コラム
公開 2024.10.25

薬機法違反となる行為とは?行為の例と罰則、企業がとるべき対策を弁護士が解説

薬機法では、医薬品や医療機器などの安全性を確保するため、さまざまな規制を設けています。
特に、広告規制は医薬品などの製造や販売をしない者であっても対象となるため、違反しないよう注意しなければなりません。

では、薬機法に違反するのは、どのようなケースなのでしょうか?
また、薬機法に違反すると、どのような事態が生じるのでしょうか?

今回は、薬機法違反となる主な行為を紹介するとともに、薬機法に違反した際の罰則などについて弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)

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薬機法とは

薬機法とは、医薬品や医療機器などの安全性を確保することなどにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする法律です。
薬機法の目的については、次のように定められています(薬機法1条)。

  • この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

薬機法では医薬品だけではなく、次のものなどが規制の対象とされています(同2条)。

  • 医薬品:人や動物の疾病の診断、治療、予防に使用されることが目的とされている物など
  • 医薬部外品:吐き気や体臭の防止など一定の目的で使われるものや防虫剤などのうち、人体への影響が緩和なもの
  • 化粧品:人の見た目を美化するなど一定の目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの
  • 医療機器:人や動物の疾病の診断や治療などへの使用が目的とされている機械器具等のうち一定のもの
  • 再生医療等製品:人や動物の身体の構造や機能の再建、修復などが目的とされる物のうち、人や動物の細胞に培養などの加工を施したものなどで、一定のもの

なお、薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
以前は「薬事法」という名称でしたが、2014年に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により名称も改められました。

薬機法違反となる主な行為1:無許可・無登録営業

ここからは、薬機法違反となる行為について解説します。
薬機法違反となる行為の1つ目は、無許可営業や無登録営業です。

薬機法では、一定の営業をするために許可や登録を受けるべきことを定めています。
この規定に反し、許可や登録を受けることなく許可や登録が必要な営業をした場合には、薬機法違反となります。

薬機法の規定により許可や登録が必要とされている営業をそれぞれ紹介します。

許可や登録を受けるには所定の要件を満たす必要があるほか、適法に営業を開始するまでには相当の日数がかかります。
そのため、薬機法による許可や登録が必要な営業を行いたい場合には、早期に弁護士などの専門家へご相談ください。
なお、なかには施設(建物の構造など)に要件が課されているものもあるため、建物の設計をする前の相談をおすすめします。

薬機法で許可が必要な行為

薬機法で許可が必要とされる営業には、次のものがあります。

  • 薬局の開設(薬機法4条1項)
  • 医薬品、医薬部外品または化粧品の製造・販売(同12条1項)
  • 医療機器または体外診断用医薬品の製造・販売(同23条の2 1項)
  • 再生医療等製品の製造・販売(同23条の20 1項)
  • 再生医療等製品の製造(同23条の22 1項)
  • 医薬品の販売(同24条1項)
  • 高度管理医療機器等の販売・貸与(同39条1項)
  • 医療機器の修理(同40条の2 1項)
  • 再生医療等製品の販売(同40条の5 1項)

このような営業をするには、あらかじめ許可を取得しなければなりません。
必要な許可を得ないままこれらの営業を行うと、薬機法違反となり罰則の適用対象となります。

薬機法登録が必要な行為

薬機法で登録が必要とされる営業には、「医療機器または体外診断用医薬品の製造(同23条の2の3 1項)」があります。
登録を受けないままこの営業を行うと、薬機法違反として罰則の適用対象となります。

薬機法違反となる主な行為2:広告規制違反

薬機法違反となる主な行為の2つ目は、広告規制違反です。
広告規制は、医薬品などの製造者や販売者以外も規制対象となる点に注意しなければなりません。
ここでは、薬機法の広告規制の概要について解説します。

薬機法による広告規制の内容

薬機法では、医薬品などの安全性などを確保するため、広告について規制がなされています。

なお、薬機法では次の3つを満たす限り広告に該当するとされており、媒体などの限定はありません。

  1. 顧客を誘引する (顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態であること

つまり、これらを満たす限り、テレビコマーシャルや新聞広告などのほか、インターネット広告やインフルエンサーに依頼して行うSNS広告なども規制対象になるということです。※1

そして、薬機法では次の広告が規制されています。

  • 虚偽広告・誇大広告
  • 堕胎の暗示やわいせつ表現などによる広告
  • 特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告
  • 未承認医薬品等に関する広告

それぞれの概要は次のとおりです。

虚偽広告・誇大広告

薬機法違反となる広告の1つ目は、虚偽広告や誇大な広告です。

薬機法では、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の名称や製造方法、効能、効果、性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽広告や誇大広告を禁止しています(同66条1項)。
なお、規制対象は広告することのみならず、これを記述することや流布することも禁止されています。

また、医師などが医薬品や医薬部外品などの効能や効果、性能を保証したものと誤解されるおそれがある記事の広告や記述、流布は、禁止されている虚偽広告や誇大広告に該当することとされています(同2項)。

堕胎の暗示やわいせつ表現などによる広告

薬機法違反となる広告の2つ目は、堕胎の暗示やわいせつ表現などによる広告です。
薬機法では、医薬品や医薬部外品などに関して、次の表現をすることが禁じられています(同3項)。

