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夏休みに考えたい中学生の不登校
昨年10月に文部科学省から公表された資料によると、令和4年度の小中学校不登校児童数は約29万9000人となり、過去最多となったとのことでした。過去5年間においても、中学校の不登校児童生徒数もその割合も増加している傾向があるようです。
資料では、その背景として大きく2つ挙げられています。
1つ目が、長期化するコロナ禍による生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況が続いたり、学校生活に制限がかかり交友関係構築が難しい状況が続いたこと。
2つ目が、法律が、児童生徒の休養の必要性を明示したこと。具体的には、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」で、国などは、不登校児童生徒や保護者に、多様な学習活動に関する情報提供等を行うにあたっては、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえる必要があることが定められているのです。つまり、法律が、不登校の状態というものを否定的にとらえるのでなく、子どもにとってときに必要になり得るものだというスタンスをとったことで、不登校を選択する家庭が増えたのではないかという背景を指摘しているのだと思います。
たしかに、そのような背景があるかもしれません。
でも、ひとりひとりの子どもに焦点を当てたとき、不登校の状態になっているその背景をそう簡単には語ることができないように思います。
この資料には、国のとるべき対策として、不登校の子どもたちに学びの場を確保すること、小さなSOSを見逃さずにチーム学校で支援すること、学校の風土の見える化をすること、無気力、不安が要因となって不登校となっている子どもたちの存在を認識して調査することなどが挙げられていました。
その具体的内容が資料だけからはわかりませんでしたが、いずれも、その策を実現していく担い手が十分確保される必要があると思いますし、そのような体制があることを子どもたちや保護者が認識している必要があると思います。
具体的にどんな対策が講じられ、そのためにどんな準備がされているかわからないのですが、もし、学校が不登校について本気で何をなすべきか考えるのであれば、その対応は、自身が子どもや親に乗り移ったつもりでひとつひとつの場面を鮮やかに思い浮かべながら考えたほうがいいなと思うのです。
たとえば、子どもが「学校に行かない」と言ったとき、親は、朝学校に電話して、欠席の旨学校に伝えることになりますよね(今は、アプリなどでの連絡も利用されていますね)。
このとき、親の立場からすると、「先生方は、職員室で集まって朝礼をされているかもしれない。」「担任の先生方は、すでに各教室にいらして、登校する生徒たちを迎えているかもしれない。」「ほかにも欠席や遅刻の連絡が入り、お忙しく教室と職員室を往復されているかもしれない。」「部活顧問の先生は朝練に立ち会っているかもしれない。」そんな想像をしながら電話するのではないかと思います。
電話に出た先生に、担任の先生につないでほしいと伝えたら、やっぱりお忙しいようで、「〇〇はそばにいないので伝えておきますが、欠席の連絡ですか?」などと告げられることがあるでしょう。
「はい、欠席します」などと言うと、そのまま、「わかりました」で電話を切られることもあれば、感染症が流行する時期などは「体調不良ですか?」と質問されることも。
これに対し、「体調は問題ないのですが…」などと答えたとき、「承知しました。ご家庭都合のお休みですね」などと返されることもあるでしょう。
思い切って「体調は問題ないのですが、本人が行きたくないと申してまして」などと答えたとしても、そもそも担任の先生でないため、「わかりました。担任に欠席の旨伝えます」などと返されることもあると思います。
その後、担任の先生とお話しする機会がないまま翌朝を迎え、また、同じように学校に電話することに。
以降はその繰り返し。
そんなことって、あるあるなのではないでしょうか?
こんな毎日が積み重なっていったとき、親も、朝、いつもと同じ連絡をするのが苦痛になってしまって、思い切って、ある日、学校に欠席連絡をしなかった。
でも、学校にとっては、その子が学校をお休みしているのがすでに常態になっているので、「今日登校していませんが、何かありましたか」などという連絡を入れないということもあるのだと思います。
もちろん、欠席の連絡をしなかったのは、親として、学校に欠席連絡をすることに苦痛を感じてしまったから。
でも、欠席の連絡をしなくても、学校からは確認の連絡もないという事態を、とても寂しく、悲しく思ったりすることもあるのだと思います。
もちろん、子どものことを一番近くで見ていて子どもの状況を一番よくわかっている家庭の方から学校に子どもの状況を共有し、主体的に相談しないで「こちらの状況を察してきちんと対応してほしい」というのは、日々たくさんの子どもたちの対応をしなければならない学校に対して無理を強いることになり、決して本意ではない。
でも、学校に行きたがらず、部屋にこもるわが子に、昼食を準備したり、1日1日授業から遅れてしまうように感じて焦ったり、卒業後の進学先をどう考えたらいいのかわからず途方にくれたり、子どもの話を聴いたり、そんな日々を送る中で、仕事にも行けず、「なんで私ばかりがこんなに大変な思いをしなくてはいけないのか」という思いでいっぱいになっているとき、担任の先生、校長、教頭、学年主任の先生などがくださった1本の電話で「〇〇さんは、今、どんな状況ですか?」「親御さんにどんな話をしていますか?」「私たちも〇〇さんとお話しする時間がほしいのだが、まずはお電話で少しだけ会話ができませんか?」などという一言を聞いただけで、学校が、子どもの現状や気持ちを知ろうとする姿勢、それを踏まえて、子どもへの対応を一緒に考えていこうという姿勢が自然に伝わり、計り知れない力が湧いてくることってあると思うのです。
それまでは、「先生もお忙しいから、時間をとってもらうのは申し訳ないだろう」とか「ほかにも生徒たちはいっぱいいるのだから、相談したとしても学校も困るだろう」とかあれこれ考えて閉じ込めていた思いが一気にあふれてしまうかもしれません。
そもそも、一言で不登校といっても、その状態は子どもによって本当にさまざまで、そもそも、それに対して、子どもも保護者も「問題」との捉え方をしておらず、学校を巻き込んだ対策を講じる必要性がないということもあるのかもしれません。
でも、そうでないケースも多くあります。
対策を講じる前提として、学校も、子どもの現状を正しく把握する必要がある。
その一歩として、朝の欠席連絡をいかにして受けるか、というちょっとした場面においても、連絡してくる親、その背後で様子をうかがっているかもしれない子どもの存在をいかに具体的に思い浮かべるかということは、あまりにも地味なことのように見えて、とても大事なことなのではないかと思っています。
先日、ある新聞で、夏休み明けは、子どもたちの自殺が増加するという記事を読みました。
もしかしたら、お子さんが1学期学校に行くことができなくなってしまったご家庭で、「長期休み明けという新学期を迎えるタイミングを使って、なんとか登校できるようになってほしい」という期待をしつつ、この記事を読んで、いったいどう対応すればいいのかという悩みが生まれてしまったというかたもいらっしゃるのではないかと思います。
8月も半ばを過ぎ、9月が近づいてくるにしたがって、お子さんの表情が曇ってきて、そんなお子さんの様子を見て、これからどうなるのかとご不安を抱いていらっしゃるかたもいるかもしれません。
お子さんから聞いたお話をもとに、お休みのうちに学校と話し合いをしたいけれど、これまでの対応を見ていると、何かが変わるようにみえず不安なかた、学校に対してどんな相談をしたらいいかわからず、困っているというかた、そのご不安、一度弁護士にお話しください。
弁護士が、状況や学校に相談すべき内容を整理したり、学校との話し合いに同席したりする形でサポートすることができます。
もし、お子さんが学校に行きたいけれど行けないというその背景に、いじめ被害の問題が潜んでいることがわかったら、弁護士が窓口となって加害者側の対応をすることもできます。
お気軽にお声かけくださいね。
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