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被疑者の過去に関する報道の在り方について思うこと
私は、報道の在り方について、常に批判的な見方をしているわけではありません。
むしろ、いつも学ばせて頂いています。
自身がメディア出演の機会を頂くことも多く、いろいろなメディアに携わる方々と直にやりとりをさせて頂くたびに、皆さんが、社会的な注目を集める事件について、いかにしてその真相に迫るか、いかにして再犯を防止することができるか、などという視点で真摯にお仕事をされているのを目の当たりにし、身が引き締まる思いでいます。
ただ、先日、たまたまつけたテレビで、持続化給付金不正受給事件の指南役グループの一員として逮捕された人の一人について取り上げられているのを見たとき、胸が苦しく思うことがありました。
その被疑者は、自身が報酬を受け取ったことや違法性の認識について否認していると報じられていました。
その上で、その被疑者がどのような子ども時代だったのかということを取り上げていたのです。
中学校、高校時代に同じ学校だったという人が何人かインタビューに答え、「今、この取材まで、あの人がこの事件の人だとわかりませんでした」「あの人は、中学のとき、運動会で応援団長をしていて、リーダーシップをとれる人でした」「ほかにもいろいろな役員を務めて後輩たちのあこがれでした」などということを語っていました。
それとともに、その人たちの提供によるのか、運動会のときと思われる写真や卒業アルバムの写真などが何枚か、インタビューの間、長い時間にわたって映し出されていました。
私は、この報道を見ていて、ぐっと胸が締め付けられました。
まず、大前提として、この被疑者は、逮捕されましたが、事実を否認しているとのことです。
そして、誰もが、刑事裁判で有罪が確定するまでは、無罪が推定されるのです。
そんな中、そもそも実名報道をすべきなのかどうかというところも本来慎重に考えなければならない点ではあると思うのです。
ただ、私がなにより気になったのは、この被疑者の中学校高校時代の写真を示しながら、当時のエピソードを語る必要がどこまであるのだろうかということ。
たしかに、ある犯罪を犯したということを前提として、なぜそのようなことになったのか、被疑者の幼少時代に遡り、深掘りしていくことはそれ自体とても大事なことだと思っています。
動機の解明、犯行に至る経緯、更生のための道筋などを考えるにあたり、避けることのできないことだと思っています。
ただ、それは、検察官、警察官、弁護人、裁判官がそれぞれの関わる過程で被疑者、被告人とともに考えていくことであると思うのです。
少なくとも、好奇の目にさらされながら、メディアや視聴者らによってなされるべきものではないと思うのです。
私は、この被疑者が、報道されている事件に関与していたのか、関与していたとしてどのような関わり方をしていたのか、その行為の中に犯罪と認めるものがあったのかはわかりません。
でも、真に犯行に及んでいたかどうかに関わらず、誰もが、被疑者がかつて真剣に過ごしていた日々を勝手に引っ張り出してきて、今起きている事件と紐づけて勝手な憶測をしたりしては絶対にいけないと思うのです。
何もしらない人間が、人の人生を勝手に都合のよいように切り取ってしまってはいけないと思うのです。
私自身、自分では軸をもって仕事をしているつもりです。
でも、やはり人間だから、どうしても感情に動かされてしまうこともあります。
そんな未熟な人間なので、もしかすると、報道されている事件の内容などによっては、もしかしたら、被疑者の過去に関する報道の在り方への考え方が今回とは違ってくるのかもしれないな、とも思います。
ただ、やはり、私は、たとえどんな事件の報道であっても、被疑者が、中学生時代、運動会で汗をかいていた写真は出てくるべきではないと思うし、見ていて胸が苦しくなるのです。
皆さんは、どうお考えでしょうか?
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