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12歳の虚偽自白
先日、ある報道を目にしました。
12歳の小学生が、警察から、同級生の陰部を触ったという疑いをかけられたことが始まり。
身に覚えのなかったその子は「わからない」などと答えたものの、警察官から、3時間以上もの取調べを受ける過程で、警察官から言われるままに「触りました」と書き、そこに署名してしまったとのこと。
その約1か月後、警察から保護者に対し連絡があり、被害申告の重要部分において虚偽の内容があった旨の説明があったとのこと。
私は、この件を、報道の限りでしか把握していません。
ですので、この件に関する具体的なコメントをすることは避け、一般的なお話をしたいと思います。
この記事を読んだとき、もしかしたら、「身に覚えがないのに、意に反してうその自白をしてしまうということなどあり得るのか?」と思ったかたがいらっしゃるかもしれません。
でも、身に覚えがなくても、うその自白をしてしまうということは、意外にもよく起き得ることだと思っています。
その背景はいろいろ。
たとえば、「もし、ここで事実を認める供述をしなければ、何かをうしなってしまうかもしれない」という思いで、身に覚えのない事実について認めるうその自白をしてしまうケース。
取調官から、「自白すれば釈放だけど、このまま事実を認めない場合は、逮捕することになるよ」などと告げられ、逮捕されることを免れようとうその自白をしてしまうといったことがあります。
また、長時間にわたり取調べを受ける過程で、心身ともに疲れ果ててしまって、警察官からの質問にどう答えていいかわからなくなってしまったり、自分の記憶がよくわからなくなってしまったりして、警察官から言われるままにうその自白をしてしまうということも。
そして、こういったことがあり得るかについては、取調べを受ける人の属性、そのとき置かれている状況などによってもずいぶん違うのだと思います。
たとえば、私は、弁護士として法的知識をもっていますし、性格的に、事実と違うことを言うことがあまり好きではないので、絶対に、うその自白などしないだろうなと思っています。
でも、もし、私が取調べを受けているとき、体調が悪かったりして体が疲れ切っていたら?
もし、大事な仕事があったり、子どもを家で留守番をさせていたりといった状況の中で取り調べを受けることになり、不安でいっぱいになっていたら?
そんなとき、取調官から、優しく、「あなたが『やりました』と一言言えば、あなたはすぐにお子さんのもとに帰れるよ。あなたのお子さんは今不安な気持ちでいるだろうね」なんて言われたら?
想像してみましたが、私は、自分の言い分を通せるか、まったく自信がないです。
ふだんは、自分の明らかな落ち度さえそれを認めることに苦労する性格で、しかも、職業が弁護士の私でも、心身の状態や捜査官からの言葉かけ次第では、自分が守りたいもののために、意に反してうその自白をしてしまう可能性を否定できないのです。
これが子どもだったらどうか?
もちろん、「子ども」とひとくくりにすることは難しいはず。
なので、すべての子をひとくくりにして、「子どもはこういうもの」とは言いません。
でも、大人に比べると、子どもには2つの傾向があるなと感じています。
1つ目は、ある過去の出来事に関し、必ずしも時系列に沿って正確な話をすることは難しい傾向があるんじゃないかなという点。
だからこそ、子どもから過去に起きた出来事について話を聴くにあたっては、子どもが日々次々に起きる出来事と前後関係が混同してしまったり、その過程で、後日見聞きした出来事によって記憶が変容してしまったりしている可能性というものも念頭に置いて慎重に話を聴く必要があるのだと思うし、何より、記憶が新しいうちに、できる限り早くその記憶を確認する必要があると思います。
2つ目は、答えが、質問のされ方に大きな影響を受ける傾向があるんじゃないかなという点。
この点は、私自身、子どもに何かを質問するときに気を付けている点でもあるのですが、「〇〇したの?」などというクローズドな質問の仕方をすると、子どもは、その背後にあるであろう私の思いを読み取ろうとしたり、または、自分の記憶や認識を正確に言葉にしようとすることを面倒くさがったりして、ただ「うん」などと答えることが多いように思っています。
結果、子どもの身に起きたことや子どもの感情を、ありのままに知ることが難しくなると思っているのです。
なので、子どもに対する質問は、「この日、どんなことがあった?」とか「あなたはどう感じたの?」などというオープンな質問の仕方を心掛けるようにしています。
これらは、警察において、子どもから事情を聴くにあたって肝に銘じる点だと思っています。
そして、それは、被害を受けたとされる子の申告内容を聴くにあたっても、加害をしたと言われている子の言い分を聴くにあたっても同じ。
子どもの供述には、そういった傾向が潜んでいるからこそ、通常以上に、子どもから事情を聴くということには慎重な配慮が必要になると思っています。
それに加え、小学生くらいの子が、保護者と離れて、警察署で警察官から何時間もあれこれと話を聴かれるとなったら、大人にはなかなか想像できないような不安、負担を感じるはず。
しかも、自分が何か加害行為をしたのではないかと警察から一方的に疑われているということを感じたら?
今、自分が法的にどんな手続きの渦中にいるのかもわからない子どもにとって、これからいったいどうなってしまうのだろうという恐怖でいっぱいになり、とても冷静ではいられないはずです。
もちろん、そのお子さんを見守る保護者のかたにおいても、その不安は大きいはずです。
自分のお子さんをめぐり、いったい何があったのか、何もわからないままに、「もしかしたら、わが子が何かしてしまったのか?」「今後、わが子はどうなってしまうのだろうか?」そんな思いで混乱してしまうこともあると思います。
そして、この話は、警察から話を聴かれるという状況に限ったものではありません。
学校で起きたトラブルに関しては、必ずしも最初から警察に話を聴かれるのでなく、学校側から話を聴かれるということが多いと思います。
そのようなとき、今回取り上げた子どもの傾向に関連して、同じようなことが起き得ます。
お子さんが学校生活などでトラブルに関わってしまったという話を聴き、今後に不安が生じたときは、早めに弁護士にお声かけください。
お子さんが、何かをしてしまったと疑われているけれど、お子さんには「自分はそんなことやっていないんだよ」とか「先生から言われた内容とは全然違ういきさつがあったんだよ」などという言い分があるとき。
お子さんが、学校や警察から話を聴かれる中で、お子さんの言い分を十分に聴いてもらえていないなと不安があるとき。
お子さんが、何らかの被害を受け、それを学校や警察に申告したいのだけど、お子さんの話がはっきりとしなくて、正しく受けた被害を伝えられるか不安があるとき。
いろいろな場面があると思います。
今起きていることを後で振り返ったときに、お子さんや保護者の方の心を曇らせる出来事とならないように、弁護士が、お子さんから話を聴き取ったり、学校や警察にその言い分を正しく伝えるお手伝いをしたりすることができます。
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