「交通事故によるケガで後遺障害が認定されたけど、低い等級に不満がある」 「非該当で後遺障害と認められなかったが、もう一度審査してほしい」 このような場合には、「異議申し立て」という手段があります。 後遺障害等級の認定申請で納得できない結果が出たときに、不服を申し立てる手続きが異議申し立てです。 しかし、そうは言っても具体的な手続き方法など、詳しいことはよく分からないですよね。 そこで今回は、後遺障害等級に納得できないときの選択肢から、異議申し立てするべきケースおよび困難なケース、そして異議申し立てを成功させるためのポイントまで詳しく紹介します。 ぜひご一読ください。
目次
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後遺障害の等級認定に納得できないときの3つの手段
今回は主に異議申し立てについて解説しますが、後遺障害等級の認定結果に不服がある場合の対処法は他にもあります。
まずは異議申し立てを含め、3種類の手続きを簡単にご紹介します。
異議申し立て
まず、最も一般的な手続きが「異議申し立て」です。
これは、自賠責保険の後遺障害の認定結果に対し、異議申立書と新たな医学的証拠を提出し、再審査をお願いするという方法です。
申請方法により、申立書の送付先が以下のように異なります。
- ・ 事前認定の場合は任意保険会社へ
- ・ 被害者請求の場合は自賠責保険会社へ
どちらの場合も、最終的には「損害保険料率算出機構」へと書類が送られ、改めて審査が行われます。
この異議申し立てには特に回数制限がないので、何度でも申し立てが可能です。
ただし、診断書や医師の意見書、新たな検査結果など、事故と後遺障害の関連性を示す新しい証拠がなければ、当初の判断が覆ることはほとんどありません。
また、損害賠償請求権の時効にも注意する必要があります。
紛争処理申請
異議申し立ての結果にも納得できない場合、同じ異議申し立てを再度行う以外の方法として「紛争処理申請」という手続きがあります。
これは、自賠責の調査事務所とは全く別の独立した機関である「自賠責保険・共済紛争処理機構」に対し、紛争の処理を求めるというものです。
紛争処理機構は、平成14年の自賠法改正に際して設立された、紛争を解決するために中立の立場から判断を行う第三者機関です。
異議申し立てとは違い、紛争処理申請は1回だけしかできません。
そのため、紛争処理申請の結果に不服があったとしても、紛争処理機構に対して異議を申し立てることはできません。
訴訟提起
紛争処理機構の判断にも納得できない場合、最終的な手段として裁判で争うという方法もあります。
しかし、最初の等級認定と同じ資料だけで訴訟を提起しても、適切な後遺障害等級の認定を受けるのは困難です。
裁判に訴える際は、交通事故に精通した弁護士に依頼し、必要な証拠を収集したうえで、上位の後遺障害等級に該当することを示す論理的な主張を行うことが必要になってくるでしょう。
異議申し立てをした方がいいケース
続いて、異議申し立てをした方がいいと言えるケースを2つご紹介します。
後遺障害診断書の記載内容が不十分だった
まずは、初回の認定申請時に提出した診断書の内容に不備があった場合です。
病院や医師によって、診断書の書き方はさまざまです。
記載内容が不適切だったり、被害者が医師に伝えた症状が十分に反映されていなかったりすることもありえます。
このような場合は、適切な内容が記載された後遺障害診断書を改めて取得したうえで、異議申し立てを検討するべきでしょう。
検査結果が記載されていない、もしくは必要な検査を実施していない
事故と後遺症を結び付けるうえで必要な検査が実施されていないと、当然ながら後遺障害等級の認定に必要な検査結果が得られません。
未実施だった検査を行うことで、当初の診察時よりも重度の障害が残っていると発覚し、最初の等級認定が覆る可能性もあります。
異議申し立てによる等級認定が困難なケース
逆に、異議申し立てをしても結果が変わらないと想定されるケースもあります。
治療実績が乏しい
通院および治療の実績が乏しいと、後遺障害の認定を得るのは困難でしょう。
なぜなら、十分な治療履歴が無ければ「後遺症が残るほどのケガではないのだろう」と思われてしまうためです。
医師から症状固定の時期と判断されるまでは、事故直後から継続して定期的に通院するようにしましょう。
症状が回復しつつあると診断された
症状が回復しており、治癒の見込みがあると診断されているのであれば、異議申し立てをしても結果は変わらないでしょう。
そもそも後遺障害とは、症状固定後、将来に亘ってそれ以上の回復が見込めない場合に認定されるものだからです。
