コラム
公開 2021.11.02 更新 2024.08.13

景品表示法とは?ガイドライン・違反になる事例・罰則を弁護士がわかりやすく解説

景品表示法に違反するとどんな罰則がある?企業が注意すべ きポイント

企業が商品のパッケージや広告などを検討する際は、景品表示法(景表法)に注意しなければなりません。

景表法では、どのような表現が規制対象となるのでしょうか?
また、景表法に違反しないためには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?

今回は、景表法の概要や規制内容、違反しないための対策などについて、弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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景品表示法(景表法)とは

景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、「景表法」と略されることもあります。

景表法の目的は、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護すること」です(景表法1条)。

一般的に、消費者にとって、自身の購入する商品やサービスについて、詳細を調べることは必ずしも容易ではありません。
たとえば、あるセーターAが「カシミヤ100%」と表示されていれば、それが正しいとの前提に立って商品を選ぶことが多いでしょう。
似たデザインの「カシミヤ80%」のセーターBが同程度の価格で並べて売られていれば、カシミヤ100%の方を選ぶ可能性があります。
しかし、実際にはセーターAのカシミヤ混用率が60%であった場合、消費者は嘘の表示によって選択を阻害されたといえるでしょう。

このような事態を防ぎ、消費者が自主的かつ合理的に自身の購入する商品やサービスを選べる環境を実現するため、景表法が設けられています。

景表法は、主に次の2つの記載内容から成っています。

  • 不当表示の禁止
  • 景品類の制限および禁止

ここでは、それぞれの概要について解説します。

景表法の規制内容1:不当表示の禁止

景表法の規制内容の1つ目は、不当表示の禁止です。

先ほど解説したように、商品やサービスの表示が実際とは異なるものとなっていると、消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスを選ぶ機会が阻害されてしまいかねません。
そこで、不当表示を禁止する旨の規定が設けられています。

不当表示の禁止は、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」、そして「指定告示」の3つに分類されます。

優良誤認表示

優良誤認表示とは、事業者が自己の供給する商品やサービスの取引において、その品質や規格その他の内容について一般消費者に対して行う次の表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示です(同5条1項)。

  1. 実際のものよりも著しく優良であると示すもの
  2. 事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

消費者庁のホームページによると、たとえば次のものがこれに該当することとされています。※1※2

  • 販売する中古自動車の走行距離を3万kmと表示したが、実は10万km以上走行した中古自動車のメーターを巻き戻したものだった
  • 国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して販売していたが、実はブランド牛ではない国産牛肉だった
  • 医療保険について「入院1日目から入院給付金をお支払い」と表示したが、入院後に診断が確定した場合、その日からの給付金しか支払われないシステムだった
  • 天然ダイヤを使用したネックレスのように表示したが、使われているのはすべて人造ダイヤだった

有利誤認表示

有利誤認表示とは、事業者が自己の供給する商品やサービスの取引において、価格その他の取引条件について、一般消費者に対して行う次の表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示です(同5条2項)。

  1. 実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの
  2. 競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるもの

消費者庁のホームページによると、たとえば次のものがこれに該当することとされています。※1※3

  • 外貨定期預金について、外貨預金の受取利息を手数料抜きで表示したが、実質的な受取額は表示の3分の1以下になってしまう
  • 運送会社が基本価格を記載せずに、「今なら半額!」と表示したが、実は50%割引とは認められない料金で仕事を請け負っていた

指定告示

景表法では、急速な時代の変化に対応するため、ここまで紹介した優良誤認表示と有利誤認表示のほか、内閣総理大臣が指定する一定の表示についても禁止することとしています(同5条3項)。
2024年8月現在、これには次の6つの告示が定められています。

  • 無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48年公取委告示第4号)
  • 商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公取委告示第34号)
  • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公取委告示第13号)
  • 不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公取委告示第14号)
  • おとり広告に関する表示(平成5年公取委告示第17号)
  • 有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公取委告示第3号)

自社で取り扱う商品やサービスに関連する告示についてはよく確認し、禁止されている内容を理解しておいてください。

景表法の規制内容2:景品類の制限および禁止

景表法の規制内容の2つ目は、景品類の制限と禁止です。

商品やサービスに過大な景品が付けられていると、消費者が過大な景品に惑わされて質の良くないものを購入してしまったり、商品そのものではなく景品による競争がエスカレートして商品の質が低下したりすることが懸念されます。
そこで、景品類の価額の最高額や総額などに関する規制が設けられています。

景品類の定義

景品表示法で規制される「景品類」とは、次の3つの要件をすべて満たすものを指します。

  1. 顧客を誘引するための手段として
  2. 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
  3. 物品、金銭その他の経済上の利益

