本は世界でも有数の自転車大国です。
昨今は自転車の事故でも膨大な金額の賠償金を負担しなければならない事例も増えています。
自転車事故に巻き込まれてしまった場合は、まずは警察に連絡し、相手方の連絡先を聞いておきましょう。
保険未加入の場合は当事者同士で話し合いすることになりますが、お困りの方はお気軽にオーセンスまでご連絡ください。

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