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山口県誤振込事件 電子計算機使用詐欺罪で逮捕
山口県内で起きた、コロナ給付金の誤振込事件で進展がありました。
先日、誤振込を受けた男性が、逮捕されたと報じられたのです。
その逮捕罪名は、電子計算機使用詐欺罪。
この罪名、このたびの報道で初めて聞いたというかたも多いのではないでしょうか?
まず、電子計算機使用詐欺罪とはどのような犯罪なのかについてお話しします。
電子計算機使用詐欺罪という罪名には、「詐欺」という言葉が入っています。
詐欺罪と何が違うかというと、詐欺罪が、「人」をだます犯罪であるのに対し、電子計算機使用詐欺罪は、「人」をだますのでなく、物を操作することによる犯罪である点です。
もう少し具体的に説明すると、電子計算機使用詐欺罪が成立するのは、
- 電子計算機に
- 虚偽の情報または不正な指令を与えて財産権に関わるうそのデータを作り
- 財産上不法の利益を得る
などすること。
①でいう電子計算機というのは、たとえば、PCとかスマホとかのことです。
つまり、この犯罪は、コンピューターにうその情報を入力してうそのデータを作り、これによって、財産上の利益を得ることにより成立するのです。
次に、この犯罪が成立する点について、法的に何らの問題がないのかという点について少しだけお話ししたいと思います。
報道によると、誤振込を受けた男性が、誤振込のあった金額の一部について、ネットバンキングを利用して、オンライン決裁サービス会社にその金額を振り替えたことが電子計算機使用詐欺罪にあたるとして逮捕された旨報じられています。
この行為について、電子計算機使用詐欺罪が成立することは、法的に全く疑いの余地のないことか、というと、考え方が大きく分かれるところだと思います。
考え方によっては、この犯罪は今回のケースで成立しないという考え方も十分あり得ることなのです。
犯罪の成否に関する考え方に大きく影響するのは、誤振込された預金債権が、振り込まれた時点で振り込みを受けた男性のものになっていたかどうかということに関する過去の裁判例です。
過去、ある民事事件に関し、最高裁で、誤振込された預金債権は、誤振込であったとしても、誤振込を受けた口座名義人に成立していると判断されたものがあります。
つまり、この考え方によると、誤振込であったとしても、誤振込を受けた口座名義人の引き出しがいったん正当と評価されることになります。
この判断を前提にしたら、今回、男性が、自分の口座に振り込まれたお金を、引き出したり、他に送金したりする行為は正当と評価されるわけですから、電子計算機使用詐欺罪の要件となる「虚偽の情報」を満たさないのではないかと考えられるわけです。
男性は、正当に送金のための操作をしたわけで、何らうその情報など入力していないよ、という考え方です。
一方で、別の考え方もあり得るところ。
たとえば、刑法的な評価は、民事事件における評価とは別に考えられるべき、というもの。
難しい話ですよね。
この点をめぐり、専門家でも意見が分かれるところだと思いますから、きっと逮捕するかどうかに関しては、議論があったところだろうと思いますし、今後の処分に関し、検察の判断にも注目が集まるところだと思います。
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