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新型コロナウイルス対策の一環 「補償金免除」?
4月7日の新聞で、「授業目的公衆送信補償金等管理協会」が、学校の遠隔授業で教科書などの著作物を使う場合に支払うべき補償金を、今年度に限り無償にするという方針を決めたと報じられました。
この報道でいう「補償金」とはなんのことでしょうか?
対面授業=了解不要 オンライン授業=了解必要
授業が、対面授業、つまり、教室に教員と生徒がいて行われる通常の授業であるなら、そこで教科書等を利用することに著作権者の了解はいりません。
このことは、著作権法で定められています。
そして、著作権法では、対面授業で使われている教科書を、別の遠隔地にある会場に向けて同時中継する場合は、やはり著作権者の了解はいらないとされています。
しかし、これが同時中継でなく、対面授業を録音、録画したものを、後日改めて別の会場に向けて送信するとか、主会場がなく、直接遠隔地に送信して授業を行うとかいう場合は、著作権者の了解が必要になるとされています。
つまり、学校には生徒がいない状態で、教員が直接遠隔地の生徒向けに授業を行うオンライン授業の場合には、原則として、その授業で教科書等教材を使うにあたり著作権者の了解をもらう必要があるのです。
著作権者の了解をもらうかわりに補償金
オンライン授業で教科書等を利用しようという場合、著作権者の了解が必要となると、その負担は大きいですよね。
教育現場からも、かねて、「他人の著作物を利用した教材の紙での配布は認められるのに、インターネット経由は認められないのでは、著作物の利用を控えてしまう」という不満の声がありました。
これを受け、平成30年5月に著作権法が改正されました。
対面授業との同時中継でないオンライン授業でも、了解なくして他人の著作物を利用した教材をインターネット経由で送信することができる選択肢ができたのです。
そして、その選択肢をとる場合には、教育機関の設置者である教育委員会や学校法人等が、「授業目的公衆送信補償金等管理協会」というところに、補償金を払うことが必要になりました。
今年度は補償金ゼロ
改正法が公布されることとその法律が実際に適用されてスタートすることとは別です。
法律の公布というのは、成立した法律を広くみなが知ることができる状態にすることです。
実は、この改正著作権法は、公布された平成30年5月25日から3年を超えない、政令で定めた日からスタートすることとなっていました。
スタートを待つ中で、この新型コロナウイルスの感染拡大の事態となったのです。
大学などは、この補償金制度を早くスタートさせてほしいと協会に要請していました。
そして、3月25日には、文化庁著作権課が、協会に対し、多くの大学においてオンライン授業等が始まると見込まれる4月下旬までに「授業目的公衆送信補償金制度」をスタートさせるようにと要請しました。
さらに、その後、自民党から、令和2年度に限って特例として補償金を無償とする提言が出されました。
このような動きを受け、協会は、特例として、今年度に限り、遠隔教育等において無償で著作物を利用できるという内容で文化庁長官に対して補償金額の認可申請を行うことに決めたのです。
そして、先日、いよいよこの改正著作権法が4月28日からスタートするという政令が閣議決定されたと報じられました。
今後、新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えないなか、ますます、オンライン授業をとりいれる学校は増えていくと思います。
このたびの決定で、教材利用のハードルが下がったことにより、ますますその動きは進むものと思われます。
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