コラム

パワハラとモラハラの違いとは?弁護士がわかりやすく解説

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パワハラとモラハラには、どのような違いがあるのでしょうか?

今回は、パワハラとモラハラの定義を確認するとともに、これらのハラスメントについて相談された場合の会社の対処法や、これら以外に会社が注意すべきハラスメントなどについて弁護士が解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。同志社大学法学部法律学科卒業、京都大学法科大学院修了。企業法務のほか、離婚や相続といった家事事件、一般民事事件を多く取り扱う。親権や面会交流、遺産分割など、法的トラブルにおいて相手方と対立する依頼者の悩みに正面から向き合うことを心がけており、法的問題の解決を目指して粘り強く尽力する。
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パワハラ(パワーハラスメント)とは

パワハラとは、「パワーハラスメント」の略称です。
パワハラの定義は法律で定められていますので、まずはこちらを確認しましょう。※1

パワハラ防止法によるパワハラの定義

パワハラの定義は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(通称「パワハラ防止法」)に定められています。
この法律によれば、次の3つの要件をすべて満たす行為がパワハラであるとされています。

  • 優越的な関係に基づいて、または優位性を背景に行われるものであること
  • 業務の適正な範囲を超えて行われるものであること
  • 身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

パワハラかどうかに迷ったら、この定義に照らし合わせて検討するとよいでしょう。

厚生労働省によるパワハラの6類型

厚生労働省によれば、パワハラには次の6類型があるとされています。
6つの類型と具体例は、それぞれ次のとおりです。

  • 身体的な攻撃:上司が部下に対して殴打や足蹴りをするなどの行為など
  • 精神的な攻撃:上司が部下に対して人格を否定するような発言をするなどの行為など
  • 人間関係からの切り離し:自身の意に沿わない社員に対して仕事を外し、長期間にわたり別室に隔離したり自宅研修させたりする行為など
  • 過大な要求:上司が部下に対して、長期間にわたる肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での、勤務に直接関係のない作業を命ずる行為など
  • 過小な要求:上司が管理職である部下を退職させる目的で、誰でも遂行可能な業務を行わせる行為など
  • 個の侵害:集団で同僚1人に対して職場内外で継続的に監視したり、他の従業員に接触しないよう働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする行為など

モラハラ(モラルハラスメント)とは

モラハラとは、「モラルハラスメント」の略称です。

モラハラに明確な定義はありませんが、一般的には相手に対して暴言を吐いたり、一見正論に見える言葉で相手を追い詰めたり、相手を無視したりといった、言葉や態度による精神的な暴力を指すことが多いでしょう。
なお、肉体的な暴力行為はモラハラには含めないことが一般的です。

パワハラとモラハラの違い

パワハラとモラハラの主な違いは、次のとおりです。
なお、両者は対立する概念ではありませんので、一つの行為がパワハラとモラハラの両方に該当する場合なども存在します。

パワハラは職場で起きる、モラハラはどこでも起きる

パワハラは、職場などで起きる行為を指すことが一般的です。
一方、モラハラは家庭内などで起きることも多く、起きる場所を問いません。

パワハラは優位的な地位が前提、モラハラは地位の違いを問わない

先ほど紹介した厚生労働省の定義のとおり、パワハラは何らかの優先的地位を前提としておきるハラスメントです。

一方、モラハラは特に相手との地位を問いません。
実際に、夫婦間や恋人同士という本来はフラットであるはずの関係の中で、モラハラが起きることも少なくないでしょう。

モラハラには身体的な暴力は含まないことが多い

パワハラ防止法の定義によれば、暴力を伴う行為もパワハラに含まれます。

一方、モラハラには暴力行為は含まれないことが一般的です。
暴力行為は、例として家庭内のものであれば別途「DV」と称して区別される場合があります。

社員からパワハラについて相談された場合の対応方法

会社が社員からパワハラ被害について相談を受けた場合には、次のように対応しましょう。

弁護士へ相談する

社員からパワハラについて相談を受けたら、まずはパワハラなどの労働問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談してこの先の対応をともに行うことで、対応が非常にスムーズとなるでしょう。

事実関係を把握する

社員からパワハラについて相談をされたら、事実関係の把握に努めましょう。
中には、従業員側の虚言や誇大な表現である可能性もゼロではないためです。

加害者とされる相手との言い分が大きく食い違っている場合には、特に慎重な対応が必要となります。
状況によっては被害者などのプライバシーにも配慮しつつ、周囲への聞き込みなどを行う必要が生じる場合もあるでしょう。

相談者に不利な措置をしないよう徹底する

パワハラ被害を相談した社員に対して、不利益な取り扱いをすることは絶対に避けなければなりません。

このような取り扱いは労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)で禁じられているうえ、万が一相談者である従業員に不利益な取り扱いをしてしまえば、会社に対して損害賠償請求がなされる可能性があるためです。

加害者の処分を検討する

パワハラ行為が事実であると判断した場合には、加害者の処分を検討しましょう。
具体的には、配置転換を行ったり、懲戒処分を下したりするなどです。

ただし、パワハラ行為に対して過重な処分を下してしまえば、パワハラ加害者側から処分の無効や損害賠償請求がなされるおそれがあるという点に注意が必要です。

そのため、自社の就業規則や過去の判例と照らし合わせたり弁護士へ相談したりしながら、処分内容を慎重に検討する必要があるでしょう。

再発防止策を講じる

社内でパワハラが起きてしまったら、パワハラ行為が再度社内で起きてしまうことのないよう、再発防止策を検討しましょう。

たとえば、パワハラ研修を定期的に実施したり、就業規則にパワハラをした際の懲戒処分を明記したりするなどです。
また、過度なノルマ設定がパワハラの原因となっている場合などには、社内の体制自体を見直すべきかもしれません。

自社のみで再発防止策を講じることは容易ではありませんので、必要に応じて弁護士へ相談しながら進めることをおすすめします。

社員からモラハラ被害を相談された場合の対応方法

社員からモラハラ被害について相談された場合、会社としては次のように対応するとよいでしょう。

職場でのモラハラの場合

相談された内容が職場でのモラハラ被害である場合には、パワハラの場合と同じように対応しましょう。
職場におけるモラハラはパワハラと明確に区別をすることは困難であり、社員が「モラハラ」という言葉を用いていても、その実態はパワハラである可能性が高いためです。

家庭などでのモラハラの場合

相談された内容が、家庭内など職場ではない場で起きているモラハラ被害である場合には、会社として直接対応することは困難です。
しかし、そのようなプライベートなことをわざわざ会社に対して相談をしているということは、その社員が非常に困っている可能性が高いでしょう。

そのため、次のような対応が検討できます。

弁護士を紹介する

一従業員の場合、相談できる弁護士のあてがまったくない場合も珍しくありません。
また、弁護士へ相談するハードルがとても高いものであると誤解している場合も少なくないかと思います。

そのため、会社として相談先の弁護士に心当たりがあるのであれば、相談先の弁護士を紹介してあげるとよいでしょう。

国の相談窓口を紹介する

内閣府では、24時間対応の電話相談窓口である「DV相談+(プラス)」を設置しています。※2
電話の他、チャットでの相談も可能ですので、こちらの窓口を紹介してあげることも一つの手でしょう。

パワハラ、モラハラ以外の主なハラスメント

パワハラやモラハラ以外にも、ハラスメントにはさまざまなものが存在します。
中でも、会社が特に注意しておくべきハラスメントは、次のとおりです。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることです。※3

たとえば、次のような行為がこれに該当します。

  • 性的な事実関係を尋ねること
  • 性的な内容のうわさを流すこと
  • 性的な冗談やからかい
  • 食事やデートへの執拗な誘い
  • 個人的な性的体験談を話すこと
  • 性的な関係を強要すること
  • 必要なく身体に触れること
  • わいせつ図画を配布・掲示すること
  • 強制わいせつ行為や強姦など

強制わいせつ行為や強姦などは問題外であるとしても、性的な冗談やからかいなどは、悪気なく行ってしまう従業員がいる可能性もあるでしょう。

会社でのセクハラ行為を予防するため、パワハラ研修とあわせてセクハラ研修も定期的に実施することをおすすめします。

マタニティハラスメント(マタハラ)

マタニティハラスメントとは、職場において行われる上司や同僚からの言動により、妊娠・出産をした女性労働者の就業環境が害されることをいいます。※3

たとえば、妊娠中の女性に対して「忙しい時期に妊娠するなんて迷惑だ」「つわりが辛いなら会社を辞めてもらって構わない」などと言ったり、出産後の女性に対して「子どもがかわいそうだから専業主婦になるべきだ」などと価値観を押し付けたりすることなどが代表例です。

なお、妊娠や出産をした女性に対して解雇や減給、不利益な配置転換をするなどの行為はマタハラの範疇を超え、男女雇用機会均等法や育児介護休業法違反となります。

アルコールハラスメント(アルハラ)

アルコールハラスメントとは、飲み会の場などで飲酒を強要したり、一気飲みなど危険な飲み方を強要したりする行為です。

飲酒をするかどうかは個々の自由であり、いくら上司であっても強要すべきものではありません。
また、お酒に弱い体質の人に無理に飲酒をさせれば、最悪の場合には死亡するなど取り返しのつかない事態となる可能性があります。

アルハラは業務時間外に居酒屋など職場外にて行われることが多く、会社としてその実態を把握することは困難でしょう。
そうであるからこそ、研修の場などで注意喚起をしておくことをおすすめします。

Authenseのハラスメント防止対策プラン

Authense法律事務所では、「ハラスメント防止対策プラン」をご用意しております。アンケートなどで社内の実態調査を行い、企業の特徴・実態に合わせたパワハラ対策をご提案、
企業としてのパワハラ対策の方針を明確にします。ご要望に応じてオーダーメイドプランを作成いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

パワハラとモラハラの間に、明確な線引きがあるわけではありません。
また、これらの他にも職場で起きうるハラスメントには、さまざまなものが存在します。

これらの中には、もしかすると、「自分の若いころは普通だった」などと感じる行為が含まれているかもしれません。
しかし、その感覚のままで部下などと接してしまうと、大きな問題へと発展するリスクがあります。
そのため、会社としては定期的に研修を行うなどして各ハラスメントの内容を周知し、社内でハラスメントが起きないよう予防に努める必要があるでしょう。

Authense法律事務所では、社内でのハラスメント研修など、ハラスメント対策の支援も行っております。
ハラスメント対策をご検討の際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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