コラム
2020.10.08

交通事故による鎖骨骨折 後遺障害の症状と等級は?

交通事故で鎖骨骨折というと、あまりイメージがわかない方もいるかもしれませんが、バイクや自転車の交通事故で転倒した際などに鎖骨が折れてしまうことがあります。 鎖骨は胸骨と肩甲骨をつなぐ大切な骨であり、骨折の影響で肩関節の可動域が制限されたり、神経症状が残ったりする場合もあります。 そこで今回は、鎖骨骨折で認定される可能性がある後遺障害の種類や、適切な後遺障害等級認定を受けるために重要なポイントを解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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鎖骨骨折の後遺障害と認定される等級

交通事故で鎖骨を骨折し、後遺症が残った場合、等級認定の申請によって後遺障害と認められる可能性があります。
では、どのような後遺障害で何級に該当するのでしょうか。

変形治癒・偽関節

鎖骨の骨折は、通常であれば適切な治療によって治癒することが多いです。
しかし、骨折の状況によっては折れた骨が元通りにくっつかない場合があります。

その1つが「変形治癒(変形癒合)」です。
変形治癒とは、折れた骨がずれて癒合した結果、本来とは異なる変形した状態になってしまう障害のことです。

また、骨の治癒機能が停止し、くっつかないまま関節のようにぐらぐら動いてしまう「偽関節」と呼ばれる症状が残る場合もあります。

このような状態は、後遺障害においては「変形障害」と呼ばれます。
鎖骨の骨折による変形障害で認定される後遺障害等級は以下のとおりです。

  • ・第12級5号:鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

「著しい変形」とは、衣服を脱いで裸の状態になったとき、明らかに骨が変形していると分かる状態のことを意味します。
したがって、レントゲンやその他の画像検査で骨の変形が確認できるとしても、それが外見上判断できない程度の変形であれば、この「著しい変形」には当てはまりません。

肩関節の可動域制限

鎖骨は腕と体を肩部分でつなぐ機能を持つ骨です。
そのため、鎖骨を骨折すると肩関節の可動域が制限されてしまい、事故以前のように腕が上がらないという後遺症が残ることがあります。

肩の関節にかかわる後遺障害等級は以下のとおりです。

  • ・8級6号:一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

「上肢の三大関節」とは、肩関節、肘関節、手関節(手首)のことです。
「用を廃した」とは、以下の3つのどれかに該当したものをいいます。

  • ・関節が強直したもの
  • ・関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの
  • ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの

「強直した」とは、完全強直(全く動かない)またはそれに近い状態にあるものをいいます。
「完全弛緩性麻痺」とは、筋肉が弛緩し、自分の意思で動かすことができなくなった状態です。
「健側」とは障害がない方のことです。

  • ・10級10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの

「機能に著しい障害を残す」とは、以下のいずれかに該当したものをいいます。

  • ・関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
  • ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち,その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの以外のもの

手術で人工関節を入れることになった場合、可動域の制限がなくても10級10号に該当します。

  • ・12級6号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

「機能に障害を残す」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものをいいます。

これらのように、関節の動きに関する後遺障害は、可動域の制限の程度や、人工関節の置換手術を行ったかどうかにより等級が変わってきます。

神経症状

鎖骨の骨折が治癒しても、近くの神経が損傷する、あるいは圧迫されることにより、痛みやしびれ、感覚の麻痺といった症状が残ることがあります。
このような症状を「神経症状」といいます。

神経症状によって認定される後遺障害等級は以下のとおりです。

  • ・12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

神経症状の原因が事故による骨折だと医学的に証明できれば、12級13号に該当します。

  • ・14級9号:局部に神経症状を残すもの

医学的な証明ができなくても、痛みやしびれといった自覚症状が被害者による誇張ではないことが医学的に説明できるものであれば、14級9号に該当します。

鎖骨骨折で後遺障害が残った場合の慰謝料

鎖骨骨折_後遺障害_慰謝料

交通事故の被害に遭った場合、加害者に損害賠償を請求できますが、その中には後遺障害が認定された場合だけに請求できる慰謝料もあります。
これを後遺障害慰謝料といいます。

後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級と、3種類の算出基準によって決まります。

自賠責基準

車を運転する人なら必ず加入しなければならない強制加入保険、自賠責保険で定められているのが自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低い基準です。

任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
おおむね自賠責基準よりは高額であるものの、弁護士基準と比較すると低額となります。

弁護士基準

弁護士に依頼した場合の示談交渉や裁判において用いられる基準が弁護士基準です。
裁判基準とも呼ばれます。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、最も高額となる基準です。

*後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料額

等級 自賠責基準 弁護士基準(赤い本基準)
第8級 331万円 830万円
第10級 190万円 550万円
第12級 94万円 290万円
第14級 32万円 110万円

後遺障害等級認定を受けるための注意点

後遺障害と認定されるには、後遺障害等級認定の申請をする必要があります。
では、申請にあたって気をつけるべき点や重要なポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。

症状が鎖骨骨折に起因することを医学的に明らかにする

交通事故によって生じた症状が、「これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る」状態を「症状固定」といいます。

症状固定後に残った後遺症が後遺障害と認められるためには、その症状が交通事故を原因とするものでなければなりません。
骨折は多くの場合、骨折そのものが修復した段階で症状固定となりますが、後遺症と事故の因果関係が説明できなければ、後遺障害とは認定されないのです。

また、痛みやしびれといった神経症状であれば、事故と症状の因果関係を証明するのが難しい場合もあります。
事故直後から定期的に通院し、症状が一貫・連続していることをしっかりと医師に伝えましょう。

適切な内容の後遺障害診断書を取得する

後遺障害認定申請のために必要な書類の中でも、医師が作成した「後遺障害診断書」は非常に重要です。
適切な後遺障害等級の認定を受けるには、後遺症の原因が鎖骨骨折であることが分かるように記載してもらう必要があります。

また、医師による他覚的な所見も詳しく記載してもらいましょう。
特に変形障害が生じている場合など、外部から確認できる所見は、詳しく記載することで何級に該当するかが判断しやすくなります。
もちろん、レントゲンやMRIの検査結果も重要な資料になります。

被害者請求で申請する

後遺障害の認定申請には、「事前認定」と「被害者請求」があります。

事前認定とは、加害者の任意保険会社に後遺障害認定の請求を一任することです。
被害者請求とは、被害者本人が加害者の自賠責保険会社に後遺障害の認定申請をすることをいいます。

事前認定では、加害者側の保険会社がメインで動くため、被害者にとって透明性があるとは言い難いです。
また、もし本来よりも低い等級に認定されてしまった場合、認定に異議を申し立てるには多大な労力が必要となります。

一方、被害者請求であれば申請内容を自分で把握できるというメリットがあります。
適切な等級認定を受けるためには、被害者請求を選択したほうが良いといえます。

とはいえ、被害者請求では被害者自身が必要書類を準備しなければならず、非常に手間がかかります。
後遺障害診断書の記載内容が適切かどうかなど、専門的な知識も必要になります。

交通事故による鎖骨骨折で後遺障害の認定を目指すなら、なるべく早い段階で弁護士に相談してみることをおすすめします。

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