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リコカツ第9話 ~人が人と関わって生きていく上で大事なこと~
私は、ふだん、あまり人に突っ込みを入れることもないし、自分の本来の出身地とは異なる方言を使うことは非常にかっこ悪いことだと思っているので偽物の関西弁みたいなのを使うことは完全に私の主義に反するのですが、今回ばかりはやってしまいました。
最後の場面で「せんのかーい!」と思わず言ってしまったのは私だけではないのではないでしょうか?
とはいえ、今回は、もう最初から最後までずっと涙が止まりませんでした。
いつも、ストーリーを追いながらも、頭のどこかで、「どこかに、弁護士としてエッセイにとりあげるべき法的なお役立ちポイントがないか」と考えながらの視聴なのですが、今回は、ただただストーリーに没頭してしまいました。
唯一弁護士としての頭が働いたのは、さきさんのお母さんからお金を奪った若い男性について。
たぶん、世の女性からの敵意を一身に受けたと思われる場面。
彼は、さきさんのお母さんの2000万円を自分がすべて使ったということは認めつつ、その金は、自分のおかげでできた金なのだから自分が使って何が悪いという弁解をしていましたね。
これ、もし、2000万円を奪ったこと、使ったこと自体を否認された場合には、さきさんのお母さんのお金を引き出したのがこの男性であるということをどうやって立証しようかと思いながら、画面の男性をにらみつけていました。
うかつにも自分名義の口座に送金していたら立証は容易ですが、ATMから引き出していた場合は、引き出しの日時や引き出したATMを特定し、そのATMについているカメラの映像を解析したり、おそらく彼は引き出した金を使ってあの事務所を借りていると見込まれるから、事務所を借りたときの契約を担当した不動産業者にあたって、彼が初期費用としていついくらの金をつぎこんでいたかを確認するとともに、彼にはほかに充てられるべき資産が投じなかったこと明らかにしたり…
そんなことを考えていたのですが、こんな物騒な話、明らかにリコカツの本筋からは外れてしまう…。
そこで、今回は、法的なお話ではないのですが、結婚生活を送る上で、というより、結婚とは関係なく、人が人と関わって生きていく上でとても大事だなと感じたことを取り上げたいと思います。
今回、緒原さんとさきさん、それぞれのご両親と3組の離婚が成立したカップルに大きな変化がありましたよね。
どのカップルも大きく歩み寄り、自分の相手を思う気持ちに素直になった点において共通するところもあると思いますが、でも、私は、緒原さんとさきさんカップルと、それぞれのご両親カップルとでは、「何をしたか」というところで雲泥の差があると感じました。
今回の歩み寄りによって、今後前向きな関係性を築けそうだという点ではみんな同じなのですが、緒原さんとさきさんについては、まだまだ一波乱あるだろうなと思うのです。
どうしてそう思ったかというと、緒原さんとさきさんは、まだやるべきことをしていないと思うからです。
最後の場面で、緒原さんとさきさんは、お互いを好きだと思う気持ちをぶつけあった上で、緒原さんは「自分は変わる、君とやり直すために」と言い、さきさんは「私も」と言いました。
これ、どう思いますか?
「変わる」の意味にもよるのかもしれない。
つまり、自分の何を変えようとしているのかということ。
これが、もし、「自分自身が大事にしてきた考え方とか習慣とかを捨てて、相手に合わせる努力をする」っていう意味だとしたら?
もしかしたら、「相手のために自分が変わろうとするなんて、なんて愛が深いんだろう!」という見方もあるのかもしれない。
でも、私は、こんなやり方で元に戻ろうとしても、結局うまくいかなくなっちゃうんじゃないかなと不安に思うのですが、どうなのでしょうか?
二人がうまくいかなかったのは、二人の考え方、性格、習慣などが違っていたからではなく、違っていることにより、意見がぶつかりあった場面で、お互いの違いを前提にした上で問題の解決先を話し合うことができなかったからだと思うのです。
価値観が違っているから決裂したのか、違っていることを前提に、直面している問題の解決方法をお互いの立場を考えながら話し合えなかったから決裂したのか、これって似ているようで全然違うと思います。
でも、そのことに二人がちゃんと気づいているのか?
もし、自分が相手の考え方に合わせたり、自分の大事にしてきた習慣を捨てたりすることで、そもそもお互いの「違い」自体を解消しようとしたら、最初はいいかもしれないけれど、積もり積もったとき、絶対にうまくいかなくなるのでは?
