交通事故の被害で多いのが足のケガですが、その中でもバイクや自転車の運転中、あるいは歩行中に車にはねられる事故で見られるのが、ひざの靭帯損傷です。 ひざの靭帯を損傷すると、歩行困難などにより日常生活に支障をきたす可能性があります。 また、後遺症が残った場合は、「後遺障害」と認定されるかどうかによって慰謝料の金額が大きく変わります。 そこで今回は、靭帯損傷とはどのようなケガなのか?という点から、後遺障害で何級に認定される可能性があるのか、そして適切な金額の慰謝料の支払いを受けるためのポイントまで解説します。
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靭帯の損傷とは
骨と骨の連結部である関節において、骨どうしを結び付けている組織が靭帯です。
靱帯はあらゆる関節にあり、関節を補強したり、関節の動きを一定の範囲内に制限したりする働きがあります。
靭帯にはある程度の弾力性がありますが、交通事故やスポーツなど、外部から大きな力が加わることにより伸びたり断裂したりすることがあります。
これが靭帯損傷です。
この中でも交通事故でよく見られるのが、衝突などによるひざの靭帯損傷です。
大腿骨(太もも)と腓骨(すね)をつなぐひざ関節には、周囲に4つの靭帯があります。
内側側副靭帯
内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)は、ひざの内側にある靭帯です。
ひざが横方向に動かないためのストッパーの役割をしています。
ひざの靱帯損傷の中ではこの内側側副靭帯損傷が最も多く、十字靭帯損傷や半月板損傷と合併して起こるケースもあります。
外側側副靭帯
外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)は、ひざの外側にある靭帯です。
内側側副靱帯と同様、横方向の動きを制限し、ひざの安定性を保っています。
前十字靭帯
前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)は、すねの骨である腓骨が前にでないように止める役割を持っています。
自然治癒はほとんど不可能であり、治療が不十分なままだと半月板や軟骨の損傷につながるおそれもあるため、保存的な治療ではなく手術による治療が選択されるケースが多いです。
後十字靭帯
後十字靱帯(こうじゅうじじんたい)は、腓骨が後ろにずれないように止める役割の靭帯です。
前従事靭帯と交差するような形で大腿骨と頸骨をつないでいます。
後十字靱帯を損傷するケースは多くありませんが、自然治癒すると誤解されていることがあるため、治療には注意が必要です。
靭帯損傷の治療方法
靱帯を損傷した際は、保存療法か手術療法のいずれかの治療を行うことになります。
保存療法
外科的な手術を行わない治療法が保存療法です。
受傷の程度にもよりますが、比較的自然治癒しやすい内側側副靱帯や後十字靱帯を損傷したときは、まず保存療法を行うことが多いです。
保存療法では筋力の低下をとどめるため、膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着し、痛みのない範囲で可動域訓練を行います。
手術療法
文字通り、外科的な手術による治療です。
靭帯修復術と靭帯再建術という2通りの手術がありますが、前十字靭帯損傷においては、自分の腱をひざに移植する靱帯再建術が行われることが一般的です。
ひざの靭帯損傷による後遺障害等級認定
交通事故でひざの靭帯を損傷した場合、治療を続けても、痛みや可動域制限といった後遺症が残ることがあります。
このような後遺症について、「これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る」という状態のことを「症状固定」といいます。
この症状固定後も残った後遺症は、後遺障害等級の認定申請を行うことで「後遺障害」と認められる可能性があります。
後遺障害は、症状の程度によって1級から14級までの等級に分けられており、最も重い障害が1級です。
後遺障害等級が認定されると、加害者に請求できる損害賠償の金額が大きく変わってきます。
では、ひざの靭帯損傷による後遺障害にはどのようなものがあるのでしょうか?
