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園児置き去り頻発の記事を読んで
先日、報道で保育園での保育の最中に園児の姿が見えなくなり、その後、亡くなった状態で見つかったといういたましい事件を知りました。
市は、検証委員会を立ち上げ、原因究明を行うなどと報じられていました。
そして、その記事の隣には、「園児の公園置き去り頻発」との記事が掲載されていました。
驚いたのは、「頻発」と言いながら、実は、園児の置き去り事案の発生状況を把握していない自治体もあり、対応にばらつきがあると指摘されている点。
どうして自治体が置き去り事案の発生状況を把握していないのか?
それは、保育園から自治体への報告ルールに原因がありそうです。
平成 29年に内閣府より地方自治体あてに、「特定教育・保育施設等における事故の報告等について」と題する通知がありました。
そこでは、子どもを預かる特定の施設が自治体に報告すべき事案は、①死亡事故②治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故等とされています。
逆に言えば、このような事故にあてはまらない事案をいかにして自治体が把握するかについては各自治体に委ねられているということ。
厚労省では、実態を把握するため、いくつかの自治体からヒアリングを開始したとのことですが、重篤なけがなどの状態に至っていない事案の報告をするよう求めている自治体は多くないとのことで、自治体からは、ただでさえコロナ禍で保育現場に負担が大きくなっているのに、さらに業務が増すような報告を求めづらいという声もあるとのこと。
たしかに、保育現場の負う負担がいかに大きいかということは、今の現場を直接見ているわけではない私にも多少は想像できます。
ただ、自治体が、そのような多大な負担を負っている保育現場にさらなる負担をかけないように、園児置き去り事案等の報告を求めることを躊躇することについては、危機感を感じます。
保育現場に過剰な負担がかかっていると認識するのであれば、その解消手段を考えるべきなのであって、負担がかかるであろうことを理由に報告を求めることを控えるということはあってはならない事態だと考えます。
置き去りにされた園児が重篤なけがをしたか否かというのは、単なる結果であるからです。
たまたま結果が生じなかったその置き去り事案をうやむやにすることが、次は、園児の命に関わる事故を招く可能性があるからです。
しかも、置き去りにされた園児が果たしてその間にけが等の被害を受けなかったかということも簡単に判断できないはずです。
まだまだその間に起きた出来事を言語化することなど難しい幼い園児が、置き去りにされていた間に、深刻な被害に遭っていなかったかどうかということも考えなければならないはず。
公表されている事故発生時のガイドラインを見ると、事故発生時の対応としてかなり細かい事項が記載されています。
報告期限はいつになるのかということはもちろん、聴き取った内容については後で修正することができないようボールペンをもって書くべしなどということまで書かれています。
事故発生時の対応をマニュアル化して、いざというときそれに沿った的確、迅速な対応ができるようにすることはもちろん必須だと思います。
ただ、そのガイドラインを見ていて思うのは、子どもの身の安全を脅かす出来事が絶対に起きてはならないというおおもとの目的がどこまで意識されているのかという点です。
重大事案が起きたときにどう対処するかという点と並行し、何よりも、そのような事案が起きないために何をすべきなのか、という視点が圧倒的に足りないと感じざるを得ません。
これは不祥事予防の本質だと思いますが、何よりも大事なのは、大きな取り返しのつかない不祥事が起きる前に、不祥事の芽を、少しでも早く認知し、摘み取ることだと考えています。
考えるべきは、保育現場が、園児が重大なけがなどを負う事態に至らなかったものの、本来あるべきでない置き去り事案が起きてしまったときに、直ちにそれを自治体に報告するという仕組みを構築することだと思います。
芽のうちに事案を把握できれば、自治体や施設が、どんなときに置き去り事案が起きやすいのか、その要因をなくすために何をすべきかを早急に検討でき、いたましい事件を防ぐことにつながるはず。
そのためには、施設から自治体への報告ルートのみならず、施設内での報告が確実になされる必要もあるはずです。
ミスを芽のうちに報告することは、非難されることではなく、さらなる大きな事故を防ぐために歓迎されるべき行動であるという考え方が組織内で共有されることがすべての基本になると思います。
現場を知らないきれいごとのようにも聞こえるかもしれません。
でも、朝、保育施設に預けられた園児たちが、元気に、安全に親元に帰ってくることが当たり前であるためには、まず考えるべき問題だと思います。
今後もこの問題に注目していきます。
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