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弁護士の仕事の仕方について思うところ
今回は、リーガルな要素は控えめです。
弁護士の仕事の仕方について取り上げてみたいと思います。
「石子と羽男」1回目の放送を見て、「うらやましい!」と思ったのは、中村倫也さん演じる弁護士の仕事の仕方を見たからです。
ドラマの中では、弁護士が、家に仕事を持ち帰り、遅くまで証拠映像を見ているシーン、そして、それを見ているうちにピンときたその直感を確かめようと深夜家を飛び出してクライアントの家に行くシーン、フットワーク軽く、気になる現場に行くシーンなどがありました。
これって、弁護士ドラマではそれほど珍しくないシーンですよね。
「弁護士って本当にこんな仕事の仕方をするの?」と質問されることもあります。
この仕事の仕方は、本当に人それぞれだと思います。
どのような仕事の仕方をするかは、信念による違いもあるかもしれないし、それぞれがいる環境による違いもあるかもしれません。
私は、今回のドラマの場面を見ていて、猛烈にうらやましくなりました。
私も、昔、検事だったころは、家庭もなく、独り者で、自分の都合ですべての時間を使うことができました。
事件記録の山を、そこに埋もれるように読み漁り、証拠の映像を食い入るように見ていたら終電を逃してしまったなんていうことが日常でした。
被害者の方の体に残る傷の形が気になり、担当した医師に話を聞くためアポをとろうとしたら、「終日手術だから、2時に病院に来てください」と言われ、「かしこまりました。では2時間後に伺います」と言ったら、「いやいや、午前2時ね」と言われ、午前2時にタクシーで病院に行き、医師の当直室で立ったまま話を聞かせてもらったこともありました。
事件記録を見ても、現場の状況がイメージできず、被疑者の供述に納得することができず、犯行時刻の現場の状況が見て確認するため、(言ったら止められてしまいそうだから)上司や立会事務官には内緒でこっそり深夜の現場に行って、違和感の正体を解明しようとしたこともありました。
とにかく、私生活など皆無に等しく、24時間365日事件のことで頭がいっぱいだった日々でした。
案件について、ちょっとでも違和感を感じたり、深掘りしたいと思ったりしたら、寝食忘れ、夜を徹して証拠とにらめっこしたり、事件記録を読み漁ったり、たとえ深夜であっても事件現場に駆けつけて調べたいことを調べる。
当時は、「こんなことやっていて、私の人生、いったいどうなってしまうのだろう。人としてこんな生活でよいのだろうか」などと悩むことがあったようななかったような。
悩んでいるようなふりをして、やっぱりそんな毎日に夢中になっていたように思います。
でも、今の私は、私自身は寝なくても食べなくても構わないのですが、子どもにご飯を作ったり、子どもが寝る時間になったら部屋を暗くして一緒に寝たり、お休みの日には仕事を離れ、お出かけしたりしなくてはいけない。
とてもとても、深夜に現場に行って違和感をぬぐうなんて仕事の仕方はできないのです。
役として演じている中村倫也さんがうらやましくて、「私も、昔のように、そんな仕事をしたい」という強い思いでいっぱいになってしまったのです。
でも、冷静に考えてみれば、今のこの生活は、だれに強要されたものでもなく、私自身が選択したことであって、この生活の中で生まれた感性や集中力は昔の自分にはなかったものだし、時間や環境に制限があるからこそ「じゃあ、どうしたら実現できるか」と戦略を練るスキルも磨かれてきたわけだから、やっぱり、今のこの状態には感謝しているし、この選択を心から肯定できる気持ちになっています。
この生活の中でだって、違和感とひとつひとつ向き合いながら、丁寧に納得いく仕事をすることはできる。
少しだけやり方が変わっただけで、自分が一人一人のクライアントや、案件と向き合う姿勢は何も変わらないのです。
だから、ドラマの中で、昔の自分のような仕事の仕方を心底うらやましいと思いつつ、今の自分には何ができるのかを真摯に考えていきたいなと改めて思いました。
最後になりましたが、ドラマの中で、パワハラ上司が、部下に対して、休日深夜問わず連絡をし、即レスしないと叱責するというくだりがありました。
1回目の放送は、内容盛りだくさんで、パワハラ問題にも切り込むものでしたね。
私のような仕事の仕方をしていると、休日深夜も隙を見ては仕事をしがちで、無意識のうちにほかのメンバーにメールをしてしまうことがあります。
もちろん、それに対してレスがないことは前提ではあるものの、受け取る相手の立場に想像力をめぐらすと、「レス不要」とは言いながら仕事の連絡が来ること自体苦痛になるかたも多いかもしれません。
パワハラを引き起こす大きな要因となっているのはコミュニケーション不足やパワハラに対する知識不足であるなどと言われることがありますし、それはそれで事実だと思いますが、それらの大前提として、考え方が違うかもしれない相手の立場、思いへの想像力がなにより必要なのだと感じています。
2回目の放送にも注目していきます!
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