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犬をけしかけて警察官をかませたとして逮捕
先日、警察の職務質問を受けた男性が、自身の飼い犬をけしかけて警察官の腕や足をかませたとして、公務執行妨害罪で逮捕されたと報じられました。
逮捕された男性は、「犬が勝手にかんだだけ」と否認しているとも報じられています。
この否認を報じるニュースに対し、インターネット上では、たくさんの批判のコメントがなされていました。
その多くは、「勝手にかんだなんて言い訳が通用するか?犬を管理するのは飼い主の責任だ」などというもの。
たしかに、それはもっともな考え方だと思います。
飼い犬を管理するのは、飼い主の責任だということ自体はそのとおりだと思います。
ただ、だからといって、当然に、公務執行妨害罪が成立するかというと、そこにはハードルがあると考えます。
公務執行妨害罪は、公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行または脅迫を加えることにより成立します。
報道されている件では、男性が、犬をけしかけて、警察官にとびかからせたこと、または、かみついたことをもって暴行と評価しているのだと思います。
ただ、そのような評価には少し疑問が残ります。
なぜなら、「犬をけしかける」という行為が具体的にどのようなものかわからないのですが、その行為をすれば、その後の流れ、つまり、犬は、そのけしかけに応じて、男性の意図したとおりに警察官にとびかかったり、かみついたりするのである、というところが因果の流れとして当然予定されているといえるのだろうかというところに疑問があるからです。
違った言い方をすると、果たして、男性による、「犬が勝手にしたことである」という訴えについて、「そんなことはない」といえるだけの証明ができるのだろうかと疑問に思うからです。
男性が、たとえば何らかの武器を手に持ち、それで警察官をたたけば、それは問題なく公務執行妨害罪にあたると思います。
でも、「犬をけしかける」という行為が、必ず、犬が警察官にとびかかる、または、かみつくという結果に結びつくとまでいえなければ、男性が武器をもって警察官をたたく行為のように、男性自身が意図して行った暴行として評価できないのではないかと思うのです。
だから、私は、一般的なケースとして考えると公務執行妨害罪の成立は困難なのではないかと思います。
ただ、個別事情に照らして、男性が、その犬に対して、具体的にこういう動作をすれば、必ず犬は標的にとびかかったり、かんだりするという訓練がされていて、そのけしかけ動作によるかみつき行為等の結果発生蓋然性が極めて高いというような場合は別の評価ができるのかもしれませんね。
もっとも、仮に公務執行妨害罪が成立しなかったとしても、過失傷害罪は成立する可能性がありますし、犬の飼い主としての民事的な損害賠償責任も負う可能性があるといえ、何らかの責任を問われる可能性はあります。
今後の捜査に注目します。
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