症状から見る後遺障害
日常生活から感じる変化 高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、事故などが原因で、脳が損傷を受けたために、言語や思考、記憶、学習や行動などの知的な機能に障害が起こった症状をいいます。
感情の起伏が激しくなったりして行動の抑制がきかなくなったり、新しいことが覚えられなかったり、周囲の状況を読めず適切な行動が取れないなどの状態になったりします。
高次脳機能障害は、外見から症状が見えないため、本人もまわりも気づかないことがあります。
そのため、本来なら後遺症として後遺障害に認定されるべきなのですが、認定を受けることができなかったという事態になることもあります。
もし、高次脳機能障害が疑われる場合は、適切に診察を受けるようにし、適切に後遺障害の認定を受けられるよう準備しておきましょう。
外傷は治ったのに、痛みが引かない RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)
RSDとは、神経因性疼痛(神経系の障害等)の代表的なものです。
この病気は他覚的所見に乏しいため、周囲に理解されにくく、また、医師にも誤診されやすいという問題点があります。しかし、RSDは認定されれば第7級、第9級、第12級の後遺障害等級に該当する可能性があります。
外傷が治っても痛みが引かない、ますます痛みが強くなるといった症状のある方は、専門の医師・弁護士に相談してみてください。
麻痺が残ってしまった 脊髄損傷
交通事故によるケガの中でも、脊髄(せきずい)の損傷は重篤な後遺症を残す可能性があり、身体への影響はもちろん、治療費などの支出について不安を抱く方も少なくありません。
しかし、申請により後遺障害等級の認定を受けることができれば、事故の相手方に後遺障害慰謝料を請求できる可能性もあります。
慰謝料を含む適正な損害賠償を受け、経済的な負担を軽くするためには、脊髄損傷における後遺障害の等級や認定基準、慰謝料金額の目安について知っておくことが重要です。
意識不明で寝たきりになってしまった 遷延性意識障害(植物状態)
遷延性意識障害の原因には、頭部に強い衝撃を受けて生じる、脳挫傷などの脳の損傷が原因となっています。
脳に強い衝撃をうけ、意識を失い、昏睡状態に陥ったあと、呼吸活動などの生命活動はあるものの、外部との意思疎通がまったく通じていない状態です。
交通事故などの衝撃で強く脳を損傷し意識を失った場合などにも発症します。
遷延性意識障害(植物状態)の定義
日本脳神経外科学会による定義は以下のようになっています。
・自力移動が不可能である。
・自力摂食が不可能である。
・糞・尿失禁がある。
・声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
・簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
・眼球は動いていても認識することは出来ない。
以上6項目が、治療したにもかかわらず3ヶ月以上続いた場合を植物状態とみなされます。
遷延性意識障害は、長期にわたる介護や自宅の改造など金銭的な負担が特に大きい後遺障害といえます。
また、被害者のご家族による対応が必要になることが多いのも特徴です。
部位から見る後遺障害
部位別の後遺障害等級についてまとめました。中でも頭部を強く打った方は、目に見え難い後遺症を負っている可能性もあるため、注意が必要です。
頭部・脳の後遺障害
頭部・脳で考えられる後遺障害は5つです。それぞれの部位や障害状況によって必要な検査は異なり、後遺障害の等級も細かく分かれています。
・ 高次脳機能障害
・ 麻痺や感覚障害
・ 遷延性意識障害
・ 運動障害
・ てんかん
目の後遺障害
・ 視力障害
・ 調整障害
・ 運動障害
・ 視野障害
・ まぶたの障害
耳の後遺障害
・ 欠損障害
・ 聴力障害
・ 平衡機能障害
・ 耳漏(じろう)
・ 耳鳴り
鼻の後遺障害
鼻の後遺障害は、「外鼻の軟骨部の全部又は大部分の欠損する欠損障害」と「においを全く感じなくなる嗅覚脱失」、「においを感じづらくなる嗅覚減退」、「鼻での呼吸が難しくなる鼻呼吸困難」の4つに分けられます。
・ 欠損障害
・ 鼻呼吸困難
・ 嗅覚脱失
・ 嗅覚減退
口(咀嚼・言語・歯牙)の後遺障害
口の障害は、咀嚼(そしゃく)機能障害、言語機能障害、歯牙(しが)障害などがあります。
・ 咀嚼(そしゃく)機能障害
・ 言語機能障害
・ 歯牙(しが)障害
・ 嚥下(えんげ)機能障害
・ 味覚機能障害
首(頸)腰の後遺障害
・頸椎捻挫(むちうち)
・腰椎捻挫
脊柱・その他の体幹骨の後遺障害
脊柱の後遺障害は、「変形障害」と「運動障害」、その他の体幹骨変形があります。手足のしびれや機能障害、重症の場合は四肢麻痺などの神経系統の機能または精神の障害がでます。
・ 変形障害
・ 運動障害
・ その他の体幹骨変形
上肢・手指の後遺障害
・上肢
上肢(両腕の肩関節から指先まで)の障害は、「欠損又は機能障害」、「変形障害」、「醜状(しゅうじょう)障害」の大きく3つに分けられます。
上肢や手指における後遺障害は認定が複雑に分かれており、機能障害の場合は、伸ばしたり曲げたりなどを障害がない側(健側・けんそく)と障害がある不自由な側(患側・かんそく)で比較して判断します。
・ 欠損または機能障害
・ 変形障害
・ 醜状(しゅうじょう)障害
・手指
手指の障害は、欠損障害と機能障害の2つです。上肢や手指における後遺障害は認定が複雑に分かれており、機能障害の場合は伸展や屈曲などを健側と患側で比較して判断します。
・ 欠損障害
・ 機能障害
下肢・足指の後遺障害
・下肢
下肢の後遺障害は大きく5種類に分類できます。それぞれの部位や障害状況によって必要な検査は異なり、後遺障害の等級も細かく分かれています。
・ 欠損障害
・ 機能障害
・ 変形障害
・ 短縮障害
・ 醜状障害
・足指
足指の後遺障害は大きく2種類に分類できます。それぞれの部位や障害状況によって必要な検査は異なり、後遺障害の等級も細かく分かれています。
・ 欠損障害
・ 機能障害
胸腹部臓器の後遺障害
胸腹部臓器とは人体の胸部、そして腹部内にある臓器のことを指します。胸部の臓器は心臓と心臓を包む心嚢(しんのう)、肺臓と胸膜、気管、胸部と腹部を分ける横隔膜です。腹部の臓器には、肝臓、腎臓、脾臓、大腸、小腸、胆嚢(たんのう)、胃、膀胱などがあります。
胸腹部臓器の後遺障害は、下記の5部位に関する後遺症に大別されます。
それぞれの部位や障害状況によって必要な検査は異なり、後遺障害の等級も細かく分かれています。
・ 呼吸器
・ 循環器
・ 腹部臓器
・ 泌尿器
・ 生殖器
外貌醜状の後遺障害
外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のように日常露出する部分のことです。
上肢および下肢の醜状は外貌醜状に含まれません。
そして「醜状」とは、人目につく程度以上の瘢痕(ひきつれ)や線状痕といった傷あとのことをいいます。
すなわち、「頭、首、顔など、手足以外で日常露出する部分に残った人目に付く程度以上の傷あと」が「外貌醜状」です。