コラム
2021.04.20

交通事故に備えた自動車保険の「弁護士特約」、加害者でも使えるの?

交通事故で弁護士に相談する際の相談料や、正式に依頼した場合の弁護士費用が保険でまかなえる「弁護士費用特約」(以下「弁護士特約」といいます。)。
任意自動車保険のオプションとして定番化していますが、万が一事故の加害者になってしまった場合にも使えるのでしょうか?
特約が使えるケースと使えないケースを確認しておきましょう。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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弁護士特約とは?

保険には「基本補償」と「特約」があります。
基本補償とは「保険を契約すると当然に付いている補償」であり、保険会社によってその内容には違いがありますが、事故の相手にケガをさせてしまったときの治療費や慰謝料を補償する「対人賠償」や、事故の相手の車の修理費用などを補償する「対物賠償」が基本補償の代表的なものです。

一方、「特約」とは、保険契約におけるオプションのことです。
基本補償に加えて追加の保険料を支払うことにより、いたずらによって車に傷がついたときの修理費用や、自動車事故以外の日常的な事故など、基本補償には含まれない範囲についても保険金の支払いを受けることができるようになります。

そして、弁護士特約も、この特約のひとつです。
弁護士への報酬、訴訟費用や和解などの費用が保険会社から支払われます。また、保険会社によっては、法律相談費用についても支払われます。
多くの保険会社で、交通事故に関する弁護士への相談料が10万円まで、示談交渉や訴訟などの弁護士報酬が300万円までといった上限額が定められていますが、ほとんどのケースで弁護士に支払う費用としては十分な金額です。
このことから、「万が一の被害に備えて弁護士特約に入っておくべき」とよく言われており、保険会社によってはこの補償をオプション扱いとせず、保険契約に当然に付帯している場合もあります。

弁護士特約のメリット

「どのような場合に弁護士特約が使えるか」という事例でよく登場するのが、停車中に後ろから追突された場合など、被害者側に事故発生の責任が全くない、いわゆる「もらい事故」のケースです。

交通事故において、被害者と加害者の責任の割合を「過失割合」といいます。
事故当事者の双方に過失があったのであれば、契約している任意保険会社が間に入り、事故の相手方との示談交渉を代行してくれます。

しかし、「もらい事故」で被害者と加害者の過失割合が0:100であった場合、被害者側の保険会社は示談交渉を追行することができないため、加害者との示談交渉を全て自分で進めなければなりません。
このような場合に、弁護士特約に入っておけば、被害者は自分自身で示談交渉を進めなくとも、相手方との交渉を弁護士に一任できるのです。

では、交通事故で被害者となった場合ではなく、加害者となった場合でもこの弁護士特約を利用することはできるのでしょうか?

加害者は弁護士特約を使えない?

加害者は弁護士特約を使えない?

弁護士費用を保険でまかなえる弁護士特約ですが、この特約が使えないケースもあります。
具体的な条件は保険会社ごとに異なる場合がありますが、自家用車ではない事業用の車両での事故や、台風などの自然災害による損害、そして無免許運転や飲酒運転などで事故に遭ったケースなどは、弁護士特約を使うことができないと明示されていることが多いです。

これら以外で弁護士特約の対象にならないものとして挙げられるのが、「被保険者の故意または重大な過失による損害」です。
また、弁護士特約の利用条件としては、「事故の相手方に損害賠償などを請求する場合」と定められていることが一般的です。
これだけ読むと、「事故の発生に過失があり、損害賠償を請求される立場である加害者は、弁護士特約を使うことができない」と思ってしまう方もいるかもしれません。

しかし、これは「交通事故で加害者になってしまった場合は絶対に弁護士特約が使えない」ということではありません。

ポイントは過失割合

先に説明した「もらい事故」のケースのように、被害者と加害者の過失割合が0:100である場合は、確かに弁護士特約を利用できないことがあります。
しかし、事故の加害者になってしまったといっても、そのような「100%自分が悪い事故」ばかりではありません。
ケースによっては相手方である被害者にも一定の過失があり、被害者と加害者の過失割合は10:90、あるいは20:80などさまざまです。

そして、このような「被害者にも過失がある事故」においては、加害者側の損害について、加害者が被害者に損害賠償を請求できます。
仮に、被害者と加害者の過失割合が10:90だった場合、過失相殺により、被害者は「被害者が負った損害の90%の金額」を加害者に請求できます。
一方で、加害者も自身の損害の10%の金額を被害者に対して請求できるのです。
このことから、交通事故の加害者の立場であっても、相手方である被害者にも過失があった場合、「事故の相手方に損害賠償などを請求する場合」であるので、弁護士特約を利用することができます。

加害者が弁護士特約を利用する際の注意点

加害者が弁護士特約を利用する際の注意点

弁護士特約で弁護士に相談したり、代理人を依頼したりする場合は、自分で弁護士を選ぶことができます。
自身の契約している保険会社に「弁護士特約を利用したい」と伝えると、保険会社から弁護士を紹介されるケースがありますが、交通事故に関する案件の解決実績が豊富にある法律事務所を探し、信頼できる弁護士に依頼することが重要です。

ただし、弁護士特約を利用するには、実際に弁護士に相談または依頼する前に保険会社の承認を必要としている保険会社が多いことに注意してください。
弁護士に相談または依頼後に承認を求めた場合、保険会社に同意できないと言われてしまうかもしれません。

保険会社の回答に納得できないこともあるでしょう。
そのような場合には、交通事故に関する相談が無料の法律事務所で相談してみるという手段も検討しましょう。
交通事故に精通した弁護士であれば、本当に弁護士特約を利用できるのかを判断することもできるので、保険会社に対して「今回の事故で弁護士特約を利用できるはずだ」と交渉できる可能性もあるのです。

まとめ

交通事故の加害者になってしまった場合には、せっかく保険に付帯していた弁護士特約が使えないのではないか?と不安に感じるかもしれません。
しかし、事故の相手方にも過失があったのであれば、弁護士特約を使って弁護士に依頼することができます。
弁護士に示談交渉を依頼することによって、過失割合の変更を含め、相手方に支払いを求める損害賠償の金額を引き上げることができるかもしれません。
事故の加害者になってしまい、弁護士特約の利用を検討されている方は、お早めにオーセンスの弁護士にご相談ください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・交通事故の態様を聞き、被害者に過失がないかなど、加害者でも弁護士特約を利用できるケースなのか、利用できないケースなのかを判断しアドバイスすることができます。
・弁護士特約を利用できないといわれた場合に、保険会社と交渉することができます。

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