交通事故に遭って、そのケガが要因で退職を余儀なくされたとき、休業損害を相手に請求することは出来るのでしょうか?また、その場合の休業損害はいくら支払われて、いつまでの分が支払われるものなのでしょうか。交通事故のケガがもとで退職することになってしまった場合、このような疑問がでてくるところだと思います。 そこで、今回は、交通事故が要因で会社を退職せざるを得なくなった際に、休業損害の請求はできるのか、休業損害を請求するためにはどのような条件が必要なのか、またその注意点は何かについて詳しく解説していきます。
目次
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交通事故が要因で退職した場合に休業損害は支払われるのか
休業損害とは、交通事故にあってケガをして入院等をしたときに仕事を休むことになり、その休んだ分給料が減額されたりしたときの損害のことをいいます。
休業損害も交通事故の賠償金として相手に請求することが出来ます。
では、もし交通事故で傷害を負い、その傷害が要因で退職を余儀なくされた場合に休業損害は相手に請求することが出来るのでしょうか。
休業損害は、事故が要因で仕事を休んだときに請求できる金額です。
これが退職の場合は、仕事を辞めてしまうわけですから、休業ではありません。
このような場合でも休業損害を相手に請求出来るのかというのが問題点になります。
この場合、退職に至った元々の要因は交通事故にあるわけですので、交通事故の加害者に退職してしまった賠償金として休業損害を請求することは出来ます。
ただし、そのためには会社を退職したことが交通事故で負った傷害が要因だったということを証明する必要があります。
交通事故の傷害と会社の退職の理由の因果関係が証明できれば、相手に休業損害を請求することが出来るのです。
交通事故で退職した際に雇用保険は適用されるのか
交通事故で退職したら雇用保険は受け取ることが出来るのでしょうか。
雇用保険は、退職した際に次の就職先が決まるまでの期間、失業給付を受けることが出来る仕組みです。
これによって、労働者の生活の安定を図っています。
ですので、退職の理由が交通事故であっても、雇用保険は適用されます。
ただし、以下の条件がありますので注意してください。
雇用保険が適用される条件
雇用保険が適用される条件は、1年以上雇用されていることが前提となります。
ただし、退職の理由が解雇の場合この期間は半年となります。
雇用保険の支払われる金額と期間
では、雇用保険で支払われる金額はいくらくらいでその期間はいつまでになるのでしょうか。
金額
雇用保険で受け取れる失業給付には、次のものがあります。
- ・求職者給付
- ・就職促進給付
- ・教育訓練給付
- ・雇用継続給付
このうち、求職者給付が基本手当に該当します。
基本手当は、まず退職までの6ヶ月間に支払われた賃金総額からボーナスと退職金を差し引き、それを180日で割って日額を算出します。
その日額に金額によって定められた45%から80%の割合を乗じて算出します。
これが基本手当として受け取れる金額です。
期間
失業給付を受け取れる期間は、年齢や雇用期間、退職の理由などによって異なり、90日~360日の間でそれぞれ決められます。
退職理由が解雇などの理由になれば受け取れる期間が長くなります。
休業損害の判断基準
交通事故の傷害で退職を余儀なくされた場合で、休業損害が認められるにはどのような判断基準が必要なのでしょうか。
ケガの症状
休業損害が認められるかどうかにケガの状態は重要です。
ケガが軽傷なのか重傷なのか、完治までにどれくらいの期間がかかるのか。
このあたりで休業損害の金額が変わってきます。
ケガが要因で仕事に支障をきたしている
ケガが要因で退職を余儀なくされたということは、ケガが仕事に及ぼす影響が大きいはずです。
ケガがあったことで通常の仕事ができなくなったなど、退職するためには正当な理由があるはずです。
このあたりは仕事内容にもよりますし、ケガの状態にもよります。
手を使うことがメインの仕事で手をケガし切断してしまったとしたら、それが要因で仕事にも支障をきたすでしょうし、仕事を継続することも困難かもしれません。
退職に至った理由が交通事故でケガをしたことが要因であるということがきちんと証明されることが重要になってきます。
会社に解雇にされた
自ら辞めたときと、会社に解雇されたときとでは、休業損害に与える影響も違ってきます。
休業損害を補償してもらうためには、会社に解雇された形であるほうが、請求が通りやすくなります。
ただし、会社側はあまり解雇という手段は使いたくなく、自主退社という形にしたがる傾向があります。
交通事故が要因で退職を余儀なくされたのであれば、会社都合での退職になりますので、会社都合で退職したことがわかるように休業損害証明書を書いてもらうようにしましょう。
ケガが要因で再就職が困難
再就職が困難なほどケガの症状が重いと、休業損害が認められやすくなります。
ケガが要因で仕事が出来ない状態ですので、交通事故の損害として相手に請求できます。
