リーガルエッセイ
公開 2021.04.07 更新 2021.08.13

親権と監護権について詳しく解説いたします!

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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最高裁「父母以外は監護権者になる申立てができない」
~そもそも親権って?監護権って?~

先日、最高裁で「父母以外は監護者になる申立てができない」という判断がされました。

大きく報道されていましたが、これを見て「親権者はよく聞くけど、監護者ってなに?」と思われたかたもいるのではないでしょうか?
この報道をとりあげる前提として、今回は、そもそも、親権って?監護権って?というところをお話ししてみたいと思います。

ここで問題です。
離婚を考えている夫婦が親権について話し合いをしています。

  • 「親権は絶対に譲れない」
  • 「わかったよ。親権はあきらめるよ。おれは監護権でいい」
  • 「(監護権?)親権さえ取れればほかはこだわらない。」

離婚後、子どもを引き取って一緒に住むことになるのは、親権者となる妻?監護権者となる夫?

夫婦が離婚するときによく問題となる親権。
相談の場で「絶対親権だけは譲れない!」というご希望を聞くことは多いですが、同時に、「親権って要は一緒に住むってことですよね?」と、親権の意味が実は正確にはわかっていないというかたも多いように思います。
親権というのは、単に子どもと一緒に住むということではありません。
親権の内容には大きく3つの柱があります。
1つ目は、子どもの財産を管理する権利。
2つ目は、子どもの法律行為について代理する権利や身分行為について同意する権利(一定の年齢未満の婚姻や養子縁組)など。
未成年の子どもが一人で行うことができない契約締結などについて、子どもを代理して行うということがこれにあたります。
3つ目は、子どもの身の回りの世話をしたり、しつけ、教育をしたりする権利。
この3つ目を身上監護権と言います。
これが、今回冒頭にあげた「監護権」です。

つまり、親権の内容として監護権の内容が含まれているという関係にあります。

この、親権の一内容としての監護権の内容をもう少し詳しくお話しすると、監護権には、子どもの居場所を決める権利、子どものしつけをする権利、子どもの職業を許可する権利などを含むと言われています。
子どもを引き取って一緒に住むということは、監護権を持つがゆえということになるといえるでしょう。

離婚の話し合いをしているとき、どちらが親権者になるかということをめぐって争いになることがありますが、お互いの認識として、「どちらが子どもを引き取るか」という点をめぐって争っていることが多いですよね。
でも、これはちょっと不正確。
正確に理解しないままに相手と話し合いをしてしまうと、思ってもいなかった結果になってしまうかもしれません。

親権と監護権、必ずしも一方が両方とも持つという結論になるとは限らず、親権と監護権をわけて持つということも、多くはありませんがケースとして存在します。
話し合いで親権者と監護権者をわけるというケースもあれば、レアケースではありますが、裁判で、親権者と監護権者をわけて指定するケースもあります。
親権者と監護権者とをわけて指定したとき、親権者には、子どもの財産を管理する権利や、子どもの法律行為や身分行為について代理したり同意したりする権利が認められる一方、子どもを引き取って一緒に住みながら子どもの世話をしたり、しつけや教育をしたりするのは監護権者。
そうすると、親権者になりさえすれば、当然に子どもを引き取って子どもと一緒に住むことができると思い込んでいるとそれは間違いで、相手を監護権者としたときは、子どもは相手と一緒に住むということになります。

だから、親権と監護権の意味、そして、親権者と監護権者をわけて指定したとき、それぞれに認められる権利の内容を正確に理解していないと、とんでもない誤解をしたまま望まない結果になってしまう心配があるんです。

親権と監護権をわけて決めるということがあまりないために表面化しにくい話ではありますが、離婚を考えるときにもっとも大事なポイントのひとつになってくるのが子どものことです。
この機会に改めて。
今度は、このお話を前提として、冒頭に紹介した最高裁の判断について紹介してみたいと思います。

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