コラム
公開 2023.03.31 更新 2023.04.04

M&Aにおける弁護士の主な役割は?弁護士がわかりやすく解説

企業法務_アイキャッチ_2829

M&Aには、税理士や公認会計士などさまざまな専門家が携わります。
また、弁護士もM&Aにおいて、非常に重要な役割を担うことが少なくありません。

では、M&Aの場面で、弁護士は具体的にどのようなサポートを行うのでしょうか?
今回は、M&Aにおける弁護士の重要性や弁護士が行うサポート内容などについて概要を解説します。

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称であり、企業の合併と買収を意味します。
M&Aにはさまざまな形態がありますが、主なものは次のとおりです。

買収(株式取得や事業譲渡、会社分割など)

買収とは、ある会社が他社自体や、他社の事業を売買する形態でのM&Aです。手法としては様々であり、他社の株式を取得して子会社化したり、事業の全部または一部を分割や譲渡することが挙げられます。そうすることで、承継した事業をさらに拡大させたり、企業価値を高めるために行われます。

合併(吸収合併、新設合併)

合併とは、2社以上の会社を1つの会社に統合する形態でのM&Aです。
合併には、ある会社が他の会社の権利義務一切を承継して存続し、一方の会社は消滅する形で行う「吸収合併」と、すべての会社が消滅し、新たな会社を設立して消滅した会社の権利義務一切を承継する「新設合併」が存在します。

提携

提携とは、複数社が協力して共通した目的の達成を目指すために行われるものです。
お互いに独立した会社でありながら資金面で協力体制を築く「資本提携」と、独立した会社同士がお互いに保有する経営資源を用い協力しながら当該事業に取り組む「業務提携」とが存在します。

M&Aを広く捉えた場合には、これらもM&Aの一つの形態として挙げられます。

M&Aで弁護士が果たす主な役割

M&Aで弁護士が担う主な役割は、次のとおりです。
なお、具体的にどのようなサポートをどの範囲で行うのかは依頼先の弁護士や弁護士との契約内容などによって異なりますので、今後の進め方を含めて依頼先の弁護士によく確認しておきましょう。

M&A全体のプランニング

弁護士が、M&Aのプランニング全体に携わる場合もあります。
この場合には、全体の進行設計から相手先企業の選定、クロージングに至るまで、弁護士がトータルで指揮をとりつつM&Aを進行させます。

M&A交渉の代理

M&A交渉の代理を、弁護士に依頼することは可能です。
法律事務にかかわる交渉代理や仲裁は弁護士の独占業務であり、弁護士以外の者が報酬を受けて行うことはできません(弁護士法72条)。

相手先企業との交渉のほか、債権者など外部のステークホルダーとの交渉を代理する場合もあります。

法務手続きの支援や代行

M&Aにあたっては、非常に多くの法務手続きが発生します。また、企業規模によっては独占禁止法をはじめとした官公庁への対応が必要な場合があります。
弁護士へ依頼することで、必要な法務手続きを適切なタイミングで、漏れなく行うことが可能となります。

法務デューデリジェンス

デューデリジェンスは、M&Aの候補先となっている会社をさまざまな視点から調査・分析することで、候補先が保有するリスクを把握することや買収後の準備をすることを目的として行われます。

「会社を買う」ということは、その会社が保有するさまざまなリスクや権利義務を、一手に引き受けるということです。
また、モノを買うのとは異なり、外部から問題点をうかがい知ることは困難でしょう。

そのため、M&Aにあたっては最終契約の締結前に相手先企業を徹底的に調べ上げ、買収に値するかどうかや、買収対価はどの程度が相当であるのかといったことを調査することが一般的です。

デューデリジェンスにはさまざまな種類が存在し、次のものなどが挙げられます。

  • 財務デューデリジェンス:決算書や証憑類などから、簿外資産の有無や現在の正しい財務状況などを分析します。また、過去の財務申告書から税務リスクを分析します。
  • 事業デューデリジェンス:事業計画などの精査を踏まえ当該事業の強みや将来性、リスクなどを分析します。
  • 法務デューデリジェンス:契約書や過去の訴訟、株主の状況などを調べ、法務リスクを分析します。
  • 人事デューデリジェンス:就業規則や雇用契約書などを調べ、人事面でのリスクや人事機能を分析します。