これらに該当する「景品類」を提供しようとする際は、景表法の規制に違反しないよう注意が必要です。

共同懸賞

「懸賞」とは、くじやじゃんけんなどの偶然性や特定行為の優劣などによって景品類を提供することを指します。

懸賞には「共同懸賞」と「一般懸賞」とがあります。
このうち、共同懸賞とは複数の事業者が共同して行う懸賞です。
たとえば、商店街やショッピングモールの店舗、同業者が集まる団体が共同で行う抽選会などが、この共同懸賞に該当します。

共同懸賞の場合における景品類限度額規制は次のとおりです。

  • 景品総額:懸賞に係る売上予定総額の3%まで
  • 景品最高額:取引価額にかかわらず30万円まで

一般懸賞

一般懸賞とは、共同懸賞以外の懸賞です。
たとえば、抽選券やじゃんけん大会で景品類を提供するものや、クイズなどの回答の正誤により景品類を提供するものなどがこれに該当します。

一般懸賞の場合の景品類限度額規制は、次のとおりです。

  • 景品総額:懸賞に係る売上予定総額の2%まで
  • 景品最高額:
    • 取引価額が5,000円未満の場合:取引価額の20倍まで
    • 取引価額が5,000円以上の場合:10万円まで

総付景品

総付景品とは、一般消費者に対して懸賞によらずに提供される景品類です。
商品やサービスの利用者などにもれなく提供するもののほか、先着順で提供されるものなどがこれに該当します。

総付景品の場合の景品類限度額規制は、次のとおりです。

  • 景品総額:規制なし
  • 景品最高額:
    • 取引価額が1,000円未満の場合:200円まで
    • 取引価額が1,000円以上の場合:取引価額の10分の2まで

景品表示法のガイドラインとは

景表法は、法令だけを読んでもイメージが湧きにくいかもしれません。
そこで、消費者庁が公表している「景品表示法関係ガイドライン等」を一読することをおすすめします。

「景品表示法関係ガイドライン等」では、景表法の考え方や業種別などの運用基準が詳細に定められ、公表されています。
公表されているガイドライン等には、たとえば次のものがあります。※4

  • インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて
  • 「商品の原産国に関する不当な表示」の運用基準について
  • 「不動産のおとり広告に関する表示」の運用基準
  • 「有料老人ホームに関する不当な表示」の運用基準
  • メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について
  • 時間貸し駐車場の料金表示について
  • 消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について

自社に関連するガイドラインがないか確認し、関連しそうなものには目を通しておくとよいでしょう。

景品表示法違反になる事例

景表法の違反になる事例としては、どのようなものが挙げられるでしょうか?
ここでは、消費者庁が公表しているリーフレットをもとに解説します。※5

優良誤認表示の違反事例

優良誤認表示となる例としては、次のものなどが挙げられます。

  • 牛肉のブランドについて、実際には国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、あたかも「国産有名ブランド牛の肉」であるかのように表示すること
  • 中古自動車の走行距離について、実際には10万km走行した中古車であるにもかかわらず、あたかも「走行距離3万km」であるかのように表示すること
  • 予備校の合格実績広告において、実際には他校と異なる方法で数値化し、適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも「大学合格実績No.1」であるかのように表示すること
  • LED電球の明るさについて、 実際には全光束(光源が全方向に放出する光束の総和)が日本工業規格による白熱電球60ワット形の全光束を大きく下回っているにもかかわらず、あたかも「白熱電球60ワット相当」の明るさであるかのように表示すること
  • コピー用紙の古紙配合率について、実際にはコピー用紙の原材料に用いられた古紙配合率が50%程度であるにもかかわらず、あたかも「古紙100%」であるかのように表示すること

このように、品質や規格、その他の内容について著しく優良であると誤認される表示をした場合に、景表法の優良誤認表示規定に違反します。

有利誤認表示の違反事例

有利誤認表示となる例としては、次のものなどが挙げられます。

  • 携帯電話通信の料金について、実際には自社に不利となる他社の割引サービスを除外した料金比較であるにもかかわらず、あたかも「自社が最も安い」かのように表示すること
  • 商品の内容量について、実際には他社と同程度の内容量しかないにもかかわらず、あたかも「他社商品の2倍の内容量」であるかのように表示すること
  • 家電量販店の店頭価格について、競合店の平均価格から値引きすると表示しながら、その平均価格を実際の平均価格よりも高い価格に設定し、そこから値引きすること
  • 太陽光発電の余剰電力買取制度を利用した余剰電力の売却益について、 実際には電力会社による電力の買取価格は時期によって異なり、発電電力量も季節や天候などの条件によって変動するにもかかわらず、あたかも「月々〇〇円」の売却益を毎月安定的に得られるかのように表示すること
  • 実際には別途矯正装置の費用が必要であるにもかかわらず、あたかも、初診料や検査診断料などとして記載された「〇〇円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示すること

このように、価格や取引条件に関して著しく有利であると誤認される表示をした場合に、景表法の有利誤認表示規定に違反します。

景表法に違反するとどうなる?