  • 堕胎を暗示する文書・図画
  • わいせつにわたる文書・図画

特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告

薬機法違反にあたる広告の3つ目は、特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告です。

薬機法施行令で定められている特殊疾病への使用が目的とされている医薬品や再生医療等製品のうち、医師または歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法が制限されます(同67条1項)。

2024年9月現在、対象となる特殊疾病としては、次の3つが指定されています(薬機法施行令64条)。

  • がん
  • 肉腫
  • 白血病

未承認医薬品等に関する広告

薬機法違反にあたる広告の4つ目は、未承認医薬品等に関する広告です。

医薬品や医療機器、再生医療等製品のうち、必要な承認や認証を受けていないものについては、その名称や製造方法、効能、効果、性能に関する広告をしてはならないとされています(薬機法68条)。

広告規制の対象者

薬機法の広告規制の対象者は、「何人も」です。
つまり、医薬品などの製造販売を業として行う者のみならず、すべての人が規制対象になるということです。

そのため、たとえば健康食品などの広告をする際も、未承認医薬品の広告など薬機法違反とならないよう注意しなければなりません。
また、広告代理店やインフルエンサーなどが依頼を受けて医薬品や化粧品などの広告をする際も、薬機法違反には十分な注意が必要です。

広告表現について薬機法違反とならないかどうか不安がある場合には、出稿前に薬機法にくわしい弁護士に確認を受けるとよいでしょう。

薬機法に違反するとどうなる?

薬機法に違反すると、どのような事態が生じる可能性があるのでしょうか?
ここでは、薬機法に違反した場合に生じ得る事態について解説します。

罰則が適用される

薬機法に違反すると、刑事罰の適用対象となります。
薬機法違反による主な刑事罰は次のとおりです。

薬機法違反の内容 罰則
無許可営業(製造販売) 3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科(同84条)
誇大広告・虚偽広告
未承認医薬品の広告
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれらの併科(同85条)
無登録営業 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科(同86条1項)

法人の業務として違反が行われた場合は、行為者が罰せられるほか、法人も罰金刑の対象となります。
法人に対する罰金刑は最高で「1億円以下」とされており、非常に高く設定されています(同90条)。

課徴金納付命令の対象となる

薬機法の広告規制に違反すると、課徴金納付命令の対象となります(同75条の5の2)。
課徴金納付命令とは、違反行為によって得た収益の一部を国庫に納付すべき旨の命令です。

薬機法の広告規制違反による課徴金額は、違反行為(「課徴金対象行為」といいます)をした期間(「課徴金対象期間」といいます)に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の合計額の4.5%とされています。
ただし、違反行為が3年以上に渡る場合は、期間の末日から遡って3年間が課徴金対象期間とされます(同2項)。

なお、計算した課徴金の額が225万円未満であるときは、課徴金の納付は命じられません(同4項)。

行政処分の対象となる

薬機法に違反した場合、行政処分の対象となります。
具体的には、違反の態様に応じて、次の行政処分がなされる可能性があります。

  • 製品の廃棄・回収命令(同70条1項)
  • 業務改善・停止命令(同72条1項)
  • 違反広告の中止などの措置命令(同72条の5 1項)
  • 許可の取消し等(同75条)
  • 登録の取消し等(同75条の2)

特に、業務停止命令や許可の取消命令などがなされると、影響が長期化したり事業の再建が困難となったりするおそれがあります。

薬機法違反を防ぐために企業が講じるべき対策

先ほど解説したように、薬機法違反をするとさまざまな影響が生じます。
では、企業が薬機法違反をしないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
最後に、薬機法違反を避けるための対策を3つ解説します。

薬機法やガイドラインを読み込んで理解する

1つ目は、薬機法の法令やガイドラインを読み込んで内容を理解することです。
どのような行為が薬機法違反となるかを理解することで、知らず知らずのうちに薬機法に違反する事態を避けやすくなります。

広告審査を徹底する

2つ目は、広告審査を徹底することです。
広告審査を徹底することで、薬機法で禁止されている広告の出稿を防ぐことが可能となります。

なお、先ほど解説したように、薬機法の広告規制はすべての事業者を対象とするものです。
そのため、医薬品などを取り扱わない事業者であっても、薬機法違反を避けるための広告審査は必須といえます。

弁護士に相談できる体制を構築する

3つ目は、弁護士に相談できる体制を構築することです。

業務や広告審査を進める中で、薬機法に違反するか否か判断に迷うこともあるでしょう。
そのような際、自社だけで無理に判断しようとすると、判断を誤り薬機法に違反するおそれが生じます。

迷った際に相談できる弁護士を確保しておくことで、正しい判断がしやすくなり、薬機法違反を未然に防ぐことが可能となります。

まとめ

薬機法の概要や薬機法違反となる行為、薬機法に違反した場合の罰則などについて解説しました。
薬機法違反となる主な行為には、無許可営業や無登録営業、広告規制違反が挙げられます。

なかでも、広告規制違反はその対象が「何人も」とされています。
そのため、医薬品などを取り扱う事業者はもちろん、その他の事業者や広告を請け負うインフルエンサーやアフェリエイターなども注意しなければなりません。

薬機法違反を避けるには、薬機法の規制内容を正しく理解したうえで、迷った際に相談できる弁護士を確保しておくことをおすすめします。

Authense法律事務所では、企業法務に特化したチームを設けており、薬機法違反を避けるためのご相談や広告審査などについても多くの実績があります。
薬機法違反を避けるための体制を構築したい場合や、薬機法に関する相談先をお探しの際などには、Authense法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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