示談がすでに成立してしまっている
1度示談が成立した後は、同じ事件に関しての交渉は原則的にできません。
ただし、予想できなかった後遺症が示談成立後に発生するケースや、後遺障害等級認定に時間がかかるため、先に示談交渉を進めるケースもありえます。
そういった場合には、万が一の時のことを想定し、示談書に「将来的に新たに後遺症が発生した際には別途協議とする」といった条項を入れておくことをおすすめします。
異議申し立てに必要な書類
後遺障害等級の審査は、すべて書面のみで行われます。
これは異議申し立てでも変わりません。
そのため、少しでも納得のいく結果を得るには、最初の等級認定申請で不足していた分を補う追加資料を新たに準備しなければいけません。
後遺障害が残っていることを証明するための必要書類を漏れなく収集し、提出することが求められます。
後遺障害を医学的に裏付けるための資料は、具体的には以下のようなものです。
- ・ 新しい後遺障害診断書
- ・ 医師の意見書
- ・ レントゲンやMRIの画像検査結果
- ・ カルテ
また、被害者本人が日常生活や仕事に支障がある状況を説明した「陳述書」を添付するのが有効なケースもあります。
異議申立書に記載すべき項目
異議申立書には、特定のひな形や決まった形式はありません。
低い等級の認定、あるいは非該当との判断に至った理由や根拠に対して、いかに反論するかが重要です。
一般的に記載される項目として2点重要なのが、「異議申し立ての趣旨」と「異議申し立ての理由」です。
異議申し立ての趣旨には、被害者が認定を求める後遺障害の等級を記載します。
異議申し立ての理由には、新たな客観的資料に基づき、後遺障害認定がなされるべきであるという理由を論理的に記載しましょう。
異議申し立ての審査にかかる期間
異議申し立てをした後は、その結果がいつ分かるのかが気になるところですよね。
ほとんどのケースにおいて、当初の認定審査よりも長くかかる
通常の後遺障害等級の認定は、早ければ1か月程度で結果が出ます。
また、約9割の事案で2か月以内に審査が完了すると言われており、基本的には1~2か月程度と考えてよいでしょう。
一方、異議申し立ての場合は、申し立ての内容にもよりますが1回目の審査よりも長くなる傾向にあります。
おおよそ2~4か月ほどかかると見込んでおきましょう。
添付資料集めにも時間がかかる
先にも紹介したように、申立書以外にもさまざまな資料が必要です。
医療機関で用意してもらうものは、場合によって数週間かかることもあります。
資料集めも含めて、異議申し立てには時間と労力がかかることをあらかじめ認識しておきましょう。
異議申し立てを成功させるためのポイント
異議申し立てが成功する可能性を上げるために、注意すべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
事故との因果関係を明確にする
後遺障害が残ったと主張するためには、交通事故のケガが原因であることが前提条件です。
1回目の申請で、事故と障害の因果関係の弱さによって低い等級に認定された、あるいは非該当になってしまったのであれば、新たな資料によって因果関係を補強しなければなりません。
医師とコミュニケーションを取り、しっかり連携する
異議申し立てのために必要な内容を盛り込んだ後遺障害診断書を書いてもらうためには、医師とのコミュニケーションが非常に大切です。
医師との信頼関係を築いたうえで診断書を作成してもらい、具体的な症状や必要事項が漏れなく記載されているか、入念にチェックするようにしましょう。
後遺障害に詳しい弁護士に依頼する
異議申し立てには、当初の等級認定申請の時と比較して、より正確な医学的資料を整えることが必要不可欠です。
しかし、それらを自分自身で漏れなく準備することや、内容の妥当性を判断するのは非常に難易度が高いです。
このような場合に、交通事故に精通した弁護士に依頼することにはさまざまなメリットがあります。
- ・ 必要な資料や検査内容についてのアドバイスが受けられる
- ・ 医療機関や医師とのやり取りを手伝ってくれる
- ・ 万が一訴訟に発展した時にもスムーズに移行できる
事故に遭ってケガをしたうえ、後遺障害に関する煩雑な手続きまですべて自分自身で行うのは大変です。
後遺障害等級の認定申請や異議申し立てを行う際は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
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