交通事故で膝蓋骨骨折をした場合、後遺症が残るケースがあります。 後遺障害の認定は、等級によって慰謝料の金額や逸失利益が大きく変わります。特に逸失利益は、将来に渡っての損害額を計算するものですので、ほんの少し計算方法が変われば、大きく数字が変わってくる性質のものです。 本来なら請求できたはずの金額も違う計算式で計算したため、少ない金額になってしまったというようなことも起こりえるのです。 今回は、交通事故での膝蓋骨骨折で、後遺症が残ってしまった場合の後遺障害認定と慰謝料や損害賠償請求について解説します。
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膝蓋骨(しつがいこつ)とは
「膝蓋骨(しつがいこつ)」とは、膝の関節の前部分にある骨のことです。一般的には、膝の「お皿」と言われたりする部分です。
膝蓋骨は膝の重要な関節で、膝の曲げ伸ばしの運動の中心部分になります。膝蓋骨が適切に機能することで、歩行や立ったり座ったりの動作をスムーズに行うことができます。
膝蓋骨骨折とは
膝蓋骨骨折は、膝を強く打ち付けることで発生します。一般的には、転んで膝を強く打ち付けたりすることで骨折します。
交通事故で膝を強く打ち付けた場合や、あるいは膝の上に重い物体がのってしまうなど、負荷がかかり骨折してしまいます。
膝蓋骨骨折の症状
膝蓋骨骨折は、大きく腫れたり、激しい痛みの症状があります。また、骨折によって膝が動かなくなり、日常生活が困難になります。
ギプスを巻いて固定する必要があり、車椅子での生活を余儀なくされる場合もあります。
また、症状によっては手術の必要があり、外科的治療を行うこともあります。
膝蓋骨骨折の後遺障害とは
膝蓋骨骨折は、後遺症として残ることもあります。神経症状として痛みが残るケースもありますし、機能障害として、機能そのものが回復しないケースもあります。
交通事故が原因で後遺症が残った場合、後遺障害に認定されるのですが、神経症状や機能障害のケース、また機能障害の重さなどによって等級が判断されます。
膝の痛みで認定される可能性のある後遺障害と認定基準
交通事故による膝蓋骨骨折が原因で後遺症が残った場合、後遺障害と認定される可能性がありますが、どのような症状がどのような後遺障害と認定されるのでしょうか。
症状によって認定される可能性のある後遺障害の基準を見てみましょう。
機能障害(可動域制限)
もし、膝蓋骨骨折によって可動域下がり、事故前に回復しなかった場合、可動域に制限が残ることになります。
この場合は、機能障害として後遺障害と認定されます。
後遺障害の基準としては、次のような等級が該当します。
- 8級7号「一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」
- 10級11号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」
- 12級7号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」
動揺関節
動揺関節とは、通常に機能する関節の曲がり方とはまったく異なる曲がり方をすることなどをいいます。
普通は曲がらない方向に曲がったり、通常の関節可動域を超えて曲がったりすることが該当します。
後遺症として動揺関節の症状が残った場合も後遺障害として認定されます。
この場合も機能障害と同じ等級が該当してきます。
- 8級7号「一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」
- 10級11号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」
- 12級7号「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」
変形障害
変形障害とは、骨折によって変形が生じ、運動障害が生じた場合や、骨折した骨がもとの位置に納まらずに癒合不全となった場合などが該当します。
この場合、下肢に偽関節を残すものとして、次のような後遺障害が該当します。
- 7級10号「一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」
- 8級9号「一下肢に偽関節を残すもの」
また、膝まわりの長管骨に変形が残った場合は、次の後遺障害が該当します。
- 12級8号「長管骨に変形を残すもの」
神経症状
膝蓋骨骨折の場合、機能は完全に回復したものの、痛みや痺れが残ることがあります。
痛みが後遺症として残った場合、神経症状が残ったとして後遺障害に認定されます。
神経症状の後遺障害の基準としては、次のような等級が該当します。
- 12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
- 14級9号「局部に神経症状を残すもの」
