withコロナ時代の働き方で定着したテレワークと新しい労務管理における課題や、新型コロナによって公演中止など多くの対応を迫られたエンタメ業界を例に、ニューノーマル時代に問われるリスク管理を法整備の重要性について掘り下げていきます。
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1 はじめに
現在、緊急事態宣言は解除されているものの、依然コロナ禍にあり、第2波の延長、第3波がきている等といわれておりますが、コロナ禍においては個人の生活や企業活動にも大きな影響があることと思います。
本コラムでは、コロナ禍の新しい生活、エンターテインメント業界における影響についてお話いたします。
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2 新しい生活~労務問題~
まず、個人の生活と企業活動に重なる部分としては、テレワークや労務管理の問題があります。
テレワークとは、労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務をいい(厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」)、在宅勤務もこれに含まれます。
テレワークの期間が短期間であれば業務命令により対応可能といえます。
例えば、ある会社では、緊急事態宣言中において、労働時間の管理について、始業時に業務を開始した旨、また、終業時には業務を終了した旨及び1日の業務内容を簡潔に上長に電子メールで報告することとしたうえで、その他情報システム部へのアクセスを制限することを取り決め、社内通知を発するという対応を執り、大きな問題なく緊急事態宣言の終了をみたとのことです。
他方で、就業時間外における勤務先システムへのアクセスの関係で、情報システム部の従業員まで就業時間外の労働が発生してしまうという状況が発生してしまった企業もあったようです。
また、少なくともテレワークを中長期にわたって採用する場合、労働時間管理を含めたルールを整備する必要があるといえます(厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)。
このようにテレワークの採用にあたっては適正なルールの整備や時間外労働等法的な問題を多く孕んでいるといえます。
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3 コロナ禍のエンタメ業界~不可抗力条項~
新型コロナ危機下における取引法務において、まずは不可抗力が思い浮かぶと指摘する方がいます。
実際に、エンターテインメント業界において、コロナ禍においていわゆる不可抗力条項が非常に役に立ったというお声を耳にしました。
企業間の契約において、リスク管理の一環として、天災や戦争といった当事者が予見不可能な外部的事情が発生した場合に、債務不履行責任を負わない旨の規定を設けることがあり、これがいわゆる不可抗力条項と呼ばれています。
そもそも、不可抗力は、元来、人の力による支配・統制を観念することのできない自然現象や社会現象、例えば、洪水、台風、地震、津波、地滑り、火災、伝染病、海難、戦争、大規模騒乱等を意味すると考えられていますが、最近では、政府による拘束・拘禁も含まれるとするものが通常であるといわれています(「民法(債権関係)の改正に関する検討事項⑴詳細版」法制審議会民法(債権)部会)。
現状日本では新型コロナに対応する契約関連の実定法はなく、不可抗力についてこれまで判例・学説で十分な議論がし尽されたとはいいがたい面もあるため、その意味で不可抗力条項を契約上規定するニーズが生じるということになります。
もっとも、仮に契約上不可抗力条項を規定しなかったとしても、民法上の原則によっても一定の解決を図ることも可能ではあります。すなわち、民法上の原則によれば、不可抗力による場合、債務不履行となった側が債務不履行責任を負うことはなく、危険負担により、一方の債務が履行不能となった場合、他方の債務も消滅するということになります。
しかしながら、上に述べたとおり、民法では不可抗力の定義が規定されておらず、また、不可抗力の内容が多岐にわたることも踏まえると、民法の原則により処理をする場合、不可抗力により免責されるための要件が必ずしも明確とはいえません。そこで、当該契約において不可抗力により免責される場面を明確にし、当事者の予見可能性を確保するとともに、将来の紛争リスクを低減するため不可抗力条項を契約上規定することになります。
エンターテインメント業界においては、何らかのイベントに所属タレントを出演させることを内容とする契約が存在します。今回のコロナウィルスの蔓延及び緊急事態宣言により、イベントが中止されたり、イベントへの参加を取りやめたりという事態が発生することになります。その際、イベント主催者とタレントを抱える企業でタレントの出演に関して紛争となる可能性がでてきます。実際に、タレントを抱える企業がイベントにタレントを出演させることを拒否したいという場合に、契約書上の不可抗力条項に該当する旨を説明のうえ、何ら問題なくイベントへの参加をさせずに済むということがいくつもあったということでした。
上述のとおり、今回のような場合でも、民法の一般原則により一定の解決を図ることは可能であった可能性は否定されませんが、少なくとも不可抗力条項を契約書に盛り込んでいたため早期に解決に至ったといえるでしょう。
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4 総括
このように、コロナ禍においては様々な面において法務面を整備することは非常に重要であるといえますので、これを機会に一度法務面の整備について考えるのが良いでしょう。
【参考文献】
- 契約書作成の実務と書式(阿部・井窪・片山法律事務所)
- 新型コロナ危機下の企業法務部門(経営法友会)
- 特集 新型コロナウィルス感染症をめぐる法的問題(アンダーソン毛利友常法律事務所)