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古畑任三郎を語る
私は、小学生のころ、父から、「刑事コロンボをぜひ見てほしい!最初に結末がわかるんだよ。そのあと、刑事がいかに犯人にたどりつくかが描かれているんだ!」と熱く語られ、テレビで放映されていた「刑事コロンボ」を半ば強制的に視聴させられました。
正直、「犯人がわかっちゃってるのに、それ以降のストーリーを見る意味って・・?」と思っていたので、見る前は全く興味がわかず。
でも、一度見てからは夢中になりました。
もういまとなっては、具体的なストーリーは何一つ覚えていないのですが、一見、すごくだらしなくて冴えない刑事が、犯人が残したちょっとした痕跡に気づき犯人にたどりつくその鮮やかさに魅了されたことだけは今でも鮮明に記憶しています。
だから、「古畑任三郎」を初めて見たときには、私の中で、「本場のコロンボ」と比較してしまうようなところがあり、楽しむことはできませんでした。
でも、コロンボと比較してはぶつぶつ言いながら、結局「古畑任三郎」を録画してこっそり見続け、シーズン3くらいのころには、すっかり大ファンに。
以降、録画を何度も見返したり、なぜかレンタルビデオで借りて見返したり、見逃し配信でも見返したりし続けているため、一時は、タイトルだけを見れば、犯人の手口、古畑がその手口をいかなる間接事実を拾い上げて積み重ね犯人にたどり着いたか、その過程で、今泉のいかなる言動が古畑にヒントを与えたか、犯人の真の動機は何だったのかなどを語ることができるというところにまで至りました。
そんな私が唯一あえて見ていなかったシリーズがあって、それが「古畑中学生」。
古畑の中学生時代をアイドルが演じるという設定を受け入れることができず、見ていなかったのです。
先日、その「古畑中学生」をたまたま見逃し配信アプリで発見。
すでに古畑任三郎シリーズを見尽くしてしまい、古畑不足になっていたこともあり、思い切って見ることにしました。
その結果は思いがけないものでした。
見終わった後、涙が止まらなくて、また、これを見た上でこれまでの古畑シリーズをすべて見ることでよりひとつひとつの深みが増すのではないかとも思えるようなものでした。
いかに心動かされたかを言葉で語ることはとても難しいのですが、教頭先生が古畑中学生に語った言葉は刺さりました。
ネタばれになってしまうといけないので、経緯などは省き、一部だけ引用すると、教頭先生が、古畑に「人間はうそをつく。その人間がなぜうそをついたのか、そこに真実は隠れている。行動に惑わされるな。心を読め」というようなことを伝えるのです。
この言葉を聴いたとき、私の頭の中には、大人になった古畑が、1つ1つの現場でいかに目の前の人、事実と向き合ってきたかという具体的な場面が思い浮かび、この教えが古畑の芯になっていたんだ!ということがすっと胸に落ちた感覚でした。
たしかに、古畑がトリックについて熱弁する中には、しばしば「古畑さん、ちょっとそれは無理があるのでは…」と思うものもあります。
でも、「普通の人ならこうするだろうと思われるのに、なぜ、この人はこの行動をとったのか、あえてこの言葉を発したのか」「いつもこういう行動をルーティンとしているこの人が、なぜこの日に限って違う行動をとったのか」などという考察は、私自身、検察官として、また弁護士として仕事をする上でとても大事なものだと思っています。
教頭先生が、自転車で走り去る後ろ姿は大人になった古畑と重なり、胸が熱くなりました。
最後、校庭に響き渡る吹奏楽部の演奏が、古畑のテーマ曲になり、それが、最後にいつものオーケストラ演奏になるところは本当にすばらしかった。
大人になった向島と古畑のツーショット写真が映し出されたときはただただ号泣。
私レベルの古畑マニアにかかれば、冒頭15分程度で結末までの大まかな流れは読めてしまったのですが、流れを読めてしまってもなお楽しめる、後半に向けて感情がぶわっと高ぶるすばらしい構成でした。
木村拓哉さん演じる久利生検事と並んで、もっとも好きなキャラクターが古畑任三郎。
私は、田村正和さんが演じる古畑任三郎を愛していたので、この仕事を続けていたら、いつか仕事で古畑警部とご一緒できるのではないかという期待を、今はもう絶対にかなわない夢なのだと頭では理解しつつ、どこかで今もなお抱き続けているような気がします。
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