このうち、法務デューデリジェンスは弁護士が担うことが一般的です。
M&Aにおいては法務デューデリジェンスが行われることがほとんどです。仮に多額の損害賠償請求を受けるリスクが潜んでいることがわかれば、M&A自体を見送ることも一つの選択肢となるため、M&Aにおいては法務デューデリジェンスは重要な位置づけを占めます。

契約書の作成やレビュー

M&Aにおいては、基本合意書(MOU)や秘密保持契約(NDA)、合併契約など、多数の契約が発生します。
また、その契約は非常に重要なものであり、仮に不備があったり自社に不利な内容となっていたりすれば、取り返しのつかない事態ともなりかねません。

そのため、M&Aにまつわる契約書の作成や契約書レビューは、弁護士へ依頼することが一般的でしょう。

M&Aに関わる弁護士以外の主な専門家

M&Aには、さまざまな専門家が関与します。
弁護士以外にM&Aにかかわる主な専門家は、次のとおりです。

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aの相手先企業を探す役割を担うM&Aの専門家です。
相手先企業を探すのみならず、M&Aにおいて企業とともに伴走するアドバイザリー業務までを提供することが多いでしょう。

公認会計士・税理士

M&Aにおいては、専門の公認会計士や税理士が関与することが多いでしょう。
公認会計士や税理士はM&Aにともなう会計面や税務面からのアドバイスを行うほか、財務デューデリジェンスなどを行います。

また、税理士自身が相談からM&A成約までサポートするM&Aアドバイザリー業務を担う場合もあります。

金融機関

M&Aにおいては、金融機関が関与するケースが少なくありません。
なぜなら、多くのM&Aにおいて、対価の支払いにあたって融資を受ける必要が生じるためです。
融資の実行をスムーズにするため、初期の段階から金融機関へ相談をしながら交渉を進めることも多いでしょう。

M&Aの基本の流れ

M&Aは、一般的にどのような流れで進行するのでしょうか?
基本的な流れは次のとおりです。

M&Aの方向性や基本方針を定める

まずは、対象を選定したうえで、M&Aの方向性や自社としての基本方針を定めましょう。
たとえば、対象企業に最低限望む条件や企業価値の算定についてなどです。

自社としての条件を明確にしないまま対象の選定を行ってしまうと、対象企業との交渉ポイントを探ることが困難となりかねないためです。

そして、具体的な条件交渉に入る前に、弁護士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

なぜなら、専門家のサポートを受けることなく契約の締結まで進んでしまうと、自社にとって手続き上の不備や潜在的なリスクを見落とす可能性があるためです。

そのため、M&Aを検討している段階で、M&Aに関して知見のある弁護士などの専門家へまずご相談ください。

交渉を開始し、NDA及び基本合意を締結する

相手先企業がある程度絞れたら、より具体的な交渉に入る前に、NDA(秘密保持契約)を締結しましょう。
NDAは開示した情報を外部に漏らしたり他の用途で利用したりすることを禁じる契約です。

M&Aをするかどうかを決めたりM&Aの対価を決めたりするにあたっては、企業(特に、売り手企業)の情報を、相手先企業に開示せざるを得ないでしょう。
しかし、提示した機密情報が漏洩されたり、M&Aが不成立となったにもかかわらず、提示した営業機密を相手先企業の営業活動に利用されたりするような事態は阻止しなければなりません。

そのため、より詳細な交渉やデューデリジェンスを行う前に、NDAを締結することが不可欠です。

また、交渉過程における中間合意の意味合いで、基本合意を締結します。

デューデリジェンスを実施する

NDAや基本合意の締結後、デューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスとして、何をどこまで詳細に実施するのかはM&Aの目的や状況によって異なりますが、少なくとも事業デューデリジェンスや財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンスを行うことが一般的です。

