交通事故によってせき髄を損傷すると、下半身あるいは全身に麻痺が残ることがあります。
両方の下肢(足)の麻痺を「対麻痺」、上肢(手)と下肢すべての麻痺を「四肢麻痺」といいます。
今回はこれらの麻痺について、後遺障害等級認定の注意点や、慰謝料請求のポイントを解説します。
目次
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手足の麻痺の分類
「麻痺(まひ)」という言葉自体は一般的に耳にするものですが、どのような症状のことをいうのでしょうか?
麻痺とは、手足を動かそうと思っても随意的に(自分で思うように)動かすことができなくなったり、感覚が鈍くなったりした状態をいいます。
麻痺は、手足のどの部位に生じるかによって、以下の4つに分かれます。
- 四肢麻痺…手足4本すべての麻痺
- 片麻痺…左右どちらかの半身(右手と右足、または左手と左足)の麻痺
- 対麻痺…両足の麻痺
- 単麻痺…手または足のいずれか1本の麻痺
この中でも、今回取り上げる「せき髄損傷による麻痺」として挙げられるのが、四肢麻痺と対麻痺です。
せき髄とは、背骨の内部を通る神経の束であり、事故などでせき髄を損傷すると、損傷したせき髄の部位から下には脳からの信号が届かなくなってしまいます。
そのため、背骨の高い位置で損傷が生じれば四肢麻痺に、低い位置での損傷であれば下半身の麻痺である対麻痺になるケースがあるのです。
麻痺の程度による分類
麻痺の分類のうえでは、「手足のどの部位に麻痺が生じたか」だけでなく、「麻痺の程度」も重要です。
麻痺の程度は、「高度の麻痺」・「中等度の麻痺」・「軽度の麻痺」という3つに分かれます。
この麻痺の程度は、「運動性・支持性」と「基本動作」によって判断されます。
高度の麻痺
高度の麻痺とは、障害が残った上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、「物を持ち上げて動かす」、「立つ」、「歩く」などの基本動作ができないものをいいます。
関節が完全に固まる「完全強直」や、自分の意思で手足を動かすことが極めて難しい状態になった場合などが「高度の麻痺」です。
中等度の麻痺
中等度の麻痺とは、障害が残った上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限があるものをいいます。
両足に障害が残ったために杖や硬性装具がなければ歩行が困難な場合などが「中等度の麻痺」に該当します。
軽度の麻痺
軽度の麻痺とは、障害が残った上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われ、基本動作における巧緻性や速度が相当程度損なわれているものをいいます。
上肢において文字を書くことに困難を伴う場合や、両下肢の障害のために杖や硬性装具がなければ階段を上ることができない場合などが「軽度の麻痺」に該当します。
せき髄損傷による麻痺の後遺障害等級は?
交通事故によってせき髄を損傷し、対麻痺や四肢麻痺を発症すると、治療を続けても将来にわたって後遺症が残存することがありえます。
そのような場合には、申請手続きによって後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
後遺障害であると認定されれば、事故の加害者に対し、被害者の受けた傷害の症状が固定する前の精神的な損害についての傷害慰謝料(入通院慰謝料)に加え、症状が固定した後については後遺障害慰謝料を、それぞれ支払うよう求めることができます。
後遺障害の等級は、最も重度の1級から、最も軽度の14級までに分かれています。
後遺障害等級の認定を受けるうえでは、麻痺の部位・麻痺の程度に加え、せき髄の損傷を示す客観的な検査結果や、事故との因果関係が認められるかなどが総合的に判断されます。
では、せき髄損傷による対麻痺や四肢麻痺の症状が、後遺障害の何級に該当するのかを見ていきましょう。
第1級 | せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に 他人の介護を要するもの ・高度の四肢麻痺が認められるもの ・高度の対麻痺が認められるもの ・中等度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの ・中等度の対麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に常時他人の介護を要するもの |
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第2級 | せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時 他人の介護を要するもの ・中等度の四肢麻痺が認められるもの ・軽度の四肢麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に随時他人の介護を要するもの ・中等度の対麻痺であって、食事、入浴、用便、更衣等に随時他人の介護を要するもの |
第3級 | 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のため労務に服することができないもの ・軽度の四肢麻痺が認められるもの ・中等度の対麻痺が認められるもの |
第5級 | せき髄症状のため、極めて軽易な労務のほか服することができないもの ・軽度の対麻痺が認められるもの |
後遺障害慰謝料の金額は?