動揺関節
動揺関節とは、関節の安定性が損なわれ、ぐらつきが生じるような状態をいいます。
動揺関節は後遺障害等級が明確に定められているわけではありませんが、関節の機能障害として、準用により以下の等級に認定される可能性があります。
- ・常時硬性補装具を必要とするもの…準用第8級
- ・時々硬性補装具を必要とするもの…準用第10級
- ・重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの…準用第12級
可動域制限
靱帯損傷によって、膝の可動域が制限され、事故以前のように動かなくなることがあります。
可動域が制限されたかどうかは、健側(障害が生じていない側)との比較によって判断します。
ひざ関節の可動域制限は、以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
第10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
第12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
「三大関節」とは、股関節、ひざ関節、足関節(いわゆる足首)の3つを指します。
10級11号の「機能に著しい障害を残す」とは、関節の可動域が2分の1以下に制限された場合をいいます。
そして、12級7号の「機能に傷害を残す」とは、関節の可動域が4分の3以下に制限された場合をいいます。
膝に痛みがある場合
可動域制限や動揺関節でなくても、靱帯損傷による痛みが残ってしまった場合、神経症状として以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級の「頑固な神経症状を残すもの」とは、レントゲンやCT、MRIなどの検査によって、症状の原因となる損傷が確認され、事故の後遺症として神経症状が生じていると医学的に証明できるもののことをいいます。
14級の「神経症状を残すもの」とは、画像検査などによって損傷が明確に確認できなくても、事故の後遺症として神経症状が生じていると医学的に説明できるもののことをいいます。
ひざの靭帯損傷の後遺障害慰謝料
後遺障害等級の認定を受けると、加害者に「後遺障害慰謝料」を請求できるようになります。
後遺障害慰謝料とは
「慰謝料」とは、事故の被害者が受けた精神的な苦痛に対して支払われる金銭です。
その中でも、後遺障害等級が認定されなければ受け取れないのが「後遺障害慰謝料」です。
その金額は、1級~14級の等級と、3種類の算出基準によって決まります。
自賠責基準
車を運転する人なら必ず加入しなければならない「自賠責保険」で定められている基準が自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低い基準です。
任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
おおむね自賠責基準よりは高額であるものの、弁護士基準と比較すると低額となります。
弁護士基準
裁判基準とも呼ばれます。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、最も高額となる基準です。
弁護士に依頼して交渉してもらうことで、この弁護士基準によって算出した金額の慰謝料を請求することができます。
ひざの靭帯損傷による後遺障害で請求できる可能性がある後遺障害慰謝料の金額を自賠責基準と弁護士基準で比較すると、以下のようになります。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準(赤い本基準) |
---|---|---|
第8級 | 331万円 | 830万円 |
第10級 | 190万円 | 550万円 |
第12級 | 94万円 | 290万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
このように、後遺障害等級が何級に認定されるか、そして弁護士に依頼するか否かによって、後遺障害慰謝料の金額は大きく変わってくるのです。
交通事故によるひざの靭帯損傷で後遺障害の認定を受けるポイント
後遺障害等級の認定を受けるためには、残存する症状が交通事故によるものだという因果関係を証明することと、適切な方法で手続きを行うことが重要です。
事故後はすぐに病院を受診し、自覚症状を正確に伝える
事故後の初診で適切な検査を受け、靭帯損傷と診断されることがベストですが、ひざに激しい痛みがあっても、初診の時点では靭帯損傷であると診断されない場合があります。
事故から靭帯損傷の発覚までに期間が空くと、事故の因果関係に疑いを持たれてしまうかもしれません。
このようなケースにおいては、事故直後から医師に一貫した自覚症状を訴えることで、事故との因果関係が認められる可能性が高くなるといえます。
症状を他覚所見によって裏付ける
レントゲンやMRIなど、さまざまな検査によって症状を裏付ける客観的な所見を「他覚所見」といいます。
靭帯の損傷は、レントゲンや関節鏡検査によって裏付けることができます。
そして、動揺関節の確認にはストレス撮影(関節に圧力をかけ、骨のずれを再現した状態で行うレントゲン検査)が極めて重要になります。
被害者請求で申請する
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
事前認定とは、加害者側の任意保険会社に申請手続きを任せる方法です。
被害者自身が手続きをしなくて済むので、負担は軽く済みますが、申請に必要な一連の書類を準備するのは相手方の保険会社であるため、被害者にとって透明性が低い状態で手続きが進められることになります。
対する被害者請求とは、被害者自ら申請手続きを行う方法です。
多くの書類を自分で集めなければならず、非常に手間がかかりますが、そのぶん書類の内容を十分にチェックしたうえで申請することが可能です。
とはいえ、被害者請求には時間と労力を要しますし、専門的な知識も必要です。
このような場合、交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、申請においてどのような検査結果が必要かというアドバイスが得られますし、弁護士基準で算出した慰謝料の金額で交渉することもできるようになります。
交通事故による靭帯損傷で後遺症が残り、後遺障害等級の認定を目指す際は、交通事故に詳しい弁護士に一度相談してみることをおすすめします。
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