みなさんは、「交通事故紛争処理センター」という名前を聞いたことがありますか? 交通事故紛争処理センターとは、交通事故の被害者が、加害者(加害者側の保険会社)との示談交渉がうまくいかないなど、交通事故の示談をめぐる損害賠償などの問題で困っている時にとても役に立つ公益財団法人です。 今回は、交通事故紛争処理センターについて、ご紹介します。
目次
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交通事故紛争処理センターとは
「交通事故紛争処理センター」とは、交通事故の被害者のために、裁判をせずに中立な立場から公正かつ迅速な救済を図ることを目的として設置された公益財団法人で、「ADR(裁判外紛争解決機関)」と呼ばれる機関の一つです。
交通事故による問題を当事者同士の話し合いで解決できない場合、一般的には訴訟を経て裁判所に判断を委ねることになります。
しかし、全てのケースが当事者同士で解決するわけでなく、だからと言ってその全てで裁判を起こすことも現実的ではありません。
そういった場合の救済策としてADRが存在し、紛争処理センターはADR機関の1つとして位置づけられています。
交通事故紛争処理センターの所在地一覧
交通事故紛争処理センターは、全国11か所(本部および支部が8か所、相談室3ヶ所)に拠点があります。
- ・東京本部
- ・札幌支部
- ・仙台支部
- ・名古屋支部
- ・大阪支部
- ・広島支部
- ・高松支部
- ・福岡支部
- ・さいたま相談室
- ・金沢相談室
- ・静岡相談室
交通事故紛争処理センターの業務内容
法律相談
示談交渉や、賠償などの法律的な知識がなくても、相談担当弁護士が中立で公正な立場から対応してくれます。
具体的には、該当資料の確認や問題となる事柄等の整理、状況に合わせたアドバイスなどを行います。
相談担当弁護士は、所在地ごとに選任され、原則として事案が終了するまで、担当は変わりませんので、安心して相談できるでしょう。
ただし、交通事故紛争処理センターは、示談を見据えた解決を前提として運営されているため、事故直後や治療中など、示談交渉が始まっていない段階では相談をすることができません。
和解あっ旋
相談担当弁護士が相手方との間に入り、和解のあっ旋をしてくれます。
交通事故問題における和解とは、当事者同士が話し合いによりお互いに譲り合うことで妥当な賠償額を決め、解決を図ることを意味します。
当事者の双方が合意しなければ和解には至らないため、何度も話し合っても和解できないケースも存在します。
和解できなかった場合は、次に説明する審査手続きに移行することになります。
審査手続
和解あっ旋を行っても、あっ旋不調となる場合もあります。その場合、相談担当弁護士から「あっせん不調」の通知がされますので、当事者は審査の申立を行うことができます(あっ旋不当の通知を受けた日から、14日以内に限る)。
審査の申立が行われると、交通事故紛争処理センターは、「審査会」を開催します。
審査会は、法律を専門とする学者や裁判官経験者などから選任される3名の審査員で構成され、審査・裁定を行います。
交通事故紛争処理センターの申し込みから手続終了までの流れ
交通事故紛争処理センターを利用する際の、法律相談、和解あっ旋および審査の流れを紹介します。
※法律相談、和解あっ旋および審査の細部については、交通事故紛争処理センター本部、支部、相談室によって異なることがあります。
1.電話予約
まず、交通事故の被害者(申立人)による、事前の電話予約が必要です。
申立人の住所地または事故発生地ごとに担当するセンターが決められていますので、必ず所在地を確認してください。
また、予約する際に、いくつか質問がありますので、答えられるように準備しておきましょう。
- <質問項目>
- ・ケガの治療は終わっているか
- ・等級認定手続きの有無(後遺障害がある場合)
- ・相手方の保険加入状況
もし、治療が終わっていない場合や後遺障害の等級認定が途中の場合は、それらが完了後に再度予約することになります。
2.法律相談・和解あっ旋
初回相談は、予約日時に交通事故紛争処理センターに出向き、相談担当弁護士との面談による相談をします。2回目は、相手方にも出席が求められます。
物損事故のみの場合もしくは申立が代理人弁護士や簡易裁判所代理権のある認定司法書士などの場合は、原則として初回相談から相手方も出席し、和解あっ旋に入ります。この場合、申立人から相手方に初回期日の連絡および出席の依頼をする必要があります(本部、支部、相談室によって異なることがあります)。
相談担当弁護士による和解案は、書面または口頭により、申立人と相手方の双方に提示されます。
和解が成立すると、弁護士の立ち会いのもと、示談書および免責証書を作成して終わりです。しかし、あっ旋不調(和解に至らなかった)場合は、審査請求に移行します。
3.審査会による審査
審査では、審査員より当事者双方が説明を求められ、自分の主張をします。
そして審査会による最終解決案、いわゆる「裁定」が提示されます。