先に説明したとおり、交通事故によるケガで後遺障害が残った場合には、加害者に対して後遺障害慰謝料の支払いを求めることができます。
この後遺障害慰謝料は、後遺障害の何級に認定されるかによって金額が変わってきます。
そして、後遺障害の等級以外にも、慰謝料の金額が大きく変わる要素があります。
それが、慰謝料の金額を算出するための「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」という3つの基準です。
この基準のうち、最も慰謝料の金額が低くなるのが、被害者への最低限の補償である自賠責基準です。
それに対し、弁護士基準で慰謝料を算出すれば、慰謝料の金額が最も高くなります。
ただし、弁護士基準による慰謝料を請求するには、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
では、せき髄損傷による麻痺が後遺障害と認定された場合に、自賠責基準と弁護士基準で後遺障害慰謝料がどの程度異なるのか、金額の目安を見てみましょう。
・介護を要する後遺障害(自賠法施行令別表第一)
等級 | 自賠責基準(※) | 弁護士基準(赤い本基準) |
---|---|---|
第1級 | 1650万円 | 2800万円 |
第2級 | 1203万円 | 2370万円 |
・後遺障害(自賠法施行令別表第二)
等級 | 自賠責基準(※) | 弁護士基準(赤い本基準) |
---|---|---|
第3級 | 861万円 | 1990万円 |
第5級 | 618万円 | 1400万円 |
※自賠責基準については、令和2年4月1日以降に発生した事故に適用される金額を記載。
この金額の差から分かるように、弁護士に依頼することによって弁護士基準での慰謝料を請求できれば、事故の相手方に支払ってもらえる金額は大きく変わってきます。
また、慰謝料以外の損害賠償に関しても、弁護士のサポートを得ることによってより適切な金額を導き出すことができ、納得できる内容の示談が締結できる可能性があるといえます。
交通事故で弁護士に依頼することは、金銭面での大きなメリットとなる可能性があるのです。
せき髄損傷による麻痺の後遺障害等級認定のポイント
後遺障害等級認定においては、適切な等級を認めてもらうことを目指さなくてはなりません。
実際には重い症状があるのに、それよりも軽度の症状であると認定され、低い後遺障害等級になってしまえば、加害者から支払われる損害賠償の金額にも影響します。
適切な等級の認定を目指すうえでは、事故後なるべく早期に専門医の診察を受け、MRIなどの画像検査を受ける必要があります。
この手続きにおいては、「事故によってどのせき髄がどの箇所で損傷し、その結果として体のどの部分にどの程度の麻痺が生じたか」を医学的に立証しなければなりません。
そのためには、MRI画像による客観的な所見や、神経学的な検査の結果が重要になります。
そして、後遺障害等級の認定を受ける際に必要になるのが、医師だけが作成できる「後遺障害診断書」です。
この後遺障害診断書に、事故後の検査結果や治療の経過、残存する症状などを適切に記入してもらうことが、後遺障害等級認定申請の大きなポイントといえます。
等級の認定を受けるうえで必要な情報が不足していれば、本来認定されるべき適切な等級よりも低い等級に認定されてしまうかもしれません。
それを防ぐうえでも、弁護士に依頼することにより、後遺障害診断書に適切な内容を記入してもらうための助言を得ることが大きなメリットになるのです。
まとめ
交通事故によって手や足に麻痺の症状が残ると、事故後の日常生活に大きな影響があります。
加害者側との示談交渉が思うように進まないこともありえるでしょう。
後遺障害等級認定申請の手続きについてお困りの方や、相手方との示談交渉が不安な方は、お気軽にオーセンスの弁護士にご相談ください。
オーセンスの弁護士が、お役に立てること
せき髄・交通事故によりせき髄損傷という重大なケガを負った場合、損傷を踏まえた後遺障害等級が認定されたうえで、損害賠償を漏れなく請求していく必要があります。もっとも、せき髄損傷は複雑なケガですので、しっかりと対応をしていかないと、後遺障害等級の認定についても、損害賠償についても、適正なものにならない可能性があります。まずはお気軽に弁護士にご相談いただき、適正な後遺障害認定、損害賠償をできるようにしましょう。
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