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「元彼の遺言状」第1話~釣りに連れて行って風邪をひかせて死亡させたら殺人?~
「元彼の遺言状」第1話、放映された日の深夜に見逃し配信1.75倍速で視聴しました。
本当は、ストーリーに踏み込んで、断片的に見える事実をピックアップして、それらの持つ意味を分析したり、今後の展開予想をしたり、元検事としてのスキルを発揮できればと思っていたのです。
でも、もともと、私は、登場人物が5人を超えてしまうと、それぞれの人物の名前、職業、立場、人物同士が持つ利害関係などがよくわからなくなってしまい、図にして書いて整理する必要に迫られます。
だから、大好きなアガサ・クリスティーの小説を読むときにも、必ず冒頭をチェックして、登場人物の人数ができる限り5人を超えないものを選択しているのです。
昨日も、登場人物をA4の紙に書いていこうとしたのですが、さすがに1.75倍速でストーリーを追いつつその内容を整理して図にするだけのパワーが残っておらず、頓挫しました。
そこで、今回は、第1話全体の流れの中で、間違いなく本質的でない部分ではあるのですが、一部だけピックアップしてお話ししてみたいと思います。
大泉洋扮する篠田氏が、自分が、森川栄治氏を殺害した犯人として、遺言により相続する権利があるといえないか考察する場面。
自分が、ぜんそくの持病を持つ森川氏を釣りに連れて行って、風邪をひかせてしまい、結果として死亡させてしまったことで自分が森川氏を殺したといえないかという趣旨の発言があったと思います。
他人に風邪をひかせ、結果、人を死に至らしめたら、それは殺人なのか?
結論として、殺人罪が成立すると解釈することは無理だと思います。
殺人の実行行為といえるものがないと考えるからです。
殺人罪成立のためには、他人の命を侵害するような危険性のある行為である実行行為に及んだと評価される必要があります。
たとえば、人の胸をめがけて包丁を刺すなど。
では、人を釣りに連れて行くことが殺人の実行行為といえるか?
そもそも、何をもって「他人の命を侵害するような危険性のある行為」といえるかという判断の仕方にもいろいろな考え方があります。
私自身は、行為の時点で、自分が認識していた事情や普通の人なら認識することができたという程度の事情をもとに、客観的、事後的に、その行為によって命を侵害するような危険があるか、ということを判断するべきだと思っています。
この判断基準で考えた場合どうか?
その相手がぜんそくの持病を持っていることを知っていた。
それなのに、外に一緒に釣りに行った。
もしかしたら、森川氏は釣りに行くつもりはなかったけれど、篠田氏に誘われたから、行くことにしたのかもしれない。
森川氏の死亡が発見されたときの登場人物らの服装は薄手のセーターを着ている様子。
剣持弁護士のもとに森川氏の死亡の連絡が入ったのは3月15日。
そうなると、釣りに連れて行った日というのは、それより少し前だろうから、冬の寒い時期だったのかもしれない。
もし寒い日に人を外に連れだしたら、それが、長時間の外出だったり、温かい服装をしていなかったりすると、その外出で寒い思いをしたことがきっかけとなって風邪をひいてしまうかもしれない。
風邪が軽いうちに病院を受診し、手当をすればよいのかもしれないけど、それをしなかったら、もしかしたら、その風邪をこじらせてしまうかもしれない。
病院には行ったけど、医師の診断ミスで、風邪が悪化したのかもしれない。
風邪をこじらせてしまったら、もしかしたら、それがきっかけで命に危険が及ぶかもしれない。
こうして考えると、持病のある森川氏を外に連れ出したとして、それが最終的に死に結びつく可能性は否定できません。
でも、こんなにもたくさんの「もしかしたら~かもしれない」の積み重ねを必要とするような行為が、他人の命を侵害するような危険性のある行為といえるのかは疑問です。
ですから、私は、篠田氏が森川氏を釣りに連れて行ったという行為が、殺人の実行行為にあたることはないと思います。
ほかにも、弁護士としてコメントしたいところがいくつかあります。
ドラマの中では、遺言書を開封する儀式のようなものが開かれていました。
あれって、実際もあんなふうにみんなが自宅に集まって行われるの?
自分を殺害した犯人に全財産を相続させるというような内容の遺言ってそもそもNGにはならないの?
そんな疑問もわきませんか?
それについては、また改めてお話ししていきたいと思います!
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