また、人事面の運用や機能を調べる人事デューデリジェンスも実施すべきでしょう。

最終条件の交渉をする

デューデリジェンスの結果、M&Aを進める方向に決まったら、最終条件の交渉をします。
この時点では、デューデリジェンスの結果を踏まえてM&Aの対価についてもより具体的に検討することとなります。

最終契約の締結と実行

最終条件の交渉がまとまったら、最終契約を締結します。
その後は、登記申請や許認可の引き継ぎなど、M&Aに伴うさまざまな手続きを行います。
また、状況によっては社内規程の改訂なども必要となるでしょう。

M&Aを弁護士に依頼する主なメリット

M&Aを弁護士に相談することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
挙げられる主なメリットには、次のものがあります。

法務リスクが回避しやすくなる

弁護士へM&Aを相談する最大のメリットは、法務リスクを回避しやすくなる点です。

M&Aはどちらの当事者にとっても、会社の根幹に関わる非常に重要な出来事です。
ここに何らかの問題があり、その問題を見落としたままM&Aを進めてしまうと、会社の根底を揺るがす事態ともなりかねません。
また、M&A自体に慣れていない企業が大半であるため、自社のみで問題点や法的リスクに気が付くことは容易ではないでしょう。

M&Aを検討する段階から弁護士へ依頼することで、法務デューデリジェンスの際や契約締結の際などM&Aの各局面でサポートが受けられ、法的リスクを大きく低下させることが可能となります。

トラブル発生時に対応しやすくなる

M&Aに際しては、相手先企業との間でトラブルになる可能性もあります。
たとえば、最終契約を締結してしまった後で相手先企業の不正が発覚したり、相手先企業が契約違反をしたりすることなどが考えられるでしょう。

M&Aに際して弁護士のサポートを受けることで、万が一トラブルに発展した際の対応がスムーズとなります。

まとめ

M&Aは、企業の根幹にかかわる重大事業です。
仮に大きなリスクを見落としたまま契約を締結するなどしてしまうと、大きな損失が生じる可能性があるほか、後悔してもしきれない事態となる可能性もあります。

そのため、M&Aに際しては、M&Aに強い弁護士のサポートが不可欠であるといえるでしょう。

Authense法律事務所では、M&Aにあたっての法務リスクの洗い出しや法務デューデリジェンスなど、M&Aにまつわるリーガルサポートに力を入れています。
M&Aのサポートに詳しい弁護士をお探しの際には、ぜひAuthense法律事務所までお問い合わせください。

Authense
Professional Group
サービス紹介

Authenseの顧問弁護士

Authenseの知見と総合力で企業を全面サポート。電子契約書サービス付帯、実務に即した顧問弁護士プラン。

法務クラウド(旧名称「ALS」)

法務部員の急な退職や繁忙期にフレキシブルに対応。法務責任者の右腕となる弁護士を最速でアサイン。

広告審査アウトソーシングサービス

即戦力人材を即アサイン。弁護士が担当者として関係部署と連携、スムーズな広告審査の体制構築をサポート。

弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

近日開催のウェビナー

Authenseの無料メルマガ充実の企業法務コンテンツ

Authense法律事務所のメールマガジンでは、実務に役立つ企業法務や労務情報、
最新の法改正情報などの資料ダウンロードのご案内、セミナー情報などをお届けしています。
ご登録は無料です、ぜひご登録ください。

01

契約書の雛形や法改正情報などの
資料ダウンロード

契約書の雛形や法改正資料など、実務にすぐにお役立ていただける資料のダウンロードURLをご案内しています。

02

多彩な内容のセミナーに
ワンステップでお申し込み

生成AIの業務活用法から労務や企業法務の基本知識などを弁護士がわかりやすく説明するセミナーを多数開催しています。

03

ビジネスマガジン「THE INNOVATORS」の
記事が読める

Authenseが発刊しているビジネスマガジン「THE INNOVATORS」。各分野のトップのインタビューや最新ビジネストピックスなど、ここでしか見られないコンテンツが多数揃っています。

\簡単1分で登録完了/
今すぐメルマガ登録keyboard_arrow_right

INNOVATORS

Authenseが発刊する経営者向けビジネスマガジン

CONTACT

法律相談ご予約のお客様
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

ご相談から解決までの流れ