物損事故と人身事故では、何がどの様に違うのかご存知ですか?
今回の記事では、この2つの事故の違いについて詳しく解説していきます。
事故が発生した際の種類分けによってうまれるメリットやデメリット、種類の切り替え、さらには罰金についてまでご紹介していきます。
いつ自分が加害者・被害者になるとも限りません。
念の為に知識として蓄えておきましょう。
目次
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そもそも人身事故と物損事故とは
まずはそれぞれの特徴と大きな違いについて説明していきます。
交通事故における人身事故とは
事故により、
- ・ケガをしてしまった
- ・後遺障害が残ってしまった
- ・死亡してしまった
など身体に何らかの損害を負った場合のことを「人身事故」と言います。
人身事故の場合の大きな特徴としては、慰謝料や治療費などの賠償金の請求が多くできる点です。
また事故発生時には、警察によって現場の状況を調査され、「実況見分調書」という書類が作成されます。
交通事故における物損事故とは
一方で物損事故は、
- ・ケガを負った人はいない
- ・自動車本体が破損、故障した
- ・壁やガードレールなどを傷つけた
など死傷者はおらず物が壊れた場合のことを言います。
人身事故と比較して請求できる賠償金の種類が少なく、慰謝料の項目がないのが、大きく異なる点です。
万が一、犬や猫などが被害に遭っても、動物は法律上「物」扱いになるため、慰謝料請求の対象になることは滅多にありません。
また警察が作成する書類は「事故報告書」のみです。
人身と物損の大きな違い3つのポイント
① 自賠責保険の有無
人身の場合は、自賠責保険の最低限補償がありますが、物損事故は補償されません。
② 過失の証明責任について
物損・・・被害者が、加害者の過失を証明する必要がある
人身・・・加害者が、自分の無過失を証明しない限り、賠償責任を負う
③ 賠償金請求の相手方
人身事故の際は、運転手本人に請求できるのはもちろんですが、「運行供用者」と呼ばれる
車両の所有者や法人などへも請求できる場合があります。
例えば、社用車の運転中による事故や、友人の車を運転していたときに起こした事故などが当てはまります。
物損事故の加害者被害者のメリットとデメリットは?
上記の説明によると、一見して物損事故には被害者にとってのメリットがないように思われますが、実際のところはどうなのでしょうか?
被害者・加害者の両側面から見ていきましょう。
物損事故における加害者のメリットとデメリット
加害者側のメリットとしては主に以下のような事柄が挙げられます。
- ・道路交通法違反でなければ免許証の点数に影響しない
- ・故意でない限り、人身事故のような刑事罰の対象にならない
- ・加害者が負担する賠償金は、基本的に車両の修理費用だけなので、比較的安く済む
物損事故の場合、加害者にとってデメリットはなく、刑事処分および行政処分を受けることはありません。
ただし、飲酒運転や無免許運転が原因のときなど、明らかな違法行為の場合は、もちろん処罰の対象になります。
物損事故における被害者のメリットとデメリット
続いては被害者側の場合です。物損の場合には、警察による実況見分調書がなく、また、実際に身体への被害が生じた場合であっても、その被害が事故によるものだと証明できないとなると、以下のとおり、被害者にとってのメリットは1つもなく、デメリットしかありません。
- ・物損に対する賠償金しか請求できない
- ・自賠責保険の補償がなく、のちのちケガや障害が発覚しても治療費は自己負担
- ・自身で加害者の過失を証明しなければならない
このような場合、過失割合を決めなければならない場面においても、客観的な証拠材料が手に入りづらいなど被害者にとって著しく不利益となります。
以上の理由からも、事故にあった場合は人身扱いにするべきと言えます。
交通事故は人身へ切り替えるべき?
物損の扱いだと、被害者にとってはデメリットしかないことがお分かりいただけたかと思います。
それでは、物損事故から人身事故への扱いに変更することは可能なのでしょうか?
結論から言うと、切り替えられる可能性はあります。
人身事故への切り替えは早めに!
物損事故の届け出を出した後に、ケガをしていることに気が付き治療を受けた場合などは、人身事故への切り替えが可能です。
ただし、事故からあまりにも時間が空いてしまうと、その因果関係に信用性があると認められないこともあります。
よって、切り替えの申請は、なるべく早く行いましょう。
人身事故への切り替えに必要な物
切り替え申請に必要なものとして、まずは医師の診断書です。
事故によるケガであるということを客観的に示すためには不可欠な書類です。
また、警察に対し、被害にあった車両も見せる必要がありますので、修理に出していたり、運転不能であったりという場合には、写真を準備していくと良いでしょう。
その他には車検証、運転免許証なども必要となります。
予約をして、警察へ申請を
切り替え申請は事故発生現場の管轄警察署にします。
いきなり訪れても担当職員が不在であったり、長時間待たされたりすることもあります。
スムーズに手続きをしてもらうためにも事前に連絡を取り、予約をしてから赴くようにしましょう。
人身事故での加害者の罰金などについて
加害者が払わなければいけない可能性のある罰金はどれほどの額でしょうか。
人身事故でも罰金がなしになる可能性がある?