景表法に違反すると、どのような事態が生じるのでしょうか?
ここでは、景表法に違反した場合に生じる主なリスクを3つ解説します。

罰則の対象となる

景表法に違反すると、消費者庁などからの調査がなされることとなります。
その結果、問題があると判断されると、消費者庁などによる指導や措置命令(同7条)の対象となります。

この命令に従わない場合は、行為者が2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科に処される可能性があるほか、法人も別途3億円以下の罰金刑の対象となります(同36条、同38条1項)。

課徴金の対象となる

景表法では、課徴金制度が設けられています。
課徴金とは、違反行為によって得た利益のうち一定額の納付を命じることで、違反を未然に抑止するために設けられている制度です。

刑事罰や罰則のみでは、違反行為によって高額な収益を得られる企業への抑止力としての効果は弱いでしょう。
極端な例ですが、違反行為によって100億円もの儲けを得られる場合、法人に対して3億円の罰金が処されるリスクがあったとしても、違反行為をすると判断されるおそれがあるということです。
そのような事態を避けるため、課徴金制度が設けられています。

景表法に違反した場合の課徴金は、原則として違反にかかる商品やサービスの売上額の3%です(同法8条1項)。
ただし、売上金計算の最長期間は3年とされているほか、課徴金額が150万円未満となる場合は課徴金を賦課しないこととされています(同法8条1項、2項)。

企業の信用が低下する

景品表示法に違反をして措置命令を受けると、消費者庁のホームページに企業名などが公表されます。
場合によっては、ニュースなどで取り上げられたりSNSなどで話題になったりしてしまうこともあるでしょう。
これにより、企業の信頼が失墜し、今後消費者から選ばれにくくなる可能性があります。

企業が景表法に違反しないためのポイント

景表法に違反すると、先ほど解説したとおりさまざまなリスクが生じます。
では、景表法に違反しないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

最後に、違反行為をしないために講じたい主な対策を3つ解説します。

法令のみならずガイドラインも読み込んで理解する

1つ目は、景品表示法の法令に加え、ガイドラインも読み込んで理解しておくことです。

景品表示法は、一定の業種などに限定して適用されているものではなく、すべての事業者にとって関係する法律です。
そのため、法律を知らずにうっかり違反をしてしまうことのないよう、法律やガイドラインをよく読んで理解しておく必要があります。

違反事例集を定期的に確認する

2つ目は、違反事例集を定期的に確認することです。

景表法の違反事例は消費者庁から公表されているため、この違反事例を定期的に確認しておくことをおすすめします。※6
実際の違反事例を確認して読み込むことで、具体的にどのようなことをしたら違反行為に該当するのかイメージを掴みやすくなるためです。

弁護士へ相談する体制を整えておく

3つ目は、不明点が生じた際に弁護士へ相談できる体制を整えておくことです。

業務を行う中では、自社の製品やサービスを消費者から選んでもらうため、さまざまなアピールをしたいはずです。
しかし、明らかに嘘の内容を記載するのは問題であると判断しやすい一方で、「これは違反なのか、問題ないのか」と悩んでしまうことも多いでしょう。

判断に迷った際に相談できる弁護士を確保しておくことで、独断で決行した結果景表法に違反する事態を避けることが可能となります。

まとめ

景表法の規制内容や違反事例、景表法に違反しないための対策ポイントなどについて解説しました。

景表法は、すべての事業者が理解し、違反しないよう注意すべき法令の一つです。
景表法に違反すると、罰則や課徴金の対象となるほか、企業の信用が失墜してしまうリスクも生じます。

消費者庁からくわしいガイドラインが出されているため、自社の業務に関連するガイドラインを理解したうえで、不明点が生じた際に弁護士へ相談できる体制を構築しておくとよいでしょう。

Authense法律事務所には企業法務に強い弁護士が多数在籍しており、景表法にまつわる相談や広告審査などをお受けしています。
景表法に違反しない体制を構築したい場合や、広告やパッケージが景表法に違反しないか確認したい場合は、 Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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