コラム
2019.12.20

交通事故の過失割合 – 過失割合の決め方と注意点を解説します

交通事故が発生した時によく問題になるのが「過失割合」です。過失割合は、誰がどのように決めるのか?決まった過失割合に納得がいかない時はどうすればいいのか?など、過失割合について詳しく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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交通事故の過失割合とは

交通事故_過失割合とは

交通事故は、加害者と被害者の双方に過失があるケースが多く、加害者側に全ての責任が及ぶことはごく稀です。

誰がどのように過失割合を決めている?

「過失割合」は、誰がどのように決められるのでしょうか。
過失割合は民事上の事柄であるため、当事者同士の話し合いで決めることになります。
双方の加入している保険会社が、過去に起こった事故の裁判例などを参考にして決めるのが一般的です。

よく勘違いをされる方がいるのですが、過失割合を決めているのは警察ではありません。
警察には、民事不介入(みんじふかいにゅう)と呼ばれる原則があるため、事故後に警察が駆け付けた際には、あくまでも現場を検証し、事故が発生したという事実を記録するのみです。

万が一、当事者同士で決まらない場合は、訴訟を経て裁判所の判断に委ねることになります。

過失相殺(かしつそうさい)とは

「過失相殺」とは、損害賠償の公平性の観点から、加害者の賠償額を計算する際に、被害者の過失割合分の金額を加害者の賠償額から減らすことをいいます。

物損事故と人身事故で過失割合は変わる?

保険会社によって、物損部分と人身部分とで担当者が異なる場合もあるため一概には言えませんが、基本的に、物損事故と人身事故の違いで、過失割合が変わることはありません。

交通事故の過失割合の計算方法

交通事故_過失割合_計算方法

過去の裁判例を基準にする

交通事故の過失割合は、過去の裁判例によって作成された基準表が使用されます。この基準表は、過去の裁判例をもとに事故の種類や発生当時の行動等により細かく分類された事故類型を定めています。

以下の表が事故類型の主な例です。

歩行者と車 ・歩行者と前方(後方)から来た車との衝突
・道路横断中の歩行者と車の衝突
車と車 ・正面衝突
・信号待ちで停車中の車に追突
自転車と車 ・車が右折(左折)しようとした時に自転車を巻き込んだ
・交差点での出合い頭で衝突
単独事故 ・カーブを曲がりきれずに、ガードレールや標識に衝突

修正要素も判断基準に

事故類型に基づいて区分けしたものが基本に考えられますが、それだけでは全ての事故が一律の割合になってしまい不都合が生じます。
そのため、細かい原因を考慮し調整するために「修正要素」があります。

修正要素例(歩行者と車による事故の場合)

種類 修正要素 内容
加算 夜間 日没時から日出時までの時間
幹線道路 車幅が14m以上の車の交通量が多い国道や県道で起きた事故の場合
減算 幼児・児童・老人 6歳未満の幼児、6歳以上13歳未満の児童、おおむね65歳以上の老人
集団横断 歩行者が、集団で道路を横断・通行すること

修正要素例(車と車による事故の場合)

種類 修正要素 内容
加算 重過失 居眠り運転、飲酒運転、無免許運転
大型車 車輌総重量11トン以上、最大積載量6.5トン以上で、乗車定員30人以上の自動車
道交法50条違反 進入が禁止される状況で交差点へ進行した場合
大回り右折 道路中央によることなく右折した場合

自動車と自動車の交通事故 – 具体的なケースと過失割合

交通事故_過失割合_具体例

これからご紹介するケースは過去の裁判例や事例を参考にしています。実際に過失割合が決まる際は、様々な事情や要因が影響するため、参考までにご覧ください。

過失割合 A:B=7:3

(例)自動車Aが高速道路に進入しようとした際に、もともと本線を走っていた自動車Bと衝突した。
基本的に、車線変更をした側の過失が大きくなります。

過失割合 A:B=8:2

(例)信号のない交差点で右折しようとした自動車Aと、直進しようとした自動車Bが衝突した。
右折しようとした側の過失が大きくなります。しかし、信号が設置されている交差点の場合、信号の色の状況次第で、割合は大きく異なります。

過失割合 A:B=9:1

(例)T字路の交差点で右折して優先道路に進入しようとした自動車Aと、直進していた自動車Bが衝突。
優先道路の場合、Bのようにもともと走っている車に徐行義務は無いため、Aの落ち度が高いと判断されます。

自動車と歩行者の交通事故 – 具体的なケースと過失割合

過失割合 A:B=10:0

(例)信号のない横断歩道がある道路を走行していた自動車Aと、横断していた歩行者Bが衝突した。
一般的に、横断歩道上の事故の場合は歩行者に過失があることは稀ですが、車が歩行者を発見しづらい状況であった場合は、歩行者にも過失が発生する場合もあります。