裁定が提示されてから14日以内に同意する旨の意思表示をしなければ、自動的に不同意と見なされ、その後は裁判等に移行せざるを得ません。
4.利用手続きの終了
以下の場合、センターとの関係は終了となります。
- ・和解あっ旋が終了した時
- ・審査が不適だとの決定された時
- ・審査の申立が取下げられた時
- ・申立人が審査会の裁定に対し、不同意の回答をした時
- ・審査会の裁定に基づいた示談が成立した時
- ・当事者がセンターの利用規定に従わない時など、担当弁護士や審査会が終了するのを適当であると認めた時
交通事故紛争処理センターでかかる期間
相談担当弁護士との相談は、1回あたり1時間ほどで終わることが多いようです。
また、和解までの相談回数は以下のとおりです。
- ・人身事故・・・70%以上が3回で和解、90%以上が5回で和解
- ・物損事故・・・ほとんどのケースが2回以内に和解
最終的な解決までの期間は、3か月から半年ほどかかると言われています。
交通事故紛争処理センターを利用するメリット
センターを利用するメリットを3つご紹介します。
無料で利用できる
基本的に交通事故紛争処理センターの利用は相談からあっ旋まで全て無料です。
示談交渉が進めやすくなる
交通事故紛争処理センターは、交通事故の被害者の中立・公正かつ迅速な救済をはかるための機関であるため、示談をめぐる損害賠償などの問題の早期解決が期待できます。
また、審査会の裁定に申立人である被害者側が同意した場合、相手方となる保険会社等は不服申し立てすることができないため、被害者側が和解するかどうかの主導権を持っています。
信頼性
交通事故紛争処理センターは、法律の専門家である弁護士が相談を受けます。また、中立・公正な機関であるため信頼性が高いのもメリットの一つでしょう。
紛争処理センターを利用するデメリット
少なからず、デメリットも存在するためご紹介します。
和解できるとは限らない
交通事故紛争処理センターが行うのは、あくまでも「和解あっ旋」であるため、交通事故の被害者(申立人)と相手方(加害者側)の保険会社の双方が合意しなければ和解解決とはなりません。
特に相手方が保険会社ではなく、加害者本人の場合には合意が難しくなる傾向があります。
交通事故紛争処理センターまで出向く必要がある
全国11か所に拠点があるとはいえ、全都道府県にあるわけではないので、地方に住んでいる場合はセンターまで遠いという物理的なデメリットがあります。
交通費と時間がかかることは避けられないでしょう。
相談担当弁護士を変更することはできない
相談担当弁護士は、和解あっ旋の途中で変更することはできません。もしも相性が悪くても、事案が終了するまで変更することはできないためデメリットにもなりえます。
交通事故紛争処理センターに依頼できない事例
以下のようなケースはセンターに依頼することができないため注意が必要です。
- ・自転車と歩行者による交通事故
- ・自転車同士の交通事故
- ・被害者が加入している自身の保険会社との紛争
- ・すでに訴訟が始まっている場合
- ・センター以外の機関による手続きが進行中の場合
- ・被害者が治療中、または後遺障害認定の手続き中、異議申し立て中の場合
また加害者側が同意した場合は、以下のケースでもセンター利用の対象となることがあります。
- ・加害者が任意保険を契約していなかった時
- ・加害者の任意保険に直接請求権の規定がない時
- ・加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)、全労済、交協連、全自共および日火連以外の時
交通事故紛争処理センターを利用する際の注意点
続いては、実際に交通事故紛争処理センターの利用を検討する際の注意点を4つご紹介します。
損害賠償額が裁判より少なくなる可能性がある
交通事故紛争処理センターでの話し合いでは、裁判のような詳細なレベルでの証拠提出や答弁を行うわけではありません。そのため、実際の裁判判決よりも賠償額が少なくなる可能性があります。
申立人、相手方または、代理人弁護士の出席が原則
原則として、当事者は出席しなければなりません。
やむを得ない事情で出席できない場合は、代理人を用意する必要があります。
話し合いは平日に行われるため、仕事を休まざるを得ない可能性があることを覚えておきましょう。
あくまでも中立公正な第三者の立場での和解あっ旋
交通事故紛争処理センターは、あくまでも中立な立場から公正に問題を解決する案を提示します。
そのため、過失割合で揉めているなど、自分にとって都合の良い助言や交渉をしたい場合などは、自身で弁護士に委任することも検討しましょう。
争いがある案件はなじまない
交通事故紛争処理センターでの手続は、裁判手続きで行われるような厳密な証拠調べを行わないため、そもそも事実関係に争いがあったり、過失割合の主張が真っ向から対立していたりする案件はなじみません。
このような場合は、裁判手続を利用することを検討しましょう。
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