また、傷害が完治していたとしてもすぐに就職できない場合も同様です。
自ら退職しても休業損害が受け取れる可能性がある
交通事故が要因で退職した場合の休業損害は、一般的に会社都合で解雇になった場合によく認められる傾向があります。
ですが、自ら退職した場合でも休業損害を認められるケースがあります。
退職の理由が事故による傷害が要因だったこと、それにより仕事に支障をきたしてしまい、退職せざるを得なくなった場合などが該当します。
自ら退職した場合でも休業損害が認められるために、抑えておくポイントを紹介します。
退職理由が事故が要因だと証明する
まず、退職の理由が事故が要因だったことを証明する必要があります。
交通事故にあい傷害を負った。
その傷害が要因となり仕事に支障をきたし通常の業務をすることが困難になった。
それにより自ら退職せざるを得なくなった。
ここがきちんと証明されることで休業損害を認められることになります。
法的観点から必要に応じて客観的資料を集める
証明をするために、その証拠となる資料を集めます。
病院の診断書もそうですし、仕事に関わる資料も必要です。
経営者に証明書を書いてもらってもいいかもしれません。
法的観点からみて退職の証拠となる客観的資料を集めることで休業損害を認めてもらいやすくなります。
退職後の休業損害が払われる期間
退職後の休業損害はいつまで認められるのでしょうか。
休業損害が支払われる期間を紹介します。
完治・症状固定するまで
基本的には、治療が完治するまでか、もしくは症状が固定するまでとなります。
治療が完治してしまえば、就職することも可能になりますので、そこで休業損害は終了となります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る状態のことです。
休業損害は症状固定までとされているのが一般的です。
ただし、これらの期間の全部が休業損害と認められるわけではなく、症状や状況によって日数が決められます。
退職後の休業損害の金額
退職後の休業損害の金額はどのように計算するのでしょうか。
基本的に、休業損害は、交通事故にあう前の働いていたときの収入が基準となります。
会社員の場合と自営業者の場合では次のような形になります。
会社員の場合
会社員の場合は、勤務先から受け取っている年収が基準となります。
基本給、ボーナスや手当も対象となりますので、すべて含んで計算します。
源泉徴収票などがあれば、金額が証明可能です。
自営業者の場合
自営業者の場合は、確定申告で収入の証明をします。
ただ、自営業者の確定申告の場合、収入を低く記載していることもあります。
この場合は、その他の書類を集めて所得額が証明できれば、認められることもありますので、日々の売上管理や請求書などを集めてくる必要があります。
満額請求することは難しい
退職で休業損害を請求する場合は、満額を請求することが難しいこともあります。
すでに退職してしまっていますから、実際に退職前と同じだけ働けていたのかを証明することは困難だからです。
ただし、きちんと事故と退職との因果関係を証明できればできるほど満額に近くなっていきますので、きちんと証拠を整えるようにしましょう。
就職していなくても補償されるケースがある
必ずというわけではありませんが、ケガの状態や本人の状況によっては、就職していなくても休業補償が支払われることがあります。
平成14年に東京地裁が下した判決※がその好例です。具体的には以下のような内容です。
当時20代の男性が、ある会社から就職の正式決定を受けた後、事故にあったために、長期間の療養が必要となり、会社からの要請で退職せざるを得なくなってしまったという事案です。
この判決において、裁判所は、「求職活動をし再就職をするのに必要やむを得ない期間については、同社からの得べかりし収入をもって損害と認めるのが相当である。」として、退職後だけでなく治癒後までの休業損害を認めました。
しかし退職後の休業補償は「必ず認められる」というわけではありません。
ケガの状態や完治までの見込み日数によって事情は変わるでしょうし、退職に至るまでの経緯によっても、裁判所の判断は大きく異なってくるからです。
あくまでケースバイケースですので、もし自分の身に起きた場合には、まず弁護士に相談することをお勧めします。
※ 東京地裁判決 平成14年5月28日
さまざまな角度から捉えられる休業補償
「休業損害」「休業補償」というものは事故にあったことで被った損害の1つであり、このように被害者の状況によって多様に申し立てることができるものです。
しかし一般の人にとっては「どこまでが休業補償として認められるのか」という線引きが難しいでしょう。
そのため請求できる損害を気づかずに放置してしまったり、損害を感じながらも泣き寝入りしてしまったりというケースが、多々あるものと思われます。そんなことにならないためにも、ぜひ弁護士を活用することをおすすめします。
適正な損害額を算出したうえで、さらに交渉を有利に進めることができるはずです。
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