自分の価値観って、これまで20年以上、一人一人全然違う環境の中で生きてきた中で作られてきたものなのだから、これを変えることなんて並大抵のことじゃないですよね。
たしかに、成長に伴って、自分の考え方の癖のようなものに気づいて、この自分の考え方を変えたほうが自分がハッピーになれると考えて、考え方の癖を変える、みたいなのは大事なことだと思う。
でも、そうではなくて、単に相手とうまくやっていくために、相手との違いをなきものにしようと自分の考え方を相手に合わせる、ということをすれば、それは、積もり積もって無理がくるし、どこかのタイミングで「なんで自分がこんなに合わせてやってるのに!」という理不尽な怒りになって爆発してしまいそうな気がします。
また、そもそも、相手は、自分に変わってほしいのか?ということもよく考えてみる必要がありますよね?
結局、「相手とうまくいくためには自分が相手に合わせなくては」という思考過程って、これまで二人がやってきた、「本当はこう思っているのに、相手のために、こう言っておこう、こうしておこう」という思考過程と全く同じ。
すれ違いしか生まないのではないかなと感じます。
一方で、二人の両親は、過去の自分のあり方を振り返り、相手とうまくいかなかったであろう点を具体的に考え、すべての価値観を自ら否定するのでなくて、個別に、自分のどの点に問題があったのかを抽出して、それを改善するためにどうしたいか、ということを言語化していました。
そして、その率直な思いを聞いたパートナーが、その言葉を聞いて、もう一度話し合いをしてみよう、と思ったわけです。
単に、「やっぱり好き!」と確認しあった上で「自分はあなたのために変わる!」と情熱をぶつけあう若い二人と比べると、同じように歩み寄っているように見えて、していることの実態は全然違うと思いませんか?
緒原さんのお母さんが「男の人は口にしなくてもわかると思ってるけど、それじゃだめなのよ。ちゃんと言葉にして言ってくれないと」って言うセリフがありました。
お母さん、本当によくぞ、よくぞ言ってくださいました。
私もそう思います。
でも、よく考えると、これは別に男性だけの問題でもないですよね。
だって、お母さんだって、お父さんに「こうしてくれたらうれしい」とか「私はこう思っている」とかいう気持ちをたぶんちゃんと伝えてこなかったのだと思うから。
お父さんからしても、お母さんが、思いを口にしてほしいと思っていたことを知らなかったんじゃないでしょうか?だって、お母さんが言わないから。
そして、こういうことは、別に結婚生活だけの話ではなくて、仕事も含む人と人とが関わる場面すべてにおいていえるのではないかなと思うのです。
お互い、もととなる価値観が違うのだから、自分の考えを言葉にして説明しないと相手には伝わらない。
これについて私が熱弁振るいだすと、たまに、「でも、それって、相手に自分の考えを押し付けることにならない?」と言われたりするんです。
たしかに押し付けちゃだめですよね。
自分の「こうしてほしいの」を相手に伝えることと、相手に押し付けることとは別だと思います。
自分の考えを伝えるけど、それを受けて、相手が、私のうれしいと思うことをするかしないかは相手が決めること。
その決定は、相手の自由だから、相手の決定に私が文句を言う筋合いはないわけです。
ただただ「あ、私がこうしてほしいと伝えたことを、相手はしたくないのだな」と受け止めるだけ。
それだけのことです。
その後、そのような相手との関係を今後どうしていくか、ということは自分のコントロールだから、自分で考えればいいだけのこと。
だから、相手に「なんで私が望んだことをしてくれないの?」という不満はお門違いというものですよね。
私は、自分の考え方を、相手とうまくやるために、という目的だけのために変えようとするのは意味のないことだと思うし、なによりもすべきは、自分の本心を伝えること、その上で相手の気持ちも聞いて、そこに食い違いがあれば、何か解決策がないか一緒に探ること、このことが一番大事なことではないかと常々思っています。
そんなことを考えると、最後の場面では、緒原さんのセリフは「これからは、君と意見が違う場面に直面したら、お互いの考え方をじっくり聞いた上で、どちらの考え方にも沿うようないいアイディアがないか一緒に考えたいと思う」であってほしかったなと思いました。
あれこれと思うところを書いてしまいましたが、第9話を見て、改めて、明日も当たり前のように朝がきて、当たり前のように今日みたいな1日が送れる、などと考えてはいけないなと思い、また涙が出てしまいました。
スティーブジョブズは、毎朝鏡を見て、「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは、本当に自分のやりたいことだろうか」と自分に問いかけていたといいます。
できていないな…と思わざるを得ません。
そもそも、私は、今、そんな率直な質問を自分に投げかける勇気さえ持てていない気がします。
そんなこともふと考えさせられるリコカツも次回最終回。
視聴後、最後の更新をしたいと思います!
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