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「不起訴になったら、その事件では二度と起訴されない」はうそ
先日、13歳未満の女の子に対してわいせつ行為をしたとして、ある男性が不同意わいせつ罪で起訴されたと報じられました。
報道によると、その男性は、その事実に関し、一度不起訴になっていたとのこと。
一度不起訴になった件について、検察庁が改めて捜査して起訴したという経緯が報じられていました。
この報道を見たとき、「一度不起訴になったのに、また蒸し返されるってことがあるのか?」と疑問に思われたかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
ご自身やご家族に犯罪の嫌疑がかかり、逮捕、勾留されたものの、最終的に不起訴になったという場合、「これで起訴されることはなくなった」と捉えて安心していたのに…と思われるかたもいらっしゃるのではないかと思います。
たしかに、一度不起訴になった件が、再び捜査され、のちに起訴されるというケースはかなり少ないと思います。
でも、法律上、それが不可能なわけではないのです。
無罪判決は、裁判所が下すもの。
それが確定した場合、同じ事実について、再び起訴され、無罪の結論がひっくり返るということはありません。
憲法39条では「何人も、(略)既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。」とされています。
一方、不起訴は無罪判決と違って、裁判所が判断を下すものではありません。
あくまでも検察官による処分。
無罪判決と違って、「この件については二度と刑事責任を問われません」というルールは適用されません。
実際、私も検察官時代、一度不起訴にした事件について、1年以上経って再起して起訴したことがありました。
詳しく書くことはできませんが、不起訴後の被疑者の行動(たとえば、被害者に対して不誠実な対応をするとか、すぐに同種の犯行に及ぶとか)に鑑みた結果でした。
ですから、私は、不起訴処分をすると決めた被疑者に対し、必要だと感じたときには「この件については、こういう事情で現時点では起訴しません。でも、公訴時効の期間内であれば、再起して起訴することが可能になります。たとえば、今後のあなたの行動を見て、あなたについて本件も含めた刑事責任を問うべきだと判断した場合には起訴します」ということを伝えておくこともありました。
最初にお話ししたとおり、いったん不起訴になった事件が、その後再起されて起訴されるということはそんなにあることではありません。
でも、「不起訴になったら、もう二度とその件で刑事責任を問われることはない」という考えは誤りです。
このたび報じられた件が再起された背景にどのような事情があったのかはわかりませんが、今後、弁護士として、担当する事件について不起訴処分を獲得した場合、その意味を正しく依頼人にお伝えする必要があることを改めて認識しました。
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