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受験期を支えてくれたリーガルドラマ
たとえば、5キロ以上のダイエットに挑戦しようというとき、その理由が、「健康体になりたい」だと全然続かないのですが、「2週間後の気合の入ったデートでこのワンピースを着たい!」だと、猛暑の中、連日腕立て50回やってのけることなんて容易だったりしませんか?
私は、断然そういうタイプです。
表向き美しい動機付けでは全然動けないけど、人前で言うことがちょっと恥ずかしく思えるような欲望のためならどんな苦行でもやってのけます。
先の見えない司法試験受験生時代もそうでした。
「社会のために働きたい」とか「法律で人のためになる仕事がしたい」などという志を掲げていたうちは、全然勉強する気にならず。
私が死ぬ気で受験勉強に取り組んだ10か月間、私を支えてくれたのは2つのしょうもない欲望でした。
1つ目については、欲望として不適切だと思うので、ここでさらけだすことは控えます。
2つ目が、当時大好きだった海外ドラマ「アリーmy love」のアリーのようなかっこいいファッションで、法廷を歩き回りながら訴訟活動したいという欲望。
まず、はっきり言っておきたいのは、これは、あくまでも、当時合格率2%台の超難関試験に人生をかけていたという相当追い込まれたギリギリの精神状態の中で抱いた欲望だということ。
今考えると、いずれの欲望も法律家になろうとする人間が抱くものとしてあまりにも不適切だという自覚はもてていて、法律家となった今は、そんなゲスな欲望は1ミリももっていないということです。
ただ、今でも、この「アリーmy love」というドラマはときどき見返しています。
前置きが長くなったのですが、このドラマのお話をしてみたいと思います。
このドラマ、ご存じない方も多いかもしれませんが、アリーというのは、キャリスタ・フロックハートが演じる女性弁護士。
彼女やその同僚たちが、日々事務所に舞い込む訴訟案件と向き合ったり、プライベートで勃発するトラブルを乗り越えようともがいたりする日常を描くストーリーです。
アリーから目が離せなくなる一番の理由は、きっと、アリーが、常に、だれに対しても、ごまかしがなくて、率直であるというところにあると思います。
不器用なほどに率直なので、しょっちゅう至るところでトラブルを起こしてしまう。
クライアントに対しても率直すぎるあまり、クライアントとの間でもよくトラブルになるのです。
でも、時間をかけて向き合って、結局、ちゃんと周囲から愛され、応援されている。
それは、彼女が、常に、誰に対してもごまかしがなくてまっすぐに向き合う人だからなのだと思います。
そして、オープンマインドなところも魅力的。
オープンマインドって、自分の思っていることをなんでもかんでも口に出すことであると思われがちですが、そうではなくて、ありのままの自分で表現することと同時に、他人のありのままもそのまま受け止める心の在り方をいうのだと思っています。
そして、それは言葉でいうほど簡単ではなくて。
ありのままの自分で人と接するには、自分自身の根底に、「どんな自分でもいいんだ」という自分を肯定する力とか、「この相手は、どんな自分でも受け止めてくれるんだ」という相手の器を信頼する力とかが必要だと思うし、そういうことができて初めて、他人のありのままもそのまま受け止めることができるようになると思っていますが、私にとってはここがなかなかの難関で、いまだに、アリーの在り方から学ばせてもらうことが大きいのです。
法律家としてのアリーから学ぶこともたくさんあります。
決して言語化が上手なわけではないし、ロジカルに端的にプレゼンできるわけではないのですが、とことんぶつかって理解したクライアントの思いを、具体的な個々の法律の条文ではない、もっと深い法律の根底に流れる思想のようなものを道具として使いながら、裁判官や陪審員に訴えかける最終弁論の数々は心を打つものばかりで「私も、こんなふうに法律に血を通わせるような弁論をしてみたい」と思わずにはいられなくなるのです。
「こうあるべきだ」という強い主張というよりは、「人間の弱さというものを優しく認め合うことで、立場を超えてみんなでこのトラブルを乗り越えていこう」と訴えかける温かい主張がなされることが多く、その発想自体が私にとってとても新鮮で学ぶところが大きいように思っています。
昔、同じくアリーにはまっている友達から、「君はアリーに似ているところがある。見た目は別としてね」と言われたことがあります。
狂喜乱舞したのですが、ふと、どこが似ていると思うのか気になって確認したところ、「自分のテーマ曲があって、ことあるごとに、心の中で流している曲をつい口に出して歌ってしまうところ。しばしば、別の世界にいってしまうところ。すべての感情が顔に出るところ。身振り手振りが必要以上に多く、大きいところ。恋愛スキルが小学生レベルなところ…」と延々続くのです。
自覚のないところも多く、私自身ではよくわからないのですが、たとえそれがそれほどうれしくない部分であっても、あこがれのアリーと重なる部分が自分にあるのだとしたら、それはやっぱりうれしいこと。
もう20年もあこがれの気持ちを抱き、迷いが生まれると立ち戻ることのできる存在があることは私にとって幸せなことだなと感じています。
そして、20年前、まともに睡眠をとることもできないくらい追い詰められた精神状態で、ひたすら司法試験の受験勉強と向き合っていた日々、アリーの最終弁論を見ては自分を奮い立たせていた自分の姿を思い出すと、今、私は、そのころの自分の必死さを上回る努力ができているのだろうか、その頃の自分に恥じない仕事をしているだろうかと見つめ直すことができます。
そんなふうに、映画、ドラマ、本などの中の登場人物から影響を受けた経験ってありませんか?
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