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壁ドンのリスク
「壁ドン」という言葉、ご記憶ありますでしょうか?
もう10年近く前になると思いますが、当時、流行語大賞にまでノミネートされた言葉です。
女性を壁際に立たせた上で、向かい合って立つ男性が、女性の顔のすぐそばの壁に手をドンとついて女性との距離を縮める動作、とでも表現すればいいのでしょうか。
なぜこんな言葉を思い出したかというと、ちょっとびっくりするようなニュースを耳にしたからなのです。
先日、内閣府男女共同参画局が主催する「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」において、ライフスタイルが多様化することに起因する課題について話題となったとネットニュースで報じられていました。
それによると、その際の議論で、恋愛支援を教育に盛り込む旨の提案がなされたとのこと。
たしかに、教育の中に、恋愛講座が存在していたら、私も少し違った人生を送っていたのかもしれないなとも思います。
そこまでは、そんな教育があってもおもしろいなと思いながら読み進めたのですが、その教育の例を見て仰天したのです。
その研究会での話し合いの中で、壁ドン・告白・プロポーズの練習を教育として組み込むという案が出たと報じられていたからです。
そもそも論で大変恐縮なのですが、これを読んでくださっているかたのなかに、果たして、プライベートで壁ドンをして、または、されて、それが功を奏して後の恋愛につながったというかたは存在しますでしょうか?
恥ずかしながら、こんな私でも、壁ドンをされた経験がないわけではないのです。
昔、私の周りに、隙あらば、手あたり次第、だれかれ構わず見境なく壁ドンを含むアグレッシブな求愛行動に出る男性がいたからです。
ただ、やはり、そんなに弱弱しい人間であるとの自覚がない私でも、やはり、不意の壁ドンは恐怖以外の何物でもないのです。
これまで楽しく話していたかと思ったら、突然壁際に追い込まれ、耳元で壁を必要以上に音高く叩かれる恐怖。
もしかしたら、それは相手に対する自分の感情によってとらえ方が変わるものなのかもしれません。
功を奏するパターンもあるのかもしれず、単に私がそのような経験に欠けているだけなのかもしれません。
でも、恋愛講座の一環として、壁ドンのやり方を指導するという教育はやはり見当違いではないかと思うのです。
この、「壁ドンはそもそもその効果自体が疑わしいのではないか。成功は非現実の世界でのみ起こり得るものなのではないか」という持論以外にも、これを教育として推奨するには懸念があります。
それは、この壁ドンが犯罪に当たり得るからなのです。
考えられるのは、暴行罪、脅迫罪などです。
まず、暴行罪と聞くと、「体が触れているわけではないのに暴行罪は成立するのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論として、暴行罪が成立し得ます。
暴行罪というのは、人に対し有形力を行使すること。
そこに、体の接触は必要とされません。
過去の裁判例でも、被害者がいる狭い部屋で、刀を振り回す行為が暴行と評価できたものがあります。
女性を壁際に追い込み、そのすぐそばに向かい合って立ち、壁を手でたたきドンと音をたてながら距離を縮めるという行為は、まさに、狭い部屋で刀を振り回すのに等しい相手に対する有形力の行使であると考えます。
また、その際、壁ドンと同時並行して「おれと付き合わないとどうなるかわかってるな」なんてことを口にしたら、それは、人の身体への危害を告知しているとも評価でき、脅迫罪に当たり得るのです。
漫画やドラマで繰り広げられている壁ドンは、あまりにも美しく、された側が、暴行罪だの脅迫罪だので被害申告をしようなどと考える余地はないものです。
しかし、これが現実世界で行われた場合、必ずしも漫画等の世界と同じわけにはいかず、その効果自体が本当にあるのか、そこに疑問をさしはさむ余地もある上に、犯罪に該当する可能性すらある。
壁ドンを恋愛教育の中で伝える際には、ぜひその点もしっかり説明していただきたいと思います。
最後に、恋愛相談対応はかなり思い入れのある分野なので余計な話をします。
私がもしこの研究会のメンバーだったら、第一に、自分で自分を大事に扱うこととその具体的方法、第二に、人に幸せにしてもらう、ではなく、自分で自分を幸せにすることの重要性とその具体的方法、第三に、コミュニケーション術を柱とし、恋愛講座カリキュラムを考えるべきじゃないかと思います。
壁ドンやら告白の仕方やらそのような小手先のスキルでは根本解決不能だというのが持論です。
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