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カスタマーハラスメント
先日、株式会社セガが公式サイトで「カスタマーハラスメントポリシー」に関する声明を出したと報じられました。
セガのホームページには、ハラスメント行為は、従業員の尊厳を傷つけ、職場環境の悪化を招く人権問題であるとし、すべての従業員を尊重し人権を守るためにガイドラインを設定したと記載されています。
そして、その行為によっては、取引の実施、カスタマーサービスの提供等をお断り、停止する場合があること、悪質と判断した場合には、法的措置や刑事手続きを含めた適切な対処を行うことを明記し、会社として「社会通念上相当な範囲を超えるものと考える行為」の例を示して列挙しています。
たまに、軽口として「それって〇〇ハラスメントでしょ」などという言葉が使われたり、テレビ番組などで、ちょっと聞いたことがないような「〇〇ハラスメント」という言葉を紹介しながら、世の中ではなんでもかんでも「ハラスメント」をつける風潮があるという感じで笑い話として取り扱われたりすることがあるように感じます。
この「ハラスメント」という言葉は、用いられ方により、ときに、実態を誤って捉えられてしまうことがあるように思うのです。
今回の報道に関しても、もしかしたら、「意識の高い会社が特別なことをしている」との受け止め方があるのかもしれません。
でも、カスタマーハラスメントへの対応については、法律を踏まえ、国が策定した指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)に基づく対応で、あらゆる会社にとって急務であると捉えるべきだと考えます。
今回は、カスタマーハラスメントについて、①カスタマーハラスメントとは?②それを放置した場合に会社に及ぶ影響についてお話ししてみたいと思います。
カスタマーハラスメントとは
カスタマーハラスメントは、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の中で「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義づけがされています。
これを整理すると、
- ・要求の内容自体が妥当性を欠くもの
- ・要求の内容自体は妥当といえるかもしれないけど、その要求を実現しようとする手段において悪質なもの
となるのではないかと思います。
要求の内容自体が妥当性を欠く例としては、たとえば、お店で買った商品には客観的に不具合がなかったのに問題があるかのように主張する行為などが考えられます。
要求の内容自体は妥当といえるかもしれないけど、その実現手段において悪質なものとしては、たとえば、店員のかたの対応に不適切な点があったものの、その指摘を受け、対応についてすぐに謝罪したにもかかわらず、何時間にもわたり店員に暴言を吐き、土下座を要求する行為などが考えられます。
カスタマーハラスメントは、その内容によっては、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪、名誉棄損罪、侮辱罪、業務妨害罪、不退去罪等の犯罪行為に該当する場合もあります。
カスタマーハラスメントを放置した場合のリスク
会社が、カスタマーハラスメントを放置した場合、いろいろなリスクが考えられます。
1つ目に考えられるのは、従業員への悪影響です。
常にストレスを抱え、これを会社に訴えてもだれも助けてくれないという状態が継続することにより、業務のパフォーマンスは悪化し、健康状態にも、さらに休職、退職につながる可能性があります。
2つ目に考えられるのは、他の顧客への悪影響です。
不当な要求行為をする顧客への対応にリソースが割かれ、他の顧客への対応が遅れたり、不当な要求行為自体を見聞きする他の顧客が不安や恐怖を抱いたりする可能性があります。
3つ目に考えられるのは、会社自体が被るリスクです。
従業員の離職等により、新たな人員確保、育成の必要性に迫られる可能性もあります。
また、「この会社は、顧客による悪質な要求行為、これによる従業員の人権侵害を放置する会社だ」「国による指針を無視する会社だ」という見方をされることにもなります。
さらには、カスタマーハラスメントの被害に遭った従業員から、会社が従業員の安全を確保しつつ労働することができるような必要な配慮を欠いたとして損害賠償請求される可能性もあります。
このようなお話をすると、「カスハラから従業員を守らなければならないことくらいわかってるよ。でも、会社として、具体的に何をしたらいいのかわからないんだよ」というお声を聞くことがあります。
たしかに、顧客という立場の人が絡むという点で、一方では顧客を大切にしなければならないという考え方がある中、ここから先は顧客に毅然とした対応をとって従業員を守らなければならないという線引きをする難しさがあったり、外部からの予想できないアクションにどう備えればいいのかという難しさもあったり、社内での出来事に比べ、SNS等を通じて顧客とのやりとりがさらされるリスクが高いという緊張感があったり、非常に難しい問題だと思います。
具体的な問題が生じた場合の対応のみならず、事前にどんな準備をしたらいいのか、という点についても弁護士がご相談に応じます。
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