これまで、経営者の住所は登記情報で必ず公開されていました。
しかし、インターネット閲覧では非公開とする方向で改正がされる見込みです。
改正の内容を整理するとともに、改正がされる理由などについてわかりやすく解説します。
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経営者の住所はなぜ登記されて公開される?
法人の設立登記においては、必ず登記しなければならない事項が法律で定められています。
登記が必須とされる事項の記載が漏れていれば法務局で登記申請は受け付けてもらえず、法人を設立することはできません。
そして、代表取締役の住所は、登記すべき事項の一つです。
これは、上場企業など誰もが知る企業であっても、1人や数人で行っている小さな企業であっても例外ではありません。
経営者である代表取締役の住所が登記事項である最大の理由は、訴訟時などの対応のためであるとされています。
もちろん、会社の本店所在地も必須の登記事項です。
しかし、提訴されることを予測した企業が本店所在地となっているオフィスをもぬけの殻とし、会社の関係者が誰もそのオフィスに出社しなくなってしまえば、適切な訴訟を行うことは困難でしょう。
一方で、自宅の引っ越しはオフィスの移転や解約と比べて容易ではなく、たとえ会社の本店所在地がもぬけの殻になってしまっても、経営者の自宅宛てに訴状の送達送付をするという選択を取ることが可能です。
これが、経営者の住所が必須の登記事項である最大の理由とされています。
しかし、生活の本拠を知られたくない経営者が登記のためだけにウィークリーマンションを別で借りて住民票を移す行為などがしばしばおこなわれており、実効性には疑問が持たれているところです。
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法人登記の基本
経営者の住所公開に関連して、法人の登記についての基本を知っておきましょう。
株式会社の登記事項証明書に記載される事項
株式会社の設立に際しては、最低限、次の事項を登記すべきこととされています。
- 商号
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金額
- 発行可能株式総数
- 発行済株式総数
- 取締役の氏名
- 代表取締役の氏名と住所
そのため、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)には、これらの事項がすべて掲載されています。
法人の登記事項証明書は誰でも請求することができる
法人の登記事項証明書は、法務局へ行って1通600円 の手数料さえ支払えば、誰でも簡単に取得することができます。※1
法人との関係性なども一切問われませんので、自分とまったく関係のない法人の登記事項証明書を取ることも可能です。
また、請求用紙などには、請求者の氏名を記載することとなっているものの、特に請求者の本人確認がなされるわけでもありません。
つまり、上で記載をした登記事項証明書はすべて、誰でも簡単に見ることができるということです。
また、郵送で取り寄せることもできます。
法人の登記情報は誰でもインターネットで閲覧できる
法人の登記情報は、登記情報提供サービス へ登録して1通332円 の手数料を支払うことで、誰でもオンライン上で閲覧することが可能となります。※2、※3
オンライン閲覧であっても掲載される情報は登記事項証明書と同じであり、経営者の住所を確認することも可能です。
経営者の住所がネット非公開に?改正の内容とは
法務省は2022年2月15日、経営者の住所公開について見直しをする旨を公表しました。※4
経営者の住所公開に関して改正が見込まれる内容は、次のとおりです。
インターネット閲覧では原則として経営者の住所が非公開に
オンラインで登記情報を閲覧することができる登記情報提供サービスにおいては、経営者の住所を全面的に非公開とする方向で改正がなされる見込みです。
改正後に経営者の住所を知りたい場合には、紙での登記事項証明書を取得しなければなりません。
DV被害者などは全面的に非公開に
紙で発行される登記事項証明書においては、原則として引き続き経営者の住所が掲載される見込みです。
ただし、DV(ドメスティックバイオレンス)の犯罪被害を受けるおそれがあるなどと経営者などから申出があった場合には、登記事項証明書においても住所を表示しないこととされます。
この場合には、本来であれば経営者の住所が表示される欄に、「商業登記規則第31条の2の規定による措置」などとの記載がされる予定です。
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登記された経営者の住所が非公開へと改正される理由
経営者の住所が非公開となる方向で改正がされる最大の理由は、経営者のプラバシー保護です。
登記事項証明書などに経営者の住所が掲載されることは、従来から問題視されていました。
特に、女性や今回配慮の対象となったDV被害者などにとっては、会社設立の大きな障害となっていたといえます。
また、住所を簡単に調べられることにより、自宅へのダイレクトメールの送付や突然の営業訪問などの迷惑行為に遭うリスクや、資産を持っていると予測を付けた強盗などに狙われるリスクもあるでしょう。
生活の本拠地が公開されないための苦肉の策として、住居とは別の場所にウィークリーマンションなどを借りてそこに住民票を移したうえで住所として登記するなどの方法が取られる場合もあり、プライバシーを守るために無用なコストがかかっていたといえます。
今回の改正でも紙の登記事項証明書では原則として住所は公開されるため、経営者の住所が全面的に非公開となるわけではありません。
そうであるとはいえ、これまで当然のように経営者の住所が公開されていた状況に一石を投じるものであり、大きな前進といえるのではないでしょうか。
まとめ
経営者の住所が、インターネット閲覧では非公開となります。
これは、これまで当然のように公開されてきた経営者の個人情報も保護される時代になってきていることが背景にあるといえるでしょう。
経営者とはいえ、プライバシーのある一人の人間であることに変わりはありません。
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