リーガルエッセイ
公開 2025.04.11

25年越しの再会

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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25年越しの再会

今回もリーガルエッセイと言いながら、リーガルな要素ゼロのお話です。

私は、過去の出来事を反省することはあっても、後悔という捉え方はしないようにしているつもりなのですが、やっぱり後悔してしまうこともあって、その中でも特に大きいのは、大学時代の4年間を大切に過ごしたかったなという後悔。

大学時代の4年間は、私にとって暗黒期でした。
闇の時代、黒歴史。
そんなワードがぴったりなくらい、本当に冴えない日々を送っていました。
どれだけ冴えなかったか語りだしたら本当に止まらなくなるくらい冴えなかったのです。
学校の授業にもまともに出ることができなかった。
サークル活動もできなかった。
友達を作ることもできなかった。
バイトをすることもできなかった。
将来について考えることもできなかった。
逆に、何してたんだろう。
なにをする気力も湧いてこなかった。
唯一記憶にあるのは、お昼ごろに起きだして、近所の図書館で、大好きなアガサ・クリスティの本や警察小説などを読み漁っていたことくらい。

どうしてそんな状態になってしまっていたかというと、ちょっと恥ずかしい理由があります。
それは、それまで地方の学校でがり勉優等生だった私が初めて都会に出てきて、大学で出会ったキラキラした学生たちに圧倒されてしまい、劣等感でいっぱいになってしまったからだったのです。
みんなファッション誌に掲載されているような洗練された装いで、初対面の人ともすぐに打ち解けて下の名前を呼び捨てで呼び合ったりし、絶妙な距離感で楽しそうに話をし、空いた時間があればどこかに遊びに行ったりしている。
授業だって、全部を真面目に受けている感じではなさそうなのに、外しちゃいけない授業はがっちり抑えていて、試験前には要領よく授業ノートを集めて勉強し、成績も優秀。
将来法曹を目指している人はすでに予備校に通って、そこでバリバリ勉強しているし、就職を考えている人は私には先輩たちから情報を収集しながら就職活動の準備をしている。

私は、高校生まで、親に洋服を買ってきてもらっていたくらいファッションに無頓着だったから、当時の写真を今見返すと、「この服、いったいどこで入手したんだろう‥」と恥ずかしくなるような格好をしていたし、家族以外の人と話をするときには、当然相手の目なんて見ることができないし、緊張してしまって、体調不良でもないのになぜか咳が止まらなくなっていました。
お昼ご飯の時間も苦痛で、だれかと一緒に食べるってことが恥ずかしくてできなかったから、一人でわざわざ学校から電車で何駅か離れた場所まで行ってそこにある食堂などで食事をするか、食べるのを我慢するか。
そんなことをやっているうちに、大学に行くことが苦痛になってしまって暗黒期へと突入することになったのです。
そんな中、3年生からゼミが始まったことをきっかけに、少しだけ学校にも行ってみようと挑戦してみたのですが、やっぱりすぐに挫折。
成人式にも行けなかったし、大学の卒業式にも行けなかった。

卒業後はしばらくだらだらしていたものの、卒業後1年ちょっとしたころに逃げるように実家に帰ってきて、そこで一念発起。
司法試験の勉強をがんばってなんとか合格し、検察官になり、そして弁護士にキャリアチェンジして今に至るのですが、私の中で消したくても消せない「大学時代、何もできなかった自分」というものがすごく大きなコンプレックスになっていて、卒業後も、大学時代の同期たちと連絡をとりあったり、会ったりすることなんてできずにいました。

先月末のこと、お互いの仕事がきっかけとなり、そんな暗黒の大学時代に同じゼミに所属していた仲間と連絡を取る機会がありました。
ろくに大学にも行っていなかった、人の目も見ることができずコミュニケーションもまともに取ることができなかった自分のことなんて覚えているわけないだろうと思ったのに、すごく懐かしそうにいろいろな話をしてくれ、近いうちにぜひ会いたいと言ってもらえたのです。
そして、ついに先日、約25年の時を経て再会し、ランチをご一緒することができました。
お互いの今に至る日々を話し、最近読んでいる本の話なんかもしました。
ちょっと真面目に仕事の話をしてみたりもしました。
そして、「学生だった自分たちが真剣に仕事の話をするなんてね」と笑ったりもしました。
それはそれは幸せな時間でした。
その場で、ゼミ同期の仲間たちのSNSグループにもつないでもらいました。
「私のこと、覚えている人いるかな・・・?」と思いながら、おそるおそる投稿すると、みんなが「麻理ちゃん、変わってない!」「元気そうでよかった!」などと次々に連絡をくれました。
そんな再会の帰りの電車内で、人目もはばからず、涙があふれて止まらなくなってしまいました。
私にとって、自分の人生の中で「なきもの」として葬り去ろうとしていた4年間でしたが、彼らと再びつながれたことで、私は、たしかにその時間ちゃんと生きていたんだと確信できた。
そんな思いに包まれました。
私が、自分とは違う世界で生きていると思っていたキラキラした人たち。
その後、もしかしたら、学生時代には想像もしていなかった悲しい思いをしたかもしれないし、頑張りが実を結んだこともあったかもしれないし、苦しい決断したこともあったかもしれない。
そうやってそれぞれいろいろなことと直面し、いろいろな形でそれぞれが年を重ね、今、それぞれ別の場所に生きているけど、また約25年の時を経て接点をもてたということがとても尊いことに感じられました。

そういえば、少し前に、ちょうど、高校時代の先輩や同級生と再会したり連絡する機会に恵まれたりもしたんだっけ。

過去に同じ時を過ごした人と再会して、これから新しい関係性を築く中で私自身の人生と今一度向き合い直す。
私にとって、今はそういうタイミングなのかもしれないなと感じました。
最近、ちょっとした詰まりのようなものを感じて息苦しく思うこともあったのですが、そんなときに、弁護士としても人間としても進化するきっかけをいただけたような気持ちでいます。

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