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いじめを見ている人たち
私は、小学校低学年のころは、学校でまともに口を利くことができない子でした。
クラスには、リーダー的立ち位置でみんなへの影響力が大きい女の子がいて、クラスのみんながいつもその子の様子をうかがっているふしがありました。
ある日、その子が、「今日は、なんかむかつくから、麻理ちゃんのことを1日無視しよう!」とクラスの子に呼び掛け、みんなが、私の方にわざわざ近寄ってきては、私のすぐ近くまで来るとぷいっとほかの方を向いて去っていくという、今考えるとむしろコントみたいなよくわからないことを仕掛けてきたことがありました。
当時は、別に話しかけてこられてもまともに返事もできなかったし、誰も話しかけてこないならそっちの方が気楽だわ、くらいに思っていたものの、「なんでそんなことされなきゃいけないのかな」という腹立たしい思いもありました。
その翌日、リーダーが風邪か何かで学校を欠席しました。
突然のリーダー不在に直面し、リーダーによる「こいつを無視しよう!」命令が、翌日であるその日もなお有効なのかどうか、クラスのみんなは判断しかねているようで、私に話しかけていいものかどうか、ところどころで相談している様子が見受けられました。
リーダー不在の中、この集団はどう出るのかとちょっとワクワクしながら推移を見守っていたところ、リーダーのコバンザメみたいに行動していた子が、私のところにきて、「今日は普通に話すから」と言い渡したのです。
リーダー不在の中、クラスのみんなは、どこか拘束から解かれたような晴れ晴れした表情をしていて、何をするにも楽しそうに見えました。
そして、さらに翌日、リーダーが登校してくると、コバンザメが、すぐに、「あいつへの無視は続行すべきか否か」とおうかがいを立てにいき、「続行」という指示が下った途端、またみんなはあのコントのような行動をとりだしました。
私は、当時、あれこれ妄想を繰り広げては、お話を作ることが大好きで、その物語の世界で夢中になっていたので、クラスのそんなしょうもない人間関係なんてどうでもいいと思っていたという記憶。
滑稽だとすら思っていました。
だから、正直、私自身いじめ被害に遭ったという認識は全然ありませんでした。
でも、今振り返って考えると、このころのことを結構鮮明に覚えていて、もしかしたら、私なりに寂しさとか孤独とか怒りとかを感じていたのかもしれないなと思います。
なかでも記憶に残っているのは、リーダーの子の言動よりも、その周囲にいた子たちの言動とか表情。
「リーダー以外の子たちの方が圧倒的に数が多いのだから、リーダー以外の子たちが力を合わせたら、リーダーに対して、思ったことをはっきり言えそうなものなのに、なんで、みんな一緒になってリーダーの顔色を見て行動するのかな」と不思議だったし、一気に意地悪なパワーが大きくなったようで、不気味でした。
そして、今さらにそのころのことを振り返ってみると、私にとっては、リーダー以外の子たちが全部「リーダーのとりまきたち」と見えていたけれど、中には、私に対して直接言葉を投げかけたり、リーダーの指示に従ったりしていたわけではない子たちも一定数いたのだろうと思います。
いわゆる「傍観者」と言われる子たちです。
いじめについて賛同もしていないけれど、いじめを把握しながらその状況をそのままにしている背景には、もし、自分がいじめをやめるように口を出せば今度は自分がいじめの標的になってしまうと恐れているとか、そもそも、クラス内で起きていることに無関心であったとか、いろいろなものがあったと思います。
だから、そういった傍観者となっている子たちを一方的に責めることはできないと思っています。
ただ、傍観者の子たちは、自分たちはいじめとは無関係だと思っていても、被害者の立場からすると、傍観されていること自体に絶望を深めたり、いじめの加害パワーがより大きく感じられたりすることがあることも事実。
傍観者の立場にいる子たちのちょっとした勇気がいじめ被害の状況を大きく変える力になることも。
いじめというものを考えるとき、傍観者の立場にある子に何ができるのか、という視点でも考えてみる必要があると思っています。
それは、加害者に直接物申すことばかりでなく、匿名で、先生に対して通報することだったり、親を通して、学校側に情報提供してもらうことだったり、もしかすると、いじめられている子に陰ながら寄り添うことだったり、そんな行動も大きな意味をもつはず。
直接お子さんがいじめ被害に遭っているご不安がない場合でも、お子さんが、クラスで目撃したいじめについて、自分がどう立ち回るべきか悩んでいる可能性もあります。
そんなとき、傍観者がいじめを助長するんだなどとプレッシャーを与えることはあまり望ましくないのだと思います。
まずは、クラス内でどんなことが起きているのか、それを見てお子さんがどんな思いになっているのか、どうしたいと思っているのか、行動することで不安に思うことがあるのかなどという点について、お子さんの思いをじっくり聴いてみたいですよね。
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