罰金がなしになる条件は、被害者のケガの治療期間が短い場合には、加害者が罰金を払わなくてよい場合があります。
「治療期間が短い=軽度」という考えになり、不起訴になることが多いためです。
たとえ起訴されたとしても、執行猶予付きの判決が出れば実際の刑罰を受けなくても済む可能性があります。
人身事故で支払う罰金の金額は?
ケガの治療期間 | 罰金 |
---|---|
3か月以上 | 懲役・禁固 または30万~50万円の罰金 |
後遺障害あり | |
30日以上3ヶ月未満 | 30万~50万円 |
15日以上30日未満 | 15万~30万円 |
15日未満 | 12万~30万円 |
上記の表は、あくまでも相場ではありますが、被害者のケガの程度にもよりますが罰金だけでも50万円近くに及ぶ場合があることが分かりますね。
罰金は分割で支払うことができる?
罰金は決められた納期限以内に、検察庁に一括払いをしなければなりません。
一括の支払いができない場合や、期限内に納付できない場合は検察庁の徴収担当者に相談しましょう。
もしかしたら納期限の延長や、分割払いを受け付けてくれるかもしれません。
払えないからといって、連絡もせずに支払わないということは絶対にしてはいけません。
罰金を支払わなかったら?
検察庁より、罰金未納に対する督促状が届きます。
この督促状を無視したり、支払いの確認が取れない場合は財産調査をされます。
その後、罰金の額に応じて資産を差し押さえられてしまいます。
差し押さえでも罰金相当額に満たなければ、「労役」と言って罰金を支払うための労働に従事することになります。
人身事故の点数と免停について
人身事故を起こした場合、罰金だけでなく免許証の点数への影響があります。
人身事故を起こしたら免停になる?
人身事故を引き起こすと、公安委員会による行政処分がなされます。
具体的には、事故内容や過失の大小に応じ、免許証に違反点数を加算します。
規定の点数に達してしまった場合は、免許停止または免許取り消しといった結果になります。
免停になる点数
「免停」とは免許の停止、つまり一時的に免許証の効力が無効になるという意味です。
停止期間を過ぎれば再度効力は復活します。
免停の期間は過去の処分回数が多ければ、低い点数でも免停になる状況に陥ります。
具体的には以下の表のとおりです。
過去3年間の 免停などの回数 |
停止期間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
30日 | 60日 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | |
なし | 6~8点 | 9~11点 | 12~14点 | – | – | – |
1回 | – | 4~5点 | 6~7点 | 8~9点 | – | – |
2回 | – | – | 2点 | 3点 | 4点 | – |
3回 | – | – | – | 2点 | 3点 | – |
4回以上 | – | – | – | – | 2点 | 3点 |
免許取り消しになる点数
「免許取り消し」は免停とは異なり、時間が経過しても免許証の効力は元に戻りません。
再び運転したいのであれば、もう1度教習所に通い直さなければなりません。
通常取消処分がされた場合は、免許証を再取得できない期間のいわゆる「欠格期間」が設けられます。
免停と比較してかなり重い行政処分だということです。
違反点数と欠格期間の関係性等は以下の表のとおりです。
一般違反行為の場合
過去3年間の 免停などの回数 |
欠格期間 ※カッコ内は免許取り消しの履歴がある場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年(3年) | 2年(4年) | 3年(5年) | 4年(5年) | 5年 | |
なし | 15~24点 | 25~34点 | 35~39点 | 40~44点 | 45点~ |
1回 | 10~19点 | 20~29点 | 30~34点 | 35~39点 | 40点~ |
2回 | 5~14点 | 15~24点 | 25~29点 | 30~34点 | 35点~ |
3回~ | 4~9点 | 10~19点 | 20~24点 | 25~29点 | 30点~ |
特定違反行為の場合
過去3年間の 免停などの回数 |
欠格期間 ※カッコ内は免許取り消しの履歴がある場合 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3年(5年) | 4年(6年) | 5年(7年) | 6年(8年) | 7年(9年) | 8年(10年) | 9年(10年) | 10年 | |
なし | 35~39点 | 40~44点 | 45~49点 | 50~54点 | 55~59点 | 60~64点 | 65~69点 | 70点~ |
1回 | – | 35~39点 | 40~44点 | 45~49点 | 50~54点 | 55~59点 | 60~64点 | 65点~ |
2回 | – | – | 35~39点 | 40~44点 | 45~49点 | 50~54点 | 55~59点 | 60点~ |
3回~ | – | – | – | 35~39点 | 40~44点 | 45~49点 | 50~54点 | 55点~ |
特定違反行為とは危険性の高い行為のことであり、以下の違反を指します。
- ・運転殺傷
- ・危険運転致死傷
- ・酒酔い運転
- ・麻薬等運転
- ・救護義務違反
人身事故で逮捕されるケース
特定違反行為のような、危険性と悪質性が高い行為の場合は逮捕される可能性が高いです。具体的には、
- ・死亡事故
- ・ひき逃げ
- ・飲酒運転
- ・信号無視
などにより危険運転過失致死と判断されるケースです。
昨今は特に厳罰な処分となっていることを念頭に置いて、安全運転を心がけましょう。
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