自転車と自動車の交通事故 – 具体的なケースと過失割合

過失割合 A:B=8:2

自転車Aが赤信号を無視して交差点を直進しようとした際に、自動車Bと衝突した。
自転車は軽車両として、あくまでも車両扱いされます。もっとも、自動車と自転車との事故の場合は、一般的に自動車の方が責任が重いとされる可能性が高いです。

駐車場内での交通事故 – 具体的なケースと過失割合

駐車場内で事故が起きた場合も、道路上の事故同様に過失割合の考えが適用されるため注意しましょう。
過去の判例でも、駐車場内の様々な状況により判断をしています。

交通事故の過失割合から損害賠償額を計算してみよう

交通事故_過失割合_支払い

過失割合 加害者A:被害者B=9:1

加害者A 被害者B
過失割合 9 1
請求割合 1 9
損害額 200万円 200万円
請求できる損害賠償額 200万円×0.1=20万円 200万円×0.9=180万円
支払われる賠償額(相殺結果) 0円 160万円

<結果>
この例では、被害者Bにも過失があるため、過失相殺(加害者に対す請求額が減額)され、被害者Bが、加害者Aに損害賠償金として支払いを請求できるのは160万円となります。

過失割合が7:3のケース

加害者A 被害者B
過失割合 7 3
請求割合 3 7
損害額 200万円 200万円
請求できる損害賠償額 200万円×0.3=60万円 200万円×0.7=140万円
支払われる賠償額(相殺結果) 0円 80万円

<結果>
この例では、被害者Bにも過失があるため、過失相殺(加害者に対す請求額が減額)され、被害者Bが、加害者Aに損害賠償金として支払いを請求できるのは80万円となります。

過失割合が0だと加害者との交渉は自己負担

交通事故_過失割合_交渉_自己負担

保険会社は交渉を引き受けてくれない!?

被害者の過失が0の場合、被害者側の保険会社は相手方に支払うべき賠償金がないため、交渉を引き受けてくれません。保険会社は交渉の結果に左右されることがないためです。

加害者との交渉は精神的負担も大きい

仮に、被害者が自身で交渉しようとしても、専門的な知識がない限り、加害者側の保険会社の言うことをそのまま受け入れることになってしまう可能性が高いでしょう。
示談交渉における精神的負担(ストレス)も想像以上に大きいものです。

過失割合は揉めやすい

加害者側の保険会社は、過去の裁判例に基づいて算出した過失割合を主張します。しかし、保険会社が参考にした裁判例が必ずしも適正とは限りません。
被害者、加害者それぞれの主張が合わず、過失割合を決めるところから交渉がまとまらないことも少なくありません。

過失割合に納得がいかないときはどうすればいい?

交通事故_過失割合_納得いかない

加害者側の保険会社が提示してきた過失割合に納得がいかないときはどうすればいいのでしょうか?
ポイントを3つお教えします。

判断材料となった裁判例は適切かどうか

交通事故の裁判例は数多くあるため、必ずしも保険会社が参考にした裁判例が正しいとは限りません。
加害者側の保険会社から提示された過失割合の判断材料となった裁判例(過去の裁判例)が、本当に自分のケースに適切なのかどうか確認する必要があります。その際は「事故類型」だけでなく、「修正要素」も考慮されているのか確認をしましょう。

修正要素は見落としがち

修正要素は見落としがちなポイントです。また、保険会社が事故に不都合な要素をあえて考慮していない可能性もないとは限りません。
事故類型や修正要素について「正しいかどうか」も、もちろん重要ではありますが、考慮すべき点が漏れていないかなども確認するようにしましょう。

弁護士への依頼

事故後の保険会社との交渉は自分ひとりでやれないこともありませんが、実際やりとりは非常に複雑で、トラブルも多いです。

そんな時には、交通事故に詳しい弁護士に委任し、代理人となってもらうことをおすすめします。示談交渉から解放され、さらには損害賠償額の増額も見込める場合もあるでしょう。

交通事故_過失割合_オーセンス

交通事故被害のご相談はAuthense法律事務所

交通事故被害による後遺障害等級認定、示談交渉・裁判、損害賠償請求(慰謝料請求)などのご相談をお受けしています。
ご相談者の痛みやお気持ちをお相手にしっかりとお伝えできるよう、法的観点から冷静に分析し、最良の解決に導くための弁護方針をご提案いたします。お気軽にご相談ください。

損害賠償金額の無料診断サービス

保険会社から提示された損害賠償金額が適正かどうか※1を無料で診断します。
※1 弁護士基準(裁判基準)での算定損害賠償

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法律相談は基本的に何度でも無料(お電話相談も承ります※2

交通事故被害に関するご相談は基本的に何度でも無料(お電話相談も承ります)。着手金0円。
※2 遠方の方、おケガをされている方を優先させていただきます。

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