膝蓋骨骨折で後遺障害等級認定された場合の慰謝料の計算例
交通事故による膝蓋骨骨折で後遺症が残り、後遺障害に認定された場合、慰謝料はいくらくらいになるのでしょうか。
交通事故での慰謝料の金額は、ある程度定型化されています。
また、後遺障害に認定された場合も、相手側に慰謝料を請求することができるのですが、これも何級に認定されるのかで慰謝料の金額はある程度決まってきます。
しかし、慰謝料の金額を判断する基準にはいくつかあり、それぞれ金額が異なります。
まず、一番多く利用される基準としては、自賠責保険の基準があります。
自賠責保険は、車を保有する場合は必ず加入する義務がある保険となります。自賠責保険は、慰謝料の金額は最低限の金額が設定されています。
これに対し、弁護士基準では自賠責保険よりは高い金額が設定されています。
また金額に幅があるため状況に応じて金額を決めることができるようになっています。
このほか、各民間の保険会社にも慰謝料の基準があり、それぞれの保険会社によって金額は異なります。
では、自賠責保険の基準と弁護士基準の慰謝料の金額を、先ほどの等級別に見てみましょう。
等級 | 自賠責保険の 慰謝料の金額 |
弁護士基準の 慰謝料の金額 |
---|---|---|
7級 | 409万円 | 900~1100万円 |
8級 | 324万円 | 750~870万円 |
10級 | 187万円 | 480~570万円 |
12級 | 93万円 | 250~300万円 |
14級 | 32万円 | 90~120万円 |
交通事故による膝蓋骨骨折の注意点
交通事故にあって膝蓋骨骨折をした場合、どのような点に注意しなければいけないのでしょうか。
病院で治療を受ける
交通事故にあった場合は、必ず病院で治療を受けるようにしましょう。
損害賠償請求や後遺障害に対する慰謝料請求には、後遺症の原因が交通事故によるものであることを証明する必要があります。
交通事故当初は痛みを感じなくても、後日、痛みなどの症状が出てくるというケースがあります。
このような場合、交通事故後すぐに病院で診察を受けていないと、その痛みが交通事故によるものなのかの証明が難しくなります。交通事故にあった場合は、すぐに病院で診察を受けてください。
病院で適切な処置や治療を受けるとともに、精密検査などきちんと検査を受け、どのような症状が生じているのかを確認することで、そのケガや後遺症が交通事故によるものであることをより証明しやすくなります。
休業損害を請求する
もし、膝蓋骨骨折が原因で、仕事を休まなければならなくなった場合は、仕事を休んだ期間の休業損害も損害賠償項目に加えます。
交通事故での損害賠償項目には、病院代や通院代などの治療費、入院や通院したことに対する慰謝料のほか、休業損害も相手に請求できます。
もし、膝蓋骨骨折で仕事ができず、休業した場合は、会社に「休業損害証明書」を作成してもらいましょう。
後遺障害認定を受ける
交通事故による膝蓋骨骨折が原因で後遺症が残った場合は、後遺障害の認定を受けることができます。
後遺障害の認定を受けることができれば、交通事故の相手方に、後遺障害による慰謝料や逸失利益を請求することができます。
逸失利益は、本来その後遺症が残らなければ稼げていたはずの利益という意味で、たとえば、膝に後遺症が残り、うまく歩けなくなってしまって、仕事ができなくなった場合など、将来に向けてその分を補償してもらうことをいいます。
逸失利益はどのような症状が残り、どのような仕事をしているかによって変わってくるのですが、後遺障害に認定されると相手方に請求することができます。
後遺障害に認定してもらうためには医師の診断書も必要ですので、病院で診察を受け、医師の指導の下、適切に治療しておく必要があります。
交通事故の場合、症状固定前までの損害を交通事故による損害賠償として、症状固定後の損害を後遺障害による損害賠償として、区分けされています。
いつ症状固定になるのかなど、医師と相談しながら治療を受けるようにしましょう。また、後遺症が残る場合は、医師に後遺障害認定に必要となる診断書を書いてもらいましょう。
逸失利益の喪失期間がいつまでか確認する
逸失利益は、後遺症が残った場合、相手に損害賠償として請求できるものですが、後遺症の等級によって、認められる喪失期間が変わってきます。
機能障害が残った場合は、一生涯残るものとして認定されますので、逸失利益は、通常67歳になるまでの期間が計算されます。
神経症状としての痛みが残った場合は、痛みは徐々に慣れるものとして10年という期間になるケースがあります。
同じ後遺障害等級12級に該当したとしても後遺症が機能障害か神経症状かでは逸失利益の金額が大きく異なってきます。
後遺症が残りそうな場合は、その後遺症がどのような症状で、後遺障害では何級の何号に該当するのか、そして逸失利益の喪失期間はいつまでなのかを確認しましょう。
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