M&Aの意味とは何か?M&Aはどのような手順で進むのか?M&Aには様々な手法があり、M&Aの手法にはどのようなものがあるかを説明したうえで、それぞれのメリット・デメリットを比較し、どのような観点で検討すべきかをお伝えします。M&Aにより得られるビジネス面でのシナジー効果の検討ととともに、財務・税務・法務面での手法の検討が欠かせません。
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M&Aとは?
M&Aとは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略称です。合併と買収の2文字が付くことから、好調企業が不調企業を吸収合併したり、大企業や中堅企業が中小企業を吸収合併して子会社化したり、大企業が行なう敵対的買収などをイメージされる方が多いかもしれません。
しかし、昨今では、後継者不足を背景に事業承継の一つの選択肢としてM&Aが注目を集めており、ベンチャー企業のEXITの手段としてもM&Aがより注目されるようになってきています。
このように、近年は多様な場面でM&Aが行われることが多くなってきていますが、M&Aといっても、さまざまな手法があり、ビジネス面・税務面・会計面・法務面等においてどの手法を用いるのが当該ケースにとって適切か分析的に検討する必要があります。
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M&Aの手法と手順
法務面におけるM&Aの一般的手順としては、
- 秘密保持契約を締結し、売り手企業が決算書などの情報を開示し
- 問題点を監査し(デューデリジェンス)
- 基本合意書を締結し
- デューデリジェンスの結果を踏まえて本契約を締結し
- クロージングを行う
という流れになります。
M&Aの手法
M&Aの手法としては、以下のとおり、①合併、②株式交換、株式移転、③事業譲渡、④株式譲渡、⑤新株引受、⑥会社分割などが挙げられます。
合併
合併により消滅する会社の権利や義務を存続会社に引き継がせる吸収合併と、合併により消滅する会社の権利や義務を新しく設立した会社に引き継がせる新設合併があります。
【メリット】
売り手企業の財産等を包括的に承継することができます。
新株発行等による場合は追加資金を使わずに統合が可能となります。
【デメリット】
株主総会決議や債権者保護手続が原則として必要となります。
合併では組織や人材、技術など全体が統合されるため、人事制度等現場への負荷が高まり、現場が混乱して統合が円滑に進まない可能性があります。
株式交換・株式移転
どちらも売り手企業を100%子会社する手法です。買い手企業が自社の株式と売り手企業の株式等を交換することで、売り手企業を100%子会社化する手法が株式交換です。株式移転は、1又は2以上の株式会社が、発行済株式の全部を 新たに設立する株式会社に取得させることをいい、新設会社は完全親会社となり、成立日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得します。
【メリット】
買収の対価として親会社株式を付与する場合は、買収資金を用立てる必要がありません。
個々の株主を交渉相手とすることなく特別決議により100%子会社することができます。
売り手企業は法人として存続するため、早急な経営統合を行わなくて済みます。
【デメリット】
100%子会社とする場合にしか利用できないという点があります。
売り手企業が取得する株式が非公開の場合、売り手企業は株式の現金化が困難です。
事業譲渡
売り手企業の事業を買い手企業に売却する手法です。
【メリット】
買い手企業は必要な資産・負債だけを買収できるので、簿外債務を引き継ぐ可能性を排除できます。
【デメリット】
契約上の地位の移転には個別の同意が必要となり、買い手企業、売り手企業双方にとって手続きが煩雑になり、手間がかかります。
株式譲渡
売り手企業の株主が買い手企業に株式を売却する手法です。
【メリット】
法的手続として簡便です。
買収後も売り手企業は別法人として存続するため、早急に経営統合を行わなくて済みます。
原則として契約関係や許認可等に影響を与えません。
【デメリット】
買い手企業は売り手企業を丸ごと引き継ぎますが、事後に簿外債務等、想定外の負債などを抱えていることが発覚することもあります。
買い手企業は多額の買収資金が必要になるケースがあります。
新株引受
売り手企業が新株を発行して、買い手企業がそれを引き受ける手法です。
【メリット】
売り手企業の株主は保有する株式を手放さず買い手企業の支援を受けることができます。
事業譲渡や合併に比べて手続が簡便です。
【デメリット】
既存株主が少数株主として残るため、買い手企業は100%支配権を獲得することができません。
会社分割
売り手企業の全部又は一部の事業を切り離して、買い手企業に吸収させる吸収分割と、新しく設立した会社が承継する新設分割の2つがあります。
売り手企業の株主は、対価として株式や現金を受け取ります。
【メリット】
新株発行の場合は、買収資金が安価で済みます。
事業譲渡に比べると、権利移転に個別の手続きを要しない点で法的手続きがシンプルです。買い手企業としては一気に経営統合ができるため、買収の成果が早期に図ることができます。
【デメリット】
株主総会決議や債権者保護手続が原則として必要となります。
合併と異なり、権利移転について第三者に対する対抗要件が必要となります。
人事制度やシステム統合など現場対応が求められるため、現場が混乱し経営統合がスムーズに進まない可能性があります。
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M&A手法の検討
M&Aの手法を検討にあたっては、手元資金が用意できるのか否か、株主総会など手続を要するため時間がかかるが問題ないか、許認可事業につき再度許認可を得る必要があるのか、買収対象は事業の全部分なのか一部分なのか、課税される場合はあるのかどうか等を総合検討して決定する必要があります。
M&Aを成功させるためには専門家のアドバイスが必要
M&Aに際しては税務・会計・法務の問題が生じます。このうち、契約・手続関係や法務デューデリジェンスに関しては法務の専門家である弁護士の関与が必要とされる場面が生じます。また、M&A後の経営統合作業(PMI:Post Merger lntegration)においても業務フローの構築・契約書の整備、人事労務関係の管理・運用等法務の側面に関しても専門家である弁護士の関与が必要となります。M&Aの前後を通じ、税理士・会計士等の専